Earl Windsor w-115特注

今年の記録的大雪は、首都圏にも大きな経済的打撃を与え、高速道路の通行止めや幹線道路の渋滞で流通はストップ。2週続けての積雪に業者便も大きく遅れて予定が立たない。唯でさえ1か月の日数の少ない2月、どの業界も大きく打撃を受けた事だろう。我々ピアノ業界は、雪が積もれば、あの重たいピアノ・・・運べません。納品が出来なければ、お金が入ってきません・・・一大事! しかも2週続けての雪かきで腕や腰もガタガタ。もう白い雪は見たくもないと皆さんも思っている所で白いアールウィンザー特注の写真です。

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このピアノをお持ちのお客様は、自動車のデザイナーでしかもオーディオマニアとこだわりを持っていらっしゃる方なのでインテリアに合わせて色を白に特別注文された様です。当然、椅子も同じ色に塗って大事に使って頂いております。このピアノは、ウィンザーの最高機種でw-115。高さ133センチの大型のピアノでネコ足と現物を見ると惚れ惚れするフォルム。購入されたのが、今から31年前私が20代の若造の頃からの長いお付き合いのお客様です。このピアノは、次高音から高音部プレッシャーバーが肉厚になっており特に最高音部のユニゾンはことさら神経を使うと云うか難しい。若い頃は、先輩技術者やメーカーに問い合わせをしたりして対策に苦慮したが、的確な対応策が無くただただ時間を掛けて辛抱強く調律を丁寧に行う事で苦労しながら対処をしていた未熟な頃を思い出す。そんな中Earlwindsor w-115を何台も管理して行く過程でプレッシャーバー下の弦角度の調整と打弦点調整と整音。これは、ピアノ全体の整音を見直す事で対処出来る事が解ったのだが、解るまでの試行錯誤が今では随分勉強になったのだと思う。その対処方法を相談した先輩技術者に説明をしても若い20代の調律師の意見を素直に聞き入れてくれなくて残念な思いをした事も同時に思いだすが、今思えば当時の先輩調律師達の技術力では、この対処方法をお客様宅で行う事は、残念ながら無理だったと思われる。

 

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昭和50年代は、ピアノが沢山売れて大量生産されメーカーも注文に追われていた楽器業界花盛りの頃。そんな時期に販売会社より大量注文と納期に応える為、又大量注文によるダンピングに最終調整が手薄になっていた事は、業界人であれば皆知る所である。そんな時代でもヤマハ・カワイなど大手メーカーは、キッチリと最終調整を成されていた。特にヤマハの生産技術は、世界一だろう。高級機種のX支柱など技術革新に努め未だ名器となるピアノが中古でも高値で世界中で取引されている。我々技術者は、手薄になっていた最終調整をする事で如何に当時のピアノが蘇って輝き出す事を知らなければならない。また、その技術をお客様に提供する事で弾き手にどんなに喜んで頂けるか、そして何より調律師としての喜びはとても僕の文章力では書き尽くせない喜びである。若き技術者の皆さん、一生勉強です。しかし大好きなピアノですから苦にはなりませんよね。私もまだまだ勉強の毎日です。一緒に勉強しませんか?そうそう、このウィンザー内部は綺麗ですが、経年変化で外装の白色が少し黄ばんでいます。今度の調律の時に金属部分や外装の手入れをしてあげるとw-115特注も喜んでくれるかな?