ネットで評判の調律師

例年、3月に入りだんだん暖かくなると調律師も忙しくなってくる。4月の新学期に向けてコンサートの数も多くまた新たにピアノをはじめるお子さんの為に遠く離れた実家からピアノを運んだりとピアノにまつわる業種は、ちょっとばかし忙しくなります。そんな時に3月20日からぎっくり腰に見舞われ1週間身動きが取れない状態が続きました。加齢によるものでしょうか以前ならば3日も寝ていれば治ったのに1週間。職業病みたいな物ですが、もはや加齢以外には考えられません・・・つらい!そんな折に私どものホームページを見て調律の申し込みを頂き、今日調律にお伺いしてきました。古いヤマハのグランドピアノで数年調律をしていないのでピッチが下がっていましたが概ね状態は良いピアノでしたが、音がペンペンキンキンしていて少し手を入れないとならない。調律・整調・整音と2時間30分位の作業となりました。お客様も気持ち良く弾ける様になって喜んで頂けていると思います。ホームページの記事を読んでお申込みをしたとの事で大変ありがたく感謝しております。今後とも良きお付き合いが出来ます様にと痛い腰を押して頑張りました。さて、インターネット上で調律師を検索して申し込みをしたらとんでも無い事になってしまった。そんなちょっと前のお話です。

DSC_0054

僕のお客様より「お友達のピアノなんですけど数年調律をやっていなかったので鍵盤がいくつも上がってこなくなってしまいネットで評判が良い近所の調律師さんに申し込んでお願いをしたら、鍵盤が上がってこないのは機械が悪いので修理が必要です。修理代金が8万円位掛かると言われたんですがそうなものなんでしょうか?」と電話が入る。「いや~ピアノを見ていないので何とも言えませんがアクションの調子が悪いのであれば掛かるかもしれませんね~?」と答えると「とりあえず本人から直接電話させるので相談に乗ってあげてくれませんか?」とすぐさま当人から電話が入り大方の経緯の説明をして貰った。「来て貰って直ぐに直りますよと言って3時間ほど掛かって調律をして貰ったんですが、結局直らなくて鍵盤が上がってこないのは、機械の調子が悪くて修理が必要です。その修理は、機械を持って帰ってやらなければならないので1~2週間掛かって8万円になります。」と告げられたと。そして調律と調整は別なので今日の調律代は2万円に消費税になりますと言われお支払いしたそうです。お客様は、修理の方は、主人と相談しなければならないので後日ご連絡しますと言って帰ってもらったと言う事でした。僕は、「ところでピアノは、何でしょうか?何時頃買われたのですか?」と聞くと「ピアノは、FEINTONと書いてあります。8年位前に買ったんです。」と仰るので僕は、「背の低いコンソールピアノですね?」と聞き返すと「そうですご存知ですか?」僕は、ピ~ンときて「もし宜しければとりあえず僕がお伺いして見てみましょうか?きっと大丈夫ですよ」すると「お願い出来ますか?もうすぐ子供の発表会なんです。宜しくお願いします」とお客様の声が明るくなった。

DSC_0052 DSC_0051DSC_0050

発表会が近いのに鍵盤が上がってこないんじゃ練習に困るだろうと直ぐに立ち寄ると思った通りのピアノで中を見てみると僕の想像した通りの事態でした。購入して8年位?もうちょっと経っていますが外観もご覧の通り綺麗で中のアクションも綺麗なものでした。僕は、お客様に「8万円掛けなくても今30分時間を頂ければ直ぐに直りますよ!」とちょっと自慢気に言うと「本当ですか?お願いします・・助かります!」と目をキラキラさせて喜ばれた。このピアノは、パコと言って北朝鮮製のピアノで北朝鮮と聞けば粗悪品と決め付けられがちですが、中のアクションの工作機械は、潰れた浜松のピアノメーカーが使用していた物を使用して日本人スタッフが制作指導に行って真面目に作られていたピアノでした。金属部品は、質の悪い物が使用されていましたが日本で販売するにあたり部品を交換するなど日本で再度手を入れて販売されていました。どのメーカーのピアノも良い所、悪い所はあります。このピアノは、特に鍵盤素材が日本製ピアノに比べると質が劣り鍵盤の不具合が起こる。ただし、調律師がそれを見抜いて管理していくとなんら問題なく思いの外良い音を鳴らしてくれます。でした・・と書いたのは、北朝鮮拉致問題を期に北朝鮮との貿易も中断し万景峰号の日本入港は、禁止されパコピアノは、生産を取りやめたと聞き及んでいます。さて、話を戻してあっと言う間にピアノの不具合が直りお客様も大喜び。もし、8万円掛けて修理をしても鍵盤は上りはしないし購入して10年足らずのピアノの何処も不具合の無いアクションを持ち帰って何処を修理するつもりだったのだろう?。その時に調律師は、どうするのだろう?ピアノがダメだから買い替えを勧めるのだろうか?色々と想像してしまう。ただちょっと問題がありました。低音の弦が切れていて何処にも切れた弦が無い。そして調律したはずなのにピッチのA440Hzを大きく下回りちょっと頂けない状態。いやはや困ったなぁ~とハンマーを見ると2本の弦溝が付いていると言う事は、ちゃんと弦はあったと言う事???数日後に調律とBass弦を張りにお伺いして無事完了。その時にお客様から「前の調律師さんから電話があって修理はどうされますか?と聞かれたので知り合いの紹介で修理して貰いました。30分で鍵盤が上がってくる様になりましたよ」と告げると「どうやって修理したんですか?教えて下さい」と言われました(笑い)。僕は、もしよければ僕の所に電話する様に伝えて下さいお教えしますから」と言うと「良いんですか?そんな同業者の人に技術を教えても」と言われるので「これも経験値なんですよ。大した事じゃないので是非、伝えて下さい」「分かりました電話してみます」しかし、残念ながらとうとう電話は掛かってこなかった。ここで大きな問題なのは、ネット調律師が最初に調律にお伺いしてから、お客様に修理の催促の電話を入れるのに数日時間があるにも関わらずその日まで対処方法が見つけられなかった事。それは、技術者のネットワークを持って居ないので誰にも聞く事が出来なかった。もしくは、誰も対処法を知らなかった。と言う事であろうと想像できる。僕も若い頃を思い起こせば対応出来ない事が起きた時は、居ても立っても居られずにその日の内に師匠や先輩・友人に教えを乞うた物です。昔は、お客様の紹介が多く、とある大手会社社宅で軒並み紹介なんて事が普通にありました。逆に言えば曲がった事があれば軒並みお客様が離れると言う事もあるので仕事も慎重に誠実に当たらなければならないと言う緊張がありました。しかし今は、インターネットの時代。ネットで評判が良くて申し込んでもこの様な事もあるだろうし実際ネットの評判て誰がわざわざ他人の評判を良くする手間をかけるのだろうか?不思議でならないし実際良く判らない。ただ言えることは、ネットで申し込んだ商品ならば返品も効くだろうが調律は、返品が出来ない。今の時代、仕事に自信を持ってネット上でも責任を持つ意思表示としてせめて顔写真位載せないとね・・・と思うのだけど!