第一回鎌倉プチロックフェスティバル(アンプラグド)

平成27年5月9日(土)に第1回鎌倉プチロックフェスティバルが鎌倉由比ガ浜海浜公園にて開催された。ロックフェスティバルといえば大音量でうるさく若者が大勢集まる・・・そんなイメージが沸くが今回は、完全なるアンプラグドである。アンプラグドとは、電気を使わないアコースティクだけで演奏する。つまりうるさくない音楽の祭典。職業柄色んなコンサートに携わってきましたが、今回のアンプラグド鎌倉プチロックフェスティバルは、音楽関係のプロとして随分考えさせられた一日でありましたので、今回は、その事について書き記したいと思います。

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4月に突然電話が入り「5月9日に鎌倉プチロックフェスを開催するので当日の朝にピアノを運んでピアノの調律もお願いしたいのですが・・・」僕は、「鎌倉プチロックフェスですか?当日朝搬入ですか?場所は、何処なのですか?」と聞き返すと「鎌倉の由比ガ浜海浜公園です。」「ピアノは、何処にあるのですかアップライトですか?」などとしばらく要領が得ないやり取りが続いて要約理解できた。昨年、第0回鎌倉プチロックフェスティバルを試験的に開催した所、反響も感触も良く今回スポンサー80数社集めて第1回目として開催する運びになった。昨年開催した時に来年は、絶対にピアノ運び込んで開催したいと思って今回の話になったとの事でした。ピアノは、主催者の知り合いの方が貸してくださるのだが、40年位前の30数年調律していないヤマハピアノだそうで音の出ない所もあるとの事です。私は、当日9時にピアノを搬入して調律・修理して11時にスタート・・・海の真ん前で塩風にさらされて当日の天気も心配だし・・・これは、ちょっとリスクが高いなぁ~と思い4月末にピアノの持ち主の家で調律・修理をしておくことにしました。長年放置されたピアノは、鎌倉の湿気を沢山吸い込んで機械も動かない音もぐちゃぐちゃに狂っていたが時間を掛けて修理をして万全の準備をした。

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当日は、曇り夕方から雨の予報。芝生の上に設置するのでそれなりの用意をしておいたのが良かったのか何ら問題なく9時にピアノ搬入完了。すぐに調律に取り掛かる。広い公園ですから強くピアノを弾いても小さな音しか聞こえない。海岸の134号線の車の騒音でピアノの音がかき消されてしまう。風も強く湿気も多く塩害も心配、ピアノにとっては最悪の条件。音響なんてそんな贅沢な事言ってられません。残響音ゼロです。ピアノを弾くとすぐさま音は、どこかに散って吸われて消えて無くなる。この悪条件で調律をする事は、とにかく珍しいので格闘しながら楽しんで作業する事にした。周りでは、出展業者さんが準備に追われ、また犬の散歩をしている人、サーファーの人、色んな人が近寄ってきて「すげ~ピアノがある!いや~大変ですね~!」と声を掛けられて写真を撮られて、私の調律をしばらく眺めて去って行く。この場所に一人スーツ姿で調律をする・・・自分自身で可笑しくてならなかったが妙に楽しかった。

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海沿いの一面芝生の公園に6か所の演奏スペースが作られて合計38組の演奏者。露店は、48店出店されて公園のあちらこちらで大賑わいとなってきた。面白かったのがフォークギターを伴奏に津軽三味線でロックを演奏した井上公平さん。邦楽器は、弦のテンションも低くボリュームも無く音程が不安定と思っていたのだが、三味線は、大迫力で力強く観客を魅了していた。すると今度は、横笛を持ち出し吹き始めた。あの小さな木製の横笛から奏でられた音は、天高く響きわたりあの甘い音色が空の高い所を伝わって随分遠くまで響き渡っていたのには、ことさら驚かされた。戦国の世に遠く離れた恋する人に笛の音を届けたなんて本で読んだことがあるが、まさしく事実であっただろうと想像できた。

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田近香子(Vakeneco)&林美里のお二人。田近さんは、ジャズピアノでは、国内外で随分有名な人らしい。ガンガンピアノを弾きまくって楽しんで林さんがパーカッションで合わせての絶妙な演奏が大勢の人を喜ばせていた。このフェスティバルでは、演奏者もお客様も共に楽しんでいる。みんなが嬉しい楽しいの笑顔なのです。演奏者とお客様の距離が近くみんながマナー良く一つになってこの公園全体が楽しいオーラに包まれていました。恐らく来年、再来年とますます大盛況になって行く事になるであろうこのアンプラグド鎌倉プチロックフェスティバル。わが社も鎌倉の一員として音楽に携わる会社として協力させて頂きたいと素直に思いました。普段我々ピアノ調律師が良く耳にするのが、あそこのホールは、音響が良いとか悪いとかピアノが良いとか悪いとか確かに良し悪しは、あります。それが演奏や演者のモチベーションに大きく影響することも分かっているつもりです。しかし、わざわざコンサートにお金を払って来ていただくお客様の為にみんなが喜んで頂く為に楽しいオーラに包まれる為にクラッシックコンサートは、エンターテーメント業として捉えて新たなベクトルで考えてみる必要性があるのではないかと強く感じさせられた一日となった。その夜11時位に主催者の方から携帯に電話があり「やっと今すべて終わりました。今日は、ありがとうございました。ピアノ最高でしたね!みんな喜んでいましたよ。鎌倉ピアノ芸術社さんにお願いして本当に良かったです。今後とも末永くよろしくお願いします。」とご丁寧にご挨拶を頂きました。何から何まできっちりとした対応に頭が下がる思いと同時に毎度定番のクラシックコンサートの不甲斐なさに身のよじれる思いが込み上げた。

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