おい、シゲルて誰だ!

近年の夏の暑さは、尋常じゃありません。最近では、気温35℃なんて普通にあって「30℃今日は、少し涼しいですね」そんな会話があちらこちらで聞こえてくる。「30℃ですよ。今日は暑いですね~」と言っていたのは、ほんの数年前だった様な気がする。数多く発生する台風にゲリラ豪雨や竜巻。この環境の変化に耐えながら毎日仕事に励んでします。さて、台風というと思い出される5年ほど前のお話です。

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その日は、夜に超大型台風が接近するとの予報でこの台風は、雨台風。どの局でも大雨洪水注意報と土砂災害の注意を呼びかけている。夕方より雨風が猛烈に強くなったので私も早めの帰宅をした。雨戸を叩き付ける暴風雨。うねる様な音をたてる突風に家の外では、カランコロンと何かが飛ばされている。早く通り過ぎる事だけを祈りテレビを見ていると携帯が鳴り電話口の向こうから悲痛な声で「梅根さん、家が雨漏りをしてピアノが濡れているんです・・・今すぐ来てもらえませんか?」ひぇ~「今からですか?いや~この台風じゃ・・・」ちょっと言葉に詰まって「どんな状態なんでしょう?」と聞き返すと「もう天井から蛇口の水がこぼれる様な状態でピアノに降り注いでいます」僕は、「水が掛からない所にピアノを動かせませんか?」と言うと「主人とやってみます」ガチャンと切れた。このお客様は、お嬢さんが高校生になって我社でグランドピアノを購入して頂いたお客様。まだ納品して数年しか経っていない新品同様のピアノ。直ぐにでも駆け付けたかったが、外は、暴風雨で危なくて出かけられない。まもなく連絡が入り「どうにか動かしました。カバーを外して中を丁寧にタオルで拭いたのですが大丈夫でしょうか?」僕は、「濡れている所をよく拭いてください。明日の朝一番でお伺いしますから・・」といって電話を切った。翌日、早朝にお伺いすると雨漏りではなくて天井の水道管が壊れて水道水が漏れたとの事。ピアノを開けてみると幸いにも大屋根の蝶番から内部に少量の水が入った程度。中音部アグラフに少量の水が入り、アクションには、直接水は入っていなかった。棚には、浸水した水が染み込んでいるが大した事はなさそうだ。雨漏りの水と違って水道水だったので無色。そしてハンマーに水が掛からなかったのは、不幸中の幸いだった。僕は、丁寧に吸着タオルで水分を拭きとり適切な処理をしてアクションを取り出し数日間陰干し状態にする事にした。すると奥様が「もうビックリしちゃって主人と二人で動かしちゃいました。娘の大切なピアノだから火事場の馬鹿力なんでしょうかね(笑)!」こちらのピアノは、SIGERU KAWAIグランドピアノ、購入時には、浜松にご家族と一緒にピアノを選びに行って工場見学をしてウナギを食べて楽器博物館を案内してと一生大切にして頂けるように一日掛かりで選んだ思い出の高級グランドピアノ。その後、数回に渡りお伺いして吸水による変化や腐食の状態をチェックして防錆や調整を繰り返して大事には至らなかった。もう5年以上経って何ら問題無い状態なのでもう大丈夫です。奥様が「あの日、娘が帰ってきて水漏れでピアノがずぶ濡れになっちゃって大変なんだと告げると娘が顔色を変えて「シゲルちゃん大丈夫かしら~」と自分の部屋に走って行くと主人が「シゲルて誰だ?」て聞くんですよ~(笑)」。