10月の半ばを過ぎてようやく紅葉の時期だなと思いきや9月の台風の影響で山間の木々が見事に枯れている。どうやら台風による塩害の影響らしい。近年、あの気持ちの良い秋が短くなっている様な気がしてなりません。そんな中、慌ただしく過ぎ去った9月の仕事の様子を記事にしたいと思います。
永年のお付き合いのピアノの先生から電話が入る「新しい生徒さんで大人の生徒さんなんですけど、ピアノの調子が悪くて困っているので連絡を取って貰ってもいいですか?」と「もちろんですよ!ありがとうございます。どんな調子なんですか?」と聞き返すと「子供の頃からお願いしている調律師さんに毎年調律して貰っているんですけど調子が悪いらしいんです。詳しくは、当人に聞いて貰っていいですか?よろしくお願いします。」直ぐに電話を入れると「早速、お電話頂いてありがとうございます。どうぞ宜しくお願いします。」とほんわかとした柔らかな感じの声でとっても丁寧な応対。「ピアノは、どんな調子なのですか?」すると「とっても古いピアノでお恥ずかしいのですが鍵盤の戻りが悪くて連打が上手く出来ないんです。子供の頃からお願いしている調律師さんに色々と手を尽くして頂いたのですがそろそろ寿命かなぁ~買い替えるかオーバーホールですね。と言われているんです。」「どの位古いピアノで何処のメーカーのピアノでしょうか?」と聞くと「3~40年位前のアポロピアノなんです。」私は、「とりあえず、お伺いしてピアノを見させてください。」と言って予定を決めてお伺いした。詳しい年式は、分からなかったが40年位前の東洋ピアノ製造のアポロでした。お客様は、最近またピアノを始められて熱心に練習するが鍵盤の戻りが遅くて連打が出来ない。「私の弾き方が悪いのでしょうか?ピアノがもうダメなのでしょうか?」早速、ピアノチェックの為に少しピアノを弾いてみるとペダルを使用して連打すると何ら問題なく連打出来るがペダルを使用しないで連打すると鍵盤が下がったまま上がってこない所が沢山ある。直ぐに原因が分かって「これは、ダンパースプーンのフェルトがすり減ってきっと穴が開いてますよ(笑)。これを交換すれば直りますね!ちゃんと調律して調整すればいいピアノですよ」と伝えると「ありがとうございます。まだこのピアノは使えるのですね。買い替えなくても大丈夫なんですね(笑)。宜しくお願いします。」といってもこの後のスケジュールは、浜松出張とピアノの修理に塗装にピアノ納品に調律師協会の会議にプロモーションビデオの調律と弊社企画のコンサートの開催とスケジュール目白押し状態。それに機械をお預かりするとその間お客様は、ピアノを弾けなくなるので「あ~困りましたね~どうしましょう???時間が無いなぁ~」というと「ピアノが大丈夫と分かっただけで安心しました。お時間が空いた時で大丈夫です。お待ちしておりますから。」とあのトーンの声で言われるとどうにかしてあげたくなって「今日、機械をお預かりして直ぐに修理して明日持ってきます。今日明日を逃すと10月の半ばじゃないと対応出来そうにないので」と言うと「お忙しいのに本当によろしいのでしょうか?ありがとうございます。宜しくお願いします。」とあのトーンがオクターブ上がってた。早速持ち帰り夕方から作業を始める。部品は、買い置きがあるので直ぐに作業に取り掛かり少し晩く迄で掛ったがその日の内に修理が終えた。買換えを薦められたと言っていたが、こんな簡単な修理なのに(笑)!
そして、以前弊社で録音からマスタリングまでしてCDを製作した藤田真紀子さんの世界配信プロモーションの調律。8月に藤田真紀子さんから「録音の仕事なんですけど調律お願いしま~す!」と電話が入る。「お~良いね~頑張ってるね(笑)。何時?どこで?」と聞くと「八王子の教会でスタジオなんです。」「教会なのスタジオなの(笑)?」そんなやり取りであっと言う間に当日を迎えた。大雨の中、車のナビに案内されるがままに向かうと狭い道に入って本当にこんな先に教会スタジオなんてあるのかなぁ~?と半信半疑で運転していると突如それらしき立派な所が目に入ったがこのままでは、駐車できない!Uターンして四苦八苦して駐車してちょっと早めに到着した。「ピアノの調律に来たのですが」と伝えると「お世話になります。今、別の撮影が入っていますのでこちらで少々お待ちください。」しばらく待っていると何だか綺麗な女性とマネージャー風の方と撮影部隊がぞろぞろと出て来た。すると調律の予定されていた時間ピッタリに係りの方からご案内しますと急な階段を上り会場に案内された。
2階に案内されて会場に入ると正面に見事なステンドグラス。高い天井に品の良い照明とパイプオルガンが備え付けてあり正しく教会。「あれ、本当の教会じゃないですか!」というと「以前に教会だった所を弊社が買取まして今は、演奏会や撮影やスタジオとして利用して頂いております。」と丁寧にお答え頂いた。早速ピアノの調律に入るがとても古い小型のYAMAHAのピアノ。普通の家庭用のそれより一回り小型のグランドピアノで2か月位前に調律されているがピッチが上がり音は随分狂っている。早速、作業に入るが基本のピッチA442Hzが合わせられない。調律をする為に我々が聞いている音が全く聞こえない!というより音が響きすぎて弾いた瞬間の音と音程を変えた瞬間の音が混ぜこぜに聞こえて調律出来ない。う~これは、困ったなぁ~!と残響音の時間を測ると何と6秒。簡単なアプリなので正確かどうかは、疑問だが私の耳でも6秒位に感じる。通常のコンサートホールは、残響音3秒位で会場の広さから音の減衰量も計算されているので気持ち良く聞こえるのがここでは、減衰音は殆ど感じられずに弾いた音がそのまま跳ね返って何時までも響いている。経験した事の無い物凄く響くホール。こんな所で讃美歌とか歌ったら厳粛な気分になって、さぞかし気持ち良いだろうなぁ~と思うがピアノ演奏にはちょっときついなぁ~。ピアノに頭をくっつける様にかがみ込んで物凄く小さな音で調律を開始した。普段と違う姿勢と打弦で思いの外時間が掛かったがどうにか綺麗に仕上がった。丁度、これで良しと作業を終えたと同時に会場に藤田真紀子さんが「梅根さ~ん!」と言って入って来た。ピアニストも到着して両者がリハーサルを始めるとあの会場の隅々まで藤田真紀子さんの見事な歌声が響き渡り、あの家庭用小型グランドも会場の響きに助けられてまるで大型グランドの様な音がしてる。これなら世界配信も大丈夫だな!と安堵して会場を後にした。
その翌日は、弊社が主宰するプライベートボサノバコンサート。この日の為に企画から集客に調律そして司会進行と大忙し。このコンサートは、今年の3月に私のピアノ調律のお客様であるボーカルのMIDORiさん宅でレコーディングをした時の調律を担当して心地良い音楽に魅了されて是非このメンバーでコンサートやりましょうと調子よく話を進めてしまったのがきっかけでした。レコーデイング当日は、3月にしてはとても寒い日で天井の高い古民家で薪ストーブを焚いてMIDORiさんの歌・永見行崇さんのピアノ・新井みつこさんのチェロと未体験の取り合わせと未体験の場所での未体験のボサノバのレコーデイング。そして人生初のアップライトピアノでのレコーディングだったがピアニスト永見行崇さんの多彩な演奏と録音技術で忘れられないレコーデイング調律となった。
コンサート当日は、先に頂いていたあのCDを何度も聴き込んでイメージを膨らませてあの友人宅ホールでの響きをイメージして調律を行った。MIDORiさんの大人のボーカルに柔らかな音色のチェロ、ピアノは、きらびやかさが有って澄みきった伸びやかさを表現する様に調律したらそれを永見さんが見事に弾きこなして何とも素晴らしいコンサートになった。楽曲と選曲の良さに何より1曲が4分以内と現代人が聴きやすい曲の長さ。そしてマルチリンガルで才女であるMIDORiさんの巧みな会話に会場のお客様もとても満足して頂けた様でした。お客様の中に「主人がボサノバ気に入っちゃってお風呂で聴くんだとCD買って楽しみにしているんですよ!」「とても良かったわ!ボサノバ大好きなんですよね~!」と当日の反響は、とても良くてお客様と演奏者そしてスタッフも大満足のコンサートでした。その満足の裏付けとして当日のメンバー3人がそれぞれリリースしているCD。全て完売となった。その様子にスタッフ一同、ホット胸を撫でおろした。MIDORiさんの2ndCD[HOME」は、自宅の空間をモチーフして彼女のご自宅で録音されました。そのCDの中に薪ストーブのパチパチという音を効果音として収録しています。そのパチパチの音は、私が着火した薪ストーブの音なのでこのCDには通常のレコーディング調律と違った格別の思い入れが湧きます。コンサートが大盛況でCDも沢山売れて皆さんの喜んだ顔に達成感を感じてとっても満足の行く一日。しかしその翌日から10月27日開催予定のコンサートの集客と打ち合わせ、資料作成など大忙し。ボサノバコンサートは、綺麗な女性二人に男性ピアニストの3人体制でしたが次のコンサートは、男性ピアニストと誰もが知る日本の顔元NHKアナウンサーと男ばかり。美貌で集客する訳にもいかず内容で勝負しなければなりません。質を高くと申しましょうか(笑)ちょっと嗜好を凝らしたピアノコンサートなので今までに無く準備が大変です。次回は、その様子と10月に突如舞い込んだ仕事で意外なビックな方々との出会いの経緯を記事にしたいと思います。皆様、どうぞ宜しくお願い申し上げます。なんて丁寧に書いてみた物の何だか調子が出ないなぁ~(笑)!皆様、いつも読んで頂いてありがとうございます。次回も是非お楽しみに~!