2019年1月覚悟の作業スタート

世界中で異常気象が報告されて関東も今晩あたりから雪と予報されて何だか底冷えする。気が付くと1月も今日で終わり。あ~なんて早いんだろう!お正月休みが随分前の事の様に感じられます。というのも昨年末から今年に掛けて大変な仕事がいくつも舞い込んで気が焦るばかり。とてもありがたい事ですがやらなければならない仕事に事務仕事も。今回は、そんな言い訳を記事にしたいと思います。

世界の名器ベヒシュタインのフルコンサートピアノ

私の学生時代のピアノの恩師から譲り受けたベヒシュタインのフルコンサートピアノ。昨年九州から運んで半年もずっと梱包したままでした。長さが2メートル75cmとさすがフルコンとてつもなくデカイ!梱包を解くにもこの大きさのピアノを広げるには、かなりのスペースがいるので中々開包する事が出来ずにようやく昨年12月に開包しました。

さすがに世界の名器ベヒシュタイン。ピアノの最も重要な所は、さして問題無いのですが、あっちこっちの木部の痛みがひどく、割れや剥がれに脚は3本ともほぼ壊れている。あ~これは大変だぁ~!ただただ呆然。塗装も割れているし鉄骨は、舶来ピアノに良く見られる緑青が出てる。覚悟を決めて完全修理する事にしてさぁ~ピアノ解体です。ピアノは、弦が220~230位ありますがフルコンともなるともっと多い。そして如何せん弦が長い。弦の太さは、それぞれの音域で変わるので通常のピアノではピアノ本体に弦の太さが記載されている。しかしこのベヒシュタインには、何処を探しても記載がされていません。「あ~しょうがない!一本一本採寸して外すしかないなぁ~!」とまたまた、覚悟を決めて作業に入る。マイクロメーターで測りながら弦を外してピンを抜いての作業。途中電気ドリルから煙が噴き出したりと大層に難儀をしながら普通のピアノなら半日で終える作業もフルコンともなるとまるまる二日掛かった。よりによって二日とも寒い日に当たって指先は凍えて鼻は真っ赤っかでお手々に肩から首からもう~色んな所が痛い!これから木工修理に響板・鉄骨・全塗装の作業がスタートする。先が長いぞ~!

そうこうすると見積り依頼のメールが入る。早速お伺いすると東京の一等地のマンションの一室。とても日当りの良いガラーンと何もない広い部屋の片隅にアップライトピアノが!一目見た瞬間に「ありゃ~ダメかも!」随分放置された感が見て取れて鍵盤蓋を開けるとそこには、プリマトーンと書かれている。音を出すと「べローン」とおよそピアノの音になっていない。下のパネルを空けて響板を見ると大きく3本?パックリと割れている。BASS弦も何故か一本切れている。アクションもガタガタだしピン板も割れている事が想像できる。お客様に「ここまでくると修理ではなく一台ピアノを作るって感じですかね~いやもっと手間が掛かりますね(笑)!」お客様は「実は、他に何社もピアノを見て貰ったんですが皆さんお手上ですと言って帰られました。」私は「それは、どんな所に見て貰ったのですか?」と聞くと名だたるメーカー数社の技術者に見て貰った事が分かった。そして「十数年前に鎌倉からこのピアノを運んでその折に実家も処分しましたので唯一鎌倉との繋がりを残す品物がこのピアノなんですよ!どうにか修理してこれからは、大切にして行きたいと思っています。最後の頼みの綱として鎌倉ピアノさんに見て貰って判断したいと思っています。」そう言われると何だかどうにかしてあげたくなって、またまた覚悟を決めて「費用と時間がかなり掛かりますが宜しいですか?」とある程度の具体案を提示してピアノをお引き取りする事になった。あ~ちょっと安請け合いしちゃったかなぁ~?でも最後の頼みの綱と言われるとやるしかないでしょう。ここは、覚悟を決めて頑張ってお客様をビックリさせてやる~!

プリマトーンだが何処にも製造番号が見当たらない!
バックリと割れた突板。ピアノの各所でこの状態が見られる

そんなこんなの最中に弊社のホームページのアールウィンザーというピアノの記事を見て問い合わせが続いた。一件目は、365日雨戸の閉まった部屋に27年間放置していたアールウィンザーw113の黒いピアノ。中の調律記録を見てみると昭和61年に購入して最後の調律が平成4年調律師名の欄に梅根と書かれていた。「え~僕が調律に来てますよ!え~ここに僕来てたんですかね~?僕の事覚えていらっしゃいます?」と聞くと「いいえ、初めてです!」ときっぱり「え~????」と首をかしげると「このピアノは、妹が持っていたピアノなんです。昔、妹家族が転勤で海外赴任するのでその時にここに運んで来て誰も弾く人が居ないのでそのままになっていたんですよ。」「妹さんは、なんていうお名前ですか?」「○○で横浜の○○に住んでいたんですよ!お分かりになります?」「何となく覚えがあるような無いような??あの細い階段上った途中の右側の所ですか?」「そうそうあの細い階段の所」とちょっと話が盛り上がって何だか27年ぶりのご対面のピアノにちょっと懐かしくて嬉しくなって弾いてみると27年も何も調律していないのにそんなに滅茶苦茶ではない。心の中で「いや~俺って天才!」なんて有頂天になった。ただ、湿気の多い所なので機械の動かない所や鍵盤が上がってこない所が多数あった。何だか気分良くよ~しと覚悟を決めて全部丁寧に修理してあげようとたっぷりと時間を掛けて作業をしたらビックリする位に綺麗な音を奏でてくれた。疲れて帰る足取りも軽やかに終始気分の良い仕事だった。

そうこうしているとまたもや実家からピアノを運びたいんですけどピアノが使える物なのか修理と移動で費用はどの位掛かるのかと問い合わせ。早速お伺いすると、またまたアールウィンザーw112のマホガニー色。保管場所が良くて中身も傷みもほとんどなく外装もいくつかの傷はあるものの程度はとても良い!お客様は「あんまり掛かる様だったら電子ピアノ買った方が良いかな?と思って」と言うので「こんな立派なピアノがあるのにちゃんと調律と調整して外装もちょっと綺麗にしてあげるとまだまだ何十年も使えますよ!良い音に仕上げてあげますから!」というと「宜しくお願いします。」と二つ返事で了承して頂いて無事にお届けした。

クリーニングで綺麗に仕上がったウェインザー

昨年は、1月5日の仕事始めにインフルエンザにかかって新年早々に寝込んでしまったが今年は、新年早々、ピアノを通じて新たな出会いや昔懐かしのピアノと再会など幸先の良いスタートが切れました。今年もどんなピアノに出会えるか今からワクワクです。あの大修理ピアノやフルコンの修理などなど手間が掛かり悪戦苦闘するであろうその様子は、またここにアップして行きますのでどうぞ皆様、お楽しみに~!