休業宣言の最中に!

コロナウィルスの影響で4月9日より休業を宣言して早3週間。いよいよゴールデンウィーク突入。ニュースで鎌倉や江の島界隈の大渋滞が報道されると私の自宅町内では、早朝から「鎌倉には、お出かけにならない様に!」と不要不急の外出を自制する呼びかけ放送が鳴り響く。暖かく気持ちの良い晴天に誰もが活動的になるこの時期の自粛要請は、かなりのストレスが溜まる事でしょう。そんな休業を余儀なくされたこの頃の様子とふと思い出した昔のお話を今回は、記事にします。

不要不急と言えども食料の買い出しはしなくては、飢え死にしてしまうのでいそいそとスーパーや商店街に買い出しに出掛ける。すれ違う人、通りを歩く人、車を運転している人、目に入る人ほぼ全員がマスクをしている。もうその異様とも言える光景が事態の深刻さを表している。若いお姉さんや昔若かった女性も顔の半分は、自然とマスクに隠れる。もう綺麗なのかそうで無いのかすら判断出来ない。男に関しても怪しげな人なのか危ない人なのか判断出来ない。「緊急事態宣言てこういった意味も含まれてるんだなぁ~(笑)!」とくだらない事をつぶやくと横で妻が呆れたを通り越した冷ややかな目でちらっと見た。あ~ストレスが溜まって来ているんだなぁ~と良い様に解釈する(笑)。ニュースで海外の様子が映し出されると海外でも行き交う人皆がマスクを着用している。もう世界中の人間が全員マスクしているんだ!これから人類は、マスクするのが当たりまえになるのかなぁ~。もう一生みんなで半分顔隠すともう誰が誰だか分んなくなっちゃうなぁ~!これは一大事だ!なんてまたまたくだらない事を考えたが、今度は、叱られそうなので口にするのをグッと堪えて真摯に一日も早い事態の終息を心から願った。

1カ月間、仕事を休んだのは、今から25年位前だったかなぁ~!33Kgの愛犬を抱っこして自宅階段を踏み外して左足を骨折した時以来である。その時は、左足にギブスで松葉杖なのでピアノ調律をしようにも出来ない状態。覚悟を決めて療養に専念して安静にしていた。それでも世間は、通常通りの経済活動なので横になっていても電話は、鳴るわちょっと来てくださいなんて事もあって左足骨折だったので車を運転して行くとお客様が驚かれて数年経っても「あの時、梅根さん松葉杖で片方革靴で片方サンダルでしたね~(笑)。あんな時にいらして頂いて申し訳なかったです!」と笑い話になる。その時期、お休みしている時に携帯が鳴った。「横浜の○○区の○○です。梅根さんですか?」当時、6年程のお付き合いのお客様でした。最初にお伺いした時は、親戚に譲って頂いたKAWAIのピアノで購入して1回しか調律していない為にピッチが全音下がっているひどい状態での作業でした。古い日本建築の大きな家で玄関を入ってすぐの和室にピアノがあり障子の向こうに一面芝生の広い庭と大きな木が印象的な落ち着いた雰囲気の家。記憶が定かでは無いが4時間位かけて正常の音の高さに上げて弾ける状態にしたというのが最初の出会いでした。調律をするとかなり良い音になったが15年程放置されたピアノで1回しか調律してない言わば寝たきりの人を叩き起こしてさぁ~全速力で走りましょう!なんて訳には行かないのと同じで次の調律までには、又随分音は下がるだろうとそんな感じの説明を丁寧にお客様にすると「折角、縁があってこの家に来たピアノですからこれからは、ちゃんとしてあげたいんです。」と仰った。息子一人と娘二人の三人のお子さんを持つご家庭で全員がピアノを習い始めていました。ある年、調律の時期になってお電話差し上げても誰も電話に出られないのでどうしたのかなと思いながら、確か3カ月程、時期が過ぎていました。携帯で「はい、梅根です。お世話になっております。お元気で居らっしゃいますか?調律のご連絡を何度も差し上げたんですがどなたも電話に出られないのでどうされたのかな~?と思っていた所でした。」と申し上げると「そうだと思って、ごめんなさいね!私、今入院していて子供達は、実家に預けているんです。」「そういえば昨年もちょっと調子が良くないとおっしゃっていましたから、ちょっと心配していたんですよ!」と申し上げると「よく覚えていてくださいましたね。昨年から入退院を繰り返しているんです。それで今は、自宅に誰も居ないし調律をお願い出来ない状態なんです。ピアノ大丈夫でしょうか?」「ちゃんと毎年調律しているので大丈夫ですよ!退院されて落ち着かれたらお電話ください直ぐにお伺いしますよ。そんな事よりもお体お大事になさってください。」「今年の調律は、そういった事情で無理ですが来年の調律の時期にお電話くださる?これからもずっと毎年の調律宜しくお願いします。」と病床からいつもと違う、か細い声でこれからも毎年の調律宜しくお願いします、の言葉が良くない状況を察知させて僕の心に深く刻まれた。翌年の調律の時期にお電話するとご主人様が電話に出られてあの電話を頂いて間も無くお亡くなりになられた事を知らされた。その後、弾く機会を著しく失ったピアノですが、「妻が病院からそんな電話をしていたんですね。」とご主人様も奥様の気持ちに応えて毎年の調律を続けていらっしゃる。私もその思いに応えて丁寧に繊細に毎年の調律作業をさせて頂いて何時でも良い音で良いタッチで弾けるとても状態の良いピアノに仕上がっている。昨年、お伺いした折に次女に女の子が生まれた事を聞かされて「数年したらお孫さんがピアノをつかってくれますね!」と言うと「そうだと嬉しいですね(笑)!」とご主人様が仏壇の遺影写真に微笑みかける様子に僕の心がきしんだ!1台のピアノを通じてなんて素晴らしいお客様と知り合えたんだろう。この仕事をしていて本当に良かったと思える瞬間でした。そんな出来事を思い出して悦に入っているとあの買い出しに出掛けた時の妻の冷やかな顔がよぎった!あ~改めて一日も早いコロナウィルスの終息を心の底から望んだ!