ピアノ販売の話

2021年2月も残す所今日だけとなった!関東は、とっても暖かく早咲きの桜や梅も丁度見頃になっている。しかし2月は、関東以外の日本海側から九州に至るまでかなり雪が降って寒いらしい。高速道路で大雪の為に通行止めで長時間缶詰め状態。なんてニュースで聞くとこんな大雪が関東で降ると交通麻痺は、想像を絶する事になる事は明白です。もう歳をとると寒いのは体に堪えるのでこのまま、暖かい日が続いて気が付いたら春?なんて甘~い考えで過ごしている。尋常じゃない交通渋滞と聞いて思い出される昔の出来事を今回は書き記したいと思います。

 

2021年になって直ぐに何とも珍しい方から電話を貰った。「○○です。分かります?」29年前に弊社で物凄く高いピアノを購入して頂いて今でも毎年調律にお伺いしているお客様のお嬢さんからでした。数年前にご結婚されてお子さんも生まれて弊社の近郊にお住まいだと聞いてました。「お~分かるよ(笑)!どうしたの?」「ピアノが欲しいんですけど」と言うので「ピアノ?実家にだれも使ってないけど毎年調律してる物凄く立派なピアノがあるじゃない!あれ持っ来て使ったら?」と言うと「私もそう思って何度か母に言ってみたんですけど断られたんです(笑)。」「断られたの(笑)?」「はい、ピアノの事は、梅根さんに相談しなさいと言われて(笑)。家を新築したのでこれを機に小型の木目のピアノが欲しいんです。そしてサイレントを付けたいんです。」などなど他愛ない話も交えながら今週末に倉庫に見に来る事になりました。久方ぶりにお会いするお嬢さんと初めてお会いするお若い旦那さんそしてお子さん。よくよく話を聞くとご主人様がピアノを弾きたくて購入したいとの事。偶然、ご希望にピッタリの現行機種のインテリアピアノでサイレントピアノ。ほとんど使われていないピアノでついでに全塗装した在庫ピアノが偶然有ったので慌てて調律を済ませてお見せした所、一目で気に入られたのですが予算が物凄くオーバーしているらしい。と言うのも、最近のお若い方々は、ネットで色々と調べて実際に色々なピアノ屋さんに出向いて勉強している。しかしピアノとなると中々難しくてどこのお店のいう事を信じて良いのか難しいのが楽器の世界です。それにご自宅を新築されたばかりとなると慎重になるのは当然の事です。どこから見ても新品にしか見えないYAMAHAの現行機種のインテリアピアノがあの新築の家にはピッタリで値段を考えなければ、このピアノしかないでしょ!と業界人として自信を持って思った。いや、このご家庭にこのピアノを使って頂きたいと心から思った。

 

 

今から29年前、1992年10月24日土曜日の出来事です。ピアノの先生の紹介で夕方5時に神奈川県の秦野のお客様宅にピアノの説明にお伺いするお約束でした。4時位に東名横浜インターから現地に向かいました。かなり渋滞していて様子がおかしいな?今と違ってネットやスマホが無い時代ですので私の情報収集不足でこの渋滞が東名高速集中工事だという事を知らなかったのです。5時位に厚木インターを超えた所でインター閉鎖となりました。当時は、自動車電話でしたので急ぎお客様へ電話を入れました。恐らく「今、厚木インターを過ぎた所なんですが、東名集中工事で渋滞につかまってます。少し遅れますがお待ちいただけまでしょうか?」といった具合だったと思います。勿論、お客様は、「良いですよ!お気を付けていらしてください」といった感じだったと思います。それからは、全く車は、、前に進まず時間だけが無情にも過ぎて行く。時間に遅れて未だ何時着けるのか見当もつかない気の焦りと申し訳ない気持ちが重なりただただ先走る気持ちを抑え喘いで無駄に無情の時間が過ぎて行った苦しい思い出。まだ、一度もお会いした事も無いお客様に対し困り果てて何度も電話を入れて状況の報告とお詫びをする事、数回。もう夜の8時になろうとしていた。約束の時間より3時間遅れ。これじゃ~とてもピアノなんて買って頂けるはずは無い!としょんぼり気落ちして渋滞の疲れも重なってアクセルを踏む力さえ無くしてしまった。それでも、ようやくお目当てのインターを降りてお客様宅の近くに近づいたが今度は、辺りが真っ暗で家が分からない。分厚い地図を頼りに探すがもうお手上げ。止むを得ずお客様にお電話差し上げるとご主人様が直ぐに車で迎えに来てくれた。「いや~大渋滞で大変でしたね~(笑)!」と笑顔で迎えて頂いて物凄く気持ちが和らいだ事を強く記憶している。恐縮の度を越えてお客さん宅にお邪魔してただただ平謝りしてその後、ピアノの話をどう進めたのか記憶に無い。お子さんは、3姉妹で小学低学年・幼稚園・赤ちゃんで三姉妹なので取りあえずピアノをという事で一番高いピアノを即決して頂いた事がまたまた驚きで感謝と驚きが心に刻まれた忘れられない出来事です。その後、29年間に渡り長いお付き合いをさせて頂いて、その時の幼稚園のお嬢さんが今回ピアノを買うお客様です。

 

無事、値段の問題は、弊社が出血大サービス(笑)をする事で問題クリアでピアノが決まった。さぁ~お届けまでにピアノを仕上げなければなりません。外装は、全塗装をしたので良いのですが中身の掃除から研磨や調整。サイレント付きなので、もう一度鍵盤調整をしてサイレントの調整を一からやり直して最終仕上げです。やる事が沢山ですがこれをしないとお届けは出来ません。早速、作業に入り順調に進んでいる所で鍵盤調整に入った。するとパリンと白鍵が綺麗に剥がれた???何だ?もう一枚ちょっと剥いでみると簡単にパリンと剥がれた。慌ててメーカーに問い合わせると「その時期のピアノは、白鍵の接着剤に問題があって簡単に剥がれるんです。メーカーでクレームで無償修理で張り替えが出来ますとの事。しかし交換に時間が掛かるので今回のピアノ納品には、とても間に合わない。やむを得ず自分で張り替えるしかないな!と急ぎ作業に入った。溶圧着なのでそれなりの工具と場所が必要ですがそれは、餅屋は餅屋で素早く綺麗に仕上がった。それから鍵盤調整をした後にサイレントの再調整をして完璧にピアノが整った。ここまで手を掛けて仕上げれば申し分無し。先日天気に恵まれて無事にお届けした。今回の様にご両親もお子さんも弊社でピアノを購入して頂いて調律で長いお付き合いになる。ピアノを通じて数十年が当たり前のお付き合い。大変ありがたいお話です。ましてや、幼稚園だったお嬢さんがお母さんになって立派になられたとなると妙に嬉しくて採算度外視になってしまうが、正に調律師冥利につきます。世の中、まんざらじゃないな!どうか末永く健康でお幸せにと心から願った!