ピアノ買取バブルの崩壊

今年の梅雨も線状降水帯の発生が報告され日本各地で被害が発生している。延々と叩き続ける様な土砂降りは、河川の氾濫に土砂崩れ。人の力の及ばない自然の猛威は、ただただ恐怖しかない。被害に見舞われた皆様ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。そして一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。さて、そんな中昨年初よりピアノ業界もかなり色々と情勢が変わってしまい業界人も翻弄されています。今回は、そんな事情を書き記したいと思います。

 

「ピアノ売ってちょうだい!」と誰もが記憶しているテレビコマーシャル。財津一郎さんの強烈なインパクトで長年放映されていました。今でも目をつぶって思い起こせば財津一郎さんのあの「ピアノ売って頂戴!」の声が蘇る。伝えたい事をストレートに視聴者に伝えて記憶に残すあのコマーシャルは、特別な演出がある訳でも無し特撮やストーリーも無いのだが、財津さんの起用によってコマーシャルとして大成功だったなぁ~と素直も思う。ただ業界人としては、あの宣伝により買い取り価格の高騰に拍車を掛けた事も事実であろうと思う。まぁ~競争社会の経済活動ですからあのコマーシャルが無くても遅かれ早かれ高騰したでしょう。ただ、ちょうど世の中がリサイクルブームに入って行った背景もあって使わない邪魔なピアノに高値が付くとなって買取業者の争奪戦に高騰の拍車が掛かった。お客様より、「ピアノ買取のコマーシャル、財津一郎さんがお亡くなりになって全く見なくなりましたね。」「昨年の秋でしたかね~亡くなられたのは」と伝えながらも実は、もっと前から見なくなったというのが本当です。今までは、買い取ったピアノを中国に輸出していたのですがその中国が買わなくなってしまったのです。原因は、中国経済の失速と言われています。確かにそれも原因の一つなのでしょうが、もう既に中国は世界一のピアノ生産国です。長年に渡る日本、ドイツなどの技術指導の下、今では、品質の高い立派なピアノを生産されてます。中国の人達がわざわざ高くて古い日本のアップライトピアノを買わなくても品質が良くて安価で綺麗な新品のピアノを購入するという選択肢は、自然な流れであって当然な訳です。その影響で昨年から日本のピアノ買取価格は、バブルが弾けた様に暴落暴落というか元の常識的な値段に戻ろうとしています。まぁ~中国に高く売れないのですから高く買い取れない訳です。考えてみれば大昔35万円で売られていた50年前のピアノの買取価格が17~8万なんて異常な高値で取引されていた訳です。その高額買取も終焉を迎えました。

グランドピアノの屋根の裏側もピカピカに。

今後の買取業界は、中国経済次第と言われていますがグランドピアノは、未だに高値の取引がされています。アップライトピアノに比べて台数が少ない事と世界一のピアノ生産大国である中国と言えども芸術性の高いグランドピアノに関しては、日本・ドイツなどの人気が高くまだまだ高値に拍車が掛かると思われる。勿論、これも何時までと予測するのはとっても難しいがあの14億の人口を抱える中国にグランドピアノを欲する富裕層の人達が想像を超える規模で存在する事は忘れてはならない。何も中国を贔屓(ひいき)にしている訳ではありませんが、あのショパンコンクールにしても日本人の最高位は2位ですが過去に中国人に韓国人も優勝して先を越されている。超絶技巧と高いエンターテイメントを武器に世界的に大人気のピアノニストにユジャ・ワンやラン・ランも中国出身である。今では、大谷翔平さんやボクシングで活躍する井上尚弥さんと日本人が世界に誇れる名スポーツ選手が誕生しましたが、そろそろ、クラッシック音楽の世界でも彼らに続いて欲しいと思う。そんなこんなで弊社では、まだまだ高騰が続きそうなグランドピアノの調整や磨きに余念がない。本当に大切に使ってちゃんと調律する方にお売りするのでと云うよりこれら私が仕上げたピアノは、ずっと私がメンテナンスしたいのであんまり遠くの人ややたらと転勤や転居のある人には、売りません。なんて殿様商売ですが手塩に掛けたピアノは、嫁ぎ先でもずっと大切に幸せに使って頂きたい(笑)。嫁いだ娘は出来れば近所か同居と願うものです。決して息子じゃなく娘なのですね~!私にとってのピアノは、娘みたいなものでただただそんな程度の願いなんですけどね(笑)!