慌ただしかった2024年10月

2024年の秋は、その気配を感じたと思ったらまた夏日とその繰り返しで道行く人も短パン半袖、真夏の格好かと思いきやダウンベストやコートを着込んだ人。もう何を着たら良いのか正しく判断出来ない位に気候の変化が人々の暮らしに影響を与えているようだ。そんな中、仕事もプライベートもちょっと慌ただしくしていたので前回のクイーンのコンサート以来ホームページをアップ出来ておりませんでした。気が付いたら10月も残り僅かなので急ぎ近況をアップしたいと思います。

9月7日のクイーンのコンサート翌週14日は、国内外でご活躍の鈴木隆太郎さんのコンサートが開催された。前回と違ってショパンにラフマニノフとクラッシックピアノコンサートです。一週間前にフレディのピアノの音に仕上げたピアノは、コンサートが終わった後に元に戻す作業をしていたのですがやはり鎌倉に関わりのある著名なピアノニストのコンサートなので気持ち新たに念入りに音造りから手を入れる事にした。まぁ~クイーンのコンサートで根本的に手を入れていたので今回は、その延長で時間内に丁寧な作業が想像通りに進んで万全な準備を終え本番を迎えた。前回のホームページを読んで調律師の知り合いから数人ロックとクラッシックの調律ってどう変えるんですか?と質問を受けた。これを電話で説明するのは、大変難しくて相手がどんな音楽を聴いて来たのか、ロック・ポピュラーそしてクラッシックにどれだけ精通してどういった感性をお持ちなのかによる。なんて書くととっても難しい様に思われるがそんな事は無くてどちらも弾き手が気持ちよく弾けるように準備するただそれだけです。ただそんな説明では誰も納得頂けなくてちょっと困った。ご自宅で気に入ったCDを聴く時に何時もボリューム5とか6とかそれぞれにお決まりの音量と云うのがあるのですがクラッシックのピアノソロアルバムを聴くと何だか音が小さいなぁ~と感じてボリュームを2~3上げて聴いた事を経験されている人は、沢山いるはずです。ダイナミックレンジの広いピアノの音を録音するという事は、ピアニッシモからフォルテまでの音量の差と音色・倍音を隈なく録音する。そしてそれを再現する時に色々と厄介な事にぶつかる訳です。アコースティク録音の難しい所ですが逆に言うととってもシンプルで全体の音圧を下げれば問題は解決の方向に向かう訳です。ロックなどはドラムにベースにエレキギターやキーボードを大音量で演奏するのでピアノの音はかき消されてしまいます。そこでプロのエンジニアがかき消されない様に工夫をしてくれます。その工夫の方法や手順を担当調律師は、知っておく必要があります。すなわち調律師自身が録音やそのオペレーション(工夫)を体験しておく必要がある訳です。それなりの機材やその扱いのレクチャーを受ける必要があるので興味の無い調律師さんには厄介と云うか面倒なのでお勧めしませんがそういった努力?興味をもって作業に取り組む必要がある訳です。またその世界は、とっても奥が深くて私も未だに満足のいくオペレーションが出来た事がありませんが何回やっても何回やり直しても飽きない調律師として特別な世界がそこにあります。なぜならば細かな音までこだわりを持って調律して作りあげたピアノの音を録音して、その音が如何に原音に近いかそれは誰の耳よりも調律した本人が一番正確に判断する事が出来る訳です。ピアノ調律が記録として残る唯一の手段ですからピアノ調律師ならば興味が湧かない筈がありません。調律師として格別な世界がそこに存在します。我々は、ジャンルを超えて色んな音楽を知る努力を怠ってはいけません。ちょっとマニアックでつまらない説明文になってしまいましたが質問者に対してフォローのつもりで書き記しました。どうぞ勘弁してください(笑)。

2024年、弊社は不思議と新品のピアノが売れている。ここ数年新品のピアノの定価が上がり続けている事が起因しているのか?この10月1日にもYAMAHAのグランドピアノにShigeruKawaiが値上げとなった。グランドピアノの場合、値上げと言えば1万2万ではなく数十万円単位なので消費者にとってはとっても大きな金額です。昔の様に子供が居れば即ピアノなんて時代は、それこそ時代遅れで電子ピアノも安価で随分良くなっています。何時まで続くか分からない子供の為にいきなり新品100万円のアップライトピアノを購入するご家庭は、決して多くは無いはずです。と言っても中古ピアノも50万円以上なんてそれなら電子ピアノ10万円てな訳になるのは当然で今時の若き世代は、お金の使い方や商品の見極めがとっても上手で子供が本当に好きと分かったら電子ピアノからいきなりグランドピアノに買い替えてなんて具合に時代が大きく変わってしまった。これが本来の消費行動なんだとお若い世代に教えられる。

 

10月上旬にピアノの先生からお友達の子供がグランドピアノを探しているので相談に乗ってくださいとメールが来た。早速お電話を差し上げてみると場所から予算から色々と制約があって色んな展示会などに出かけて大方機種が決まっている様でした。私は、「とりあえずYAMAHAもKAWAIもありますからとりあえず弾きに来てください。それからゆっくりと考えられたら良いんじゃないですか?」と言うと翌日に弾きにいらした。お母さん、息子におばあちゃんの3人揃で最初にYAMAHAの手塩を掛けて調整したピアノをお母さんに弾いて貰った。「あ~素晴らしい音。とっても弾きやすいし綺麗」と言ったがきっと高いんだろうなと緊張した様子。次に息子さんに弾いて貰うとこれが中々センスが良くて何よりピアノが大好きオーラが凄くてあ~なんか良いなぁ~と眺めていると突然リストの魔王を弾き始めた。これは、私も大好きな曲で何だかこの親子に弊社のピアノを使って欲しいなぁ~とちょっと思っちゃってちょっとこっちのピアノ弾いてみてとそしてこっちも弾いてみてと色々と音の違いやタッチの違いを説明して私が明るい音やまろやかな音そして迫力のある音を実演すると驚くことに短時間にピアノの音の聴き方と云うかどういった音が良い音なのかを理解された。弊社のピアノは、大方以前私が販売してメーカーの工場まで行って数台の中から選定してお届けしたピアノです。最初から当たりピアノで身元がはっきりして私がずっと定期調律をしたピアノばかりなのでこの縁深いピアノは、おいそれと誰にでも販売という訳には行きません。本当に大切にずっと使って頂ける方のお宅に嫁がせたいと願ってます。今回のお客様には、どれもご予算とピアノのサイズが大きくオーバーするピアノばかりでしたがとってもピアノ好きそうな一家だったので大胆な条件を提示した。提示した瞬間にちょっと大胆過ぎたか?と一瞬後悔がよぎったが、男の子のピアノ大好きオーラに魅せられてピアノの幸せを望んだ。後日、お電話で購入が決まってとっても気分が良かった。さぁ~お届け迄に最終調整をして最高の状態でお届けします。嫁入りの支度を万全にしてその日を待ちわびる秋麗の候。ちょっと寂しくなるが素敵な縁に恵まれた。