ピアノと粋な対話を!

2025年は、お正月からお天気に恵まれて気持ちの良いスタートを切る事が出来た。と言っても昨年末のインフルエンザ感染は治ったものの私の様な高齢者が全開になるにはいく分余計に時間が掛かるので大人しくお正月は家に巣篭って過ごした。1月は、昨年の病欠によるスケジュールの遅れを取り戻す為に只今も躍起になって奮闘している最中でございます。予定が遅れてしまいご迷惑をお掛けしておりますお客様には、心よりお詫び申し上げます。徐々に解消されておりますので今しばらくお待ちくださいます様にお願い申し上げます。さて今回は、例年通り新年1月の近況と心境を簡単に書き記したいと思います。

極寒の体育館。

2025年1月は、弊社の決算など諸々の事務仕事があって会社として支払い義務のある消費税額に目がクラクラ来てこの重税感に呆然としていたらもう2月になっちゃったといった具合で決して怠けていた訳ではありません。そんな中、毎年新年最初のお仕事はなぜか学校調律がお仕事のスタートになっている。どうしてかなぁ~と考えるとこの予定は昨年秋には互いに日程調整をしているのでどうやら私が承諾して決めている様だ。なんだそりゃって感じですがこの時期の学校の体育館は、兎に角寒いので体に堪える。ただ今年はいく分暖かいので随分助かるが自分で承諾した日程ですから決して文句は言ってはいけませんと肝に銘じる。そして近年神奈川県の学校のピアノは、どんどん買い替えが進んでどこも新しいピアノが納入されているのでとっても楽である。とはいえ新調したばかりのピアノをついつい壊してしまって学校側が大慌てしてなんて事もある。下の写真は、一昨年入れ替えで新しくなった体育館のピアノ。直ぐに何ぞのアクシデントで鍵盤を欠けさせてしまった。それに慌てて先生がG17ボンドで接着して使えるように修理をした。のですが流石に真新しいピアノが無残にと次の調律の時に修理する事になったのでこの時期に弊社に調律と修理の依頼があった訳です。

ソの鍵盤が欠けてボンドで接着されている。

純正部品で修理。

別の学校の音楽室

鍵盤交換なんて簡単な修理なのですがこのボンドが意外に厄介で綺麗に取り除いて木部を平らにするのだがこれらを寒い体育館でチャンチャンと修理するにはリスクもあるので作業場に鍵盤を持ち帰って綺麗に仕上げた。学校には、「にわか修理は、禁物です。何か不具合や壊れたりしたら、とりあえず電話してください直ぐに駆け付けますから」と言って作業を終えた。この2月も学校などの公共施設の仕事は続く。

良き時代のシンメルピアノ。今は中国資本になったらしい。

アクションは扱いやすいレンナー。作業が楽しい。

昨年、初めてお伺いしたシンメルのグランドピアノを所有されているお客様宅に今年も調律にお伺いした。所有者であるお客様は、海外にお住まいでお電話差し上げた時に丁度帰国されていたのでこのタイミングでお伺いする事になった。昨年同様に堂々とした存在感のあるピアノ。昨年は、大方5時間位掛けて修理・整調・調律をしたのだが、調律後程無くされて海外に戻られたので殆ど使用されなかった。そういった事情で思いの外コンディションが悪く今回も修理・整調・調律と通常より少し時間が掛かった。しかし、昨年かなり手を入れていたので何だか「昨年の調律の叔父さんが調子を整えてくれている!」ピアノの方がそんな感じで手こずる事無く素直にどんどん調子が良くなっていく。そうなるとちょっとこっちも気持ちが乗って来て「やっぱりドイツ物は違いますねぇ~!」なんて楽しくなってあれもこれもと色んな作業をしてあげたくなってあっという間に時間が過ぎた。この素直というのは、私が思う通りにピアノが応えてくれて直ぐに思い通りの良い状態になる場合です。そうでないピアノは、これをやるとこうなるだろうと予測しながら作業をしても、思いに反してさっぱり良くならない。私の方も「おいおいどうしたんだよ、機嫌でも悪いのか?」なんて言いながら再度手を加えるとボキッとあらぬ所が折れちゃったりして「おいおい俺に喧嘩でも売ってるのか? ったく手の掛かる悪い子だなぁ~!一体誰がここまで丁寧に作業してると思っているんだ~!」なんて半ば喧嘩腰になりながらピアノと格闘をしながら最終的には、ちゃんと思い通りに仕上げるんですけど(笑)。それは、長年この仕事をやって色んなピアノと格闘をした経験が役立っているのでしょう。どうやら「しょうがないから言う事聞いてあげるよ!」と素直になってくれる。どうやら言う事を聞かないピアノは近年お目に掛らなくなった。これも年の功と云うか経験値なんでしょうね。調律師の仕事は、細かくて忍耐のいるチマチマした作業の積み重ねですが、そんなやり取りが何より楽しくて奥の深さに未だ魅了される。今年ももっと深い所で粋な対話がしたい。何時までもそんな気持ちでピアノと向かい合う2025年のスタート!