ピアノが元気になったみたいだね!

2026年7月も日々慌ただしく過ごして居ると数日前から子供達は、夏休みに突入していてちょっと驚いた。17日の金曜日の夜、いつものガソリンスタンドに寄ると長蛇の列。え~こんな時間に何事?とスタンドのお兄さんに聞くと「明日から3連休ですから皆さん給油されてます。」とまぁ~皆さん大変ですが夏休みも重なってる訳ですね(笑)。今回は、ちょっとマニアックであまり頻繁に修理する所では無い上に専門用語が出てきますので調律師の皆さんは読んで頂くと直ぐに分かると思いますがピアノ愛好家の方やピアノ講師の方々そしてピアニストの方々には、あまり馴染が無いと思いますので写真を参考に不明な事がございましたらご懇意の調律師に尋ねるなどして読み進んでください。今回は、そんなこんなの修理の様子を記事に書き記したいを思います。

バットスキンが過使用により擦り減って剥がれている。

合皮を手作業で剥がしている作業。

とあるSNSにピアノ調律師が古いKAWAIのピアノのスティック修理つまりセンターピン交換の修理をしながら「この時期のKAWAIは、フレンジがプラスチックで出来ているから年数が経つと縮むんだと思う。そうでないとこんな酷いスティックにはならないだろう」と語っていた。私は、「縮じむ・・・考えもしなかったなぁ~!」と新たな意見に興味を持った。本当の事は分かりませんが当時KAWAIは、生産コストと生産効率を考えてABS樹脂を採用したと聞き及んでいた。しかもピアノ本体内部の部品なので紫外線などの問題もクリアーされ湿気による変化が無いとされていたが実際は、湿気が多いと途端に全鍵スティック(機械の動きが悪くなって音が出ない)に見舞われて調律師は皆、スティック修理に苦労させられた。それが縮むからと聞いてとても興味を持って友人で材料工学を専攻した元商社マンに電話を入れると「経年変化でわずかながら確かに縮む」との答えが返って来た。私は、「本来は木で出来ている部品だから木の方がもっと伸び縮みするだろう?」すると「確かに(笑)。木部は、かなり伸び縮みするがABSは、ほんの僅か縮んで伸びは期待できない。」てな感じでその他にも色んな事を教えてくれた、やがり持つべきものは優秀な友だなと心より感謝した。最後に彼は、完全定年したんだけど今は、町内会長で忙しいと久しぶりに長電話を楽しんだ。SNSの調律師の言う通り縮むのだそうです。ただしほんの僅かでピアノのフェレンジの穴は木製ほど変化はしない様です。私は、当時のKAWAIのスティックの原因は、ABSにブッシングクロスを貼り付ける接着剤が起因してるのではないかな?と想像した。木製ならば接着に膠や塩ビボンドなど使用されるがABSにはそれらは使用できないので石油系ボンドだと考えられます。あの88鍵全鍵盤スティックでセンターピンの緑青などとニッケルに反応するなどは、ABSの縮みでは説明が付かないとも思う。ただ今となっては調律師はそれに如何に対応して行くかが重要で他のピアノに比べて面倒な処置を嫌がらずに取り組んで問題解決するしか方法はありません。この問題は、あくまでの大昔の話で今は、とっても開発が進んで近年のkawaiピアノで同様のトラブルは、殆ど聞かない。あのshigerukawaiの機械部分も新開発の最先端新素材が使われて世界中のピアニスト達が絶賛している。その事実が何よりの進化の証だと思う。

ブライドルテープが汚いので交換する事に

全ての貼り換えが完了。

さて、今回はその昔のKAWAIピアノの修理が舞いこんだ。大人のピアノ愛好者でヘヴィーユーザーて所です。数年前にバットのキャッチャースキンを苦労して交換しましたが今回は、バットのスキンやフェルトが痛んで擦り切れてしまったので修理が必要になりました。この修理に関しては、メーカーに問い合わせるとハンマーアセンブリ一式の交換を勧められました。それが一番簡単ですがハンマーとバットとシャンクを一台分新調する訳ですから修理代金は、一番高価になります。次に既存のハンマーを外して新たなシャンクとバットに部品を交換して付け替えるといった作業になります。その場合でもバットとシャンクの部品代に手間賃で修理代金は、まぁまぁ高額になります。しかも数年前のキャッチャースキン交換修理が全く無駄になってしまいます。最後にアクションを分解してバットスキンにアンダーフェルト交換など昔ながらの作業をする方法が一番安価に済みますが、バットがABSですからおいそれと剥がれない、新しいスキンを接着するにはボンドを使用するしかないと調律師にとって面倒極まりない作業になります。と云う事で今回は、一番面倒な方法をチャレンジしてみる事にしました。

鍵盤ブッシングクロス交換の様子

 作業は、難航するであろうと思っていた古いスキンを剥がす作業は、手作業に加え小型電動工具を駆使して思いの外簡単に剥がれた。新調するスキンの接着は、色々とテストを重ねて強度を試した所、普通の速乾性ボンドで十分であることが分かり圧着だけに気を配ってまるで新品の様に綺麗に仕上がった。ついでに長年の使用で汚くなっているブライドルテープも交換する事に。そして鍵盤のブッシングクロスを全鍵交換、接触部分のゴムやフェルトもついでに新調して最後にハンマーファイリングをして無事作業完了となりました。このABSタイプのピアノは、木製タイプと違って何かと勝手が違うので毎回試行錯誤しながら気が重い作業の連続ですが、お客様の大切なピアノですからミスは許されません。完璧に綺麗に仕上げなくてはならないので緊張の連続。しかし全ての作業を終えて綺麗に仕上がったアクションを眺めると言い様のない達成感に包まれて幸せが込み上げる。アクションに向かって「どうよ、完璧だろ!」と声を掛けて自慢した。さて仕上がったアクションをお届けしてお客様宅で2時間程整調。整音作業をしてお客様に弾いて貰うと「違うピアノになったみたい!」ととっても驚いて満足して頂いた。後日、お客様から「2階にいた主人が何だかピアノが元気になったみたいだね!」とまた、ピアノの修理では無理なお願いを快く引き受けてくださり感謝しかありません。今後も私のピアノを宜しくお願い致します。とこの上ない嬉しいお便りを頂いた。忙しく仕事に追われ苦悩した日々は、満たされた日々だったと感じ入る格別の瞬間でした。正に調律師冥利に尽きる2026年の梅雨。