「ひと言」カテゴリーアーカイブ

お母さんが使ってたピアノ。

気が付くと10月の後半、思えば今年もあと2か月ちょっと・・慌ただしく過ごしているとあっと言う間。やらなければならない仕事は、まだまだ山積み状態。そんなこんなの近況を今回は、記事にしたいと思います。

ここの所、お客様の実家からご両親が子供の頃使っていたピアノを運んで欲しいと立て続けに依頼を受ける。年間通じてこの様な依頼や相談は、大方春と秋と相場が決まっている。というのも当然春は、新年度のスタートですからお子様がピアノを習い始めるタイミングです。新品のピアノを買おうか中古のピアノにしようか、はたまた電子ピアノにしようかと決めかねてご相談の電話が鳴るといったケースです。ピアノの先生から「こんどピアノを始める新しい生徒さんなんですけど、今使っているのがキーボードなの!それじゃ~練習にならないでしょう・・・ちゃんとしたピアノを用意した方が良いとアドバイスしたらピアノっていくらするんですか?とか電子ピアノじゃダメなんですか?とか色々聞かれちゃったので鎌倉ピアノさんの連絡先を教えておきましたので相談に乗ってあげてくださいね(笑)・・・宜しくお願いしま~す」と言って電話が切れた。その数日後、「○○と申しますけど○○先生にお聞きしてお電話しました。ピアノの事でちょっとお伺いしたいんですけど」と電話が掛かる。「はい、先生から聞いております。お子様がピアノを始められるそうで・・」といった具合の会話からよくよくお話を聞くと先生に相談した後にネットで新品のピアノや電子ピアノの値段そして中古ピアノの相場も良くお調べになってる。お客様のお話を整理すると今の時代新品のピアノで良さそうなものは大層に高価である事と子供が何時までやるのか分からない。ご近所に対しての騒音の問題などなど・・・やっぱり電子ピアノにしようかと思うのだけれど今度は、色んなメーカーや値段に幅が合って何が違ってあんなに値段の差があるのか分からずまたどの程度の電子ピアノを購入したら大丈夫なのか?といった具合なので私は、「ご両親は、子供の頃にピアノは習っていましたか?」と聞くと「私も主人も少しやっていました。いや私より主人の方が長くやってた様です(笑)」「その時使っていたピアノは、ご実家にあるんですか?」と聞くと「ありますよ。でも相当古いしまだ使えるんでしょか?運んでくるのにも相当費用が掛かると聞いていますが?」「ご実家は、どちらですか?」と聞くと「私が和歌山で主人が広島なんです」「そんなに費用が掛からないのでそれを持って来たら如何ですか?あるのに使わないなんて勿体ないですよ!電子ピアノ購入する金額でおつりが来ちゃいますよ(笑)!」と色々とお話と調べて頂くことを伝えて電話を切った。後日、双方のピアノの機種と製造番号の連絡が入った。どちらも35~38年程前のピアノで皆さんのよく知るメーカの立派なピアノだった。

9月も半ば過ぎになってお客様より「私の実家からピアノを運んで頂きたいんですけど」と電話が入る。お話を聞くと夏休みに双方の実家に行ってよくよくピアノを見て来てご主人のピアノは、妹夫婦が欲しいと言って譲らない。奥様のピアノは、お父様がコーラスの音取りに使っていると断られたのですが説得の末ようやく孫が使うんだからと言って渋々承諾を得たそうです。早速、運送の手配をして9月末に和歌山よりピアノがやってきた。ピアノのチェックをするとまぁ~お父様がコーラスの音取りに使ってたピアノなのに半音の半分位音が下がっている。いや~これで音取りじゃ~さぞかし難儀しただろうなぁ~!内部をチェックすると何だか嫌な予感・・・虫食いです。鍵盤を全て外してみるとパンチングクロスは見事に全滅でした。そして案の定バットスプリングコードが劣化して全て切れている。まぁ~これは、予定通りですが永年放置されたピアノに多いのが虫食いです。虫にとって内部は、おいしい餌だらけで使わないから安全で外敵が居ないので安心食べ放題と外食チェーン店状態。直ぐに内部掃除からピッチ上げの調律にフェルト交換からアクションのコード交換などやる事沢山の作業に入る。そうこうしていると福島県からも同様のケースでピアノが運び込まれる。こちらのピアノは、もっと古いがコンディションは、良いが使い過ぎてハンマーの変摩耗が凄いのでハンマーを削ってファイリング作業に調律に整音・整調の手を入れる。もちろんどちらもお届けしたら直ぐにお伺いして設置後の最終調整を兼ねて調律を行います。

「音にまつわる最近の出来事」の記事で教会のグランドピアノをオーバーホールする事を書きましたが9月に一応大方仕上がって今は、最終調整・・・いわば慣らし運転で色んなピアニストに来てもらって練習がてら弾いて貰っては、調律・調整・整音を繰り返して良い音に仕上げている真っ最中です。Jazzピアニストの田近香子(Vakeneko)さんに来てもらう。いつも協力して頂いて弾いてくれています。そして先日は、9月17日の台風の日に開催したコンサートで演奏してくれた山口真広さんが来て練習していきました。その練習演奏を聴きながら僕は、虫食いピアノのピアノアクションを分解してバットスプリングコードの取り換え修理を行う。細かな腰が痛くなる作業ですが、山口さんの演奏で気分良く効率が上がり無事に修理作業を終えた。山口さんは、ちょうど新しいプログラムの譜読み段階という事で来年に演奏予定のプログラムを先に聞くことが出来ました。全般に重々しい曲なのですが彼が弾くとその中に明るい光が射している。私は、「山口さんの音は、明るいね!」と言うと「そうなんです、僕の音は明るい音がするんです。」と私は「この曲は、大方暗く重々しいけれど山口さんが弾くと何か光が一本射すね~!」と伝えると嬉しそうに「そう言って頂けるととても嬉しいです」とはにかんだ顔がとても印象的だった。ピアニストには、色んな人が居るので我々ピアノ調律師も接し方というか関りが難しい。一人ステージでピアノに向かい孤独に耐えながら大勢の期待に応え感動を与える仕事。表舞台の特別な存在です。それに比べるとピアノ調律師は、舞台裏。演奏が上手くいって素晴らしい演奏をするともちろんピアニストの名誉。演奏が上手くいかないと不思議とピアノ調律師のせいになっちゃったりしてまぁ~それがピアノ調律師の仕事なのです。だからという訳ではありませんが私は、出来る事ならば女性ピアニストだけに仕事を選んできました。というのも私のエンターテーメント観点からしてステージで華やぐ女性ピアニストが素晴らしい演奏をして艶やかに存在感を発揮してコンサートが大成功に収まる事を心から願い期待するので細部に渡りよく気が回るのです。しかし男性ピアニストに関しては、何故だか分かりませんが全く気が回らないのです(笑)。ある先輩調律師から「それは、プロ意識に欠けているね!」と言われた事がありますが、私の仕事のスタイルとしてピアノの調整だけでなく本番に至る全てのアプローチまでもが仕事の一環だと考えているので私の様な密着型調律師は、気が回るか否かは、何より重要な事だと思っています。しかし、不思議と山口さんの練習の音を聴いていると良いなぁ~調律したいなぁ~と思ってしまったのです。これには、彼の性格とか総合的な相性とかもあるでしょう。その演奏を聴いて面白い企画が思いついたのでその場で彼に伝えました。山口さんも大乗り気で一頻りその企画の話で盛り上がった。来年、その企画で開催するコンサートが今から楽しみです。また、そのことについては、改めてここで記事にしたいと思いますので是非楽しみにしていてください。そんなこんなで今日は、選挙!季節外れの超大型台風が近づいて外は、大雨です・・・おっと携帯にエリアメール?大雨、防雨風などの警報と高齢者への避難がどうのこうのと書かれている様だけど細かな字で老眼で良く読めない。これじゃ高齢者には、伝わらないだろうなぁ~!いや~台風直撃しちゃうのかなぁ~?ひどくなる前に急いでこれから投票に行ってこよう。いや~外は、既に土砂降りだぁ~!

 

 

 

 

9月17日 台風の日のコンサート

超大型台風18号が9月17日から18日に史上初の九州から北海道と日本の全てに上陸し日本全国に甚大な被害をもたらした。思いもよらず被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。今回は、そんな中開催か否かコンサートの準備から開催までの奮闘について書き記したいと思います。              自宅にホールを建てた友人から携帯に電話が入る。「9月17日にコックの手配が出来るのでコンサートを開きたいので演奏者の手配を宜しくお願いします」「どんな感じが良い?クラッシック?ジャズ?何が良い?」友人は、「クラッシックが良いな!お任せするから上手い人をお願いします。上質でいきたいから(笑)!」と言って電話を切った。上質と来たか~と思い直ぐに頭に浮かんだのが今回演奏をお願いした佐藤英梨香さんでした。友人のお嬢さんでイギリス帰りでエルトンジョンや葉加瀬太郎とも演奏した経験を持ち横浜室内合奏団でコンサートマスターとして活躍している。小柄な彼女がステージに立つと一際大きく見栄えがして何より美しい。そのエンターテーメント性の高さと質の高い演奏を友人のホールで実現したいなぁ~!お客様は、きっと圧倒されて喜んで頂けるなぁ~想像すると何だかワクワクしてきた。早速電話を入れると「ご無沙汰してます~!」と元気な声が「9月17日にエリカちゃんに演奏の依頼なんだけど?予定は空いてる?」「ちょっと待ってください~」手帳をめくる音がして「大丈夫です。連休の真ん中ですね!ありがとうございます。」僕は、「ヴァイオリンとピアノ伴奏で出来ればピアノソロも数曲弾いて欲しんだけど以前の伴奏の女性方の予定は、どうなのかな~?確認してもらえる?」と聞くと「彼女は、出産して今は、お休み中なんです。でも今一緒に演奏しているピアニストが居ます。男性なんですけどとっても上手なんです。よろしいでしょうか?」「男かい?綺麗なお姉さんが良いけれどまぁ~エリカちゃんが信頼してるならオジサンは我慢しよう(笑)!」とその他色々と会場や開催の趣旨など大人の話をして折り合いが付いた所で電話を切った。すぐさま電話が鳴り「ピアニストも大丈夫でした(笑)!」僕は「これで決定だね!楽しみだね~宜しくお願いします(笑)!」と言って上機嫌で電話を切った。9月の開催が近づいて来た所にもしかしたら台風が直角に進路を変えて日本に上陸するかも?と天気予報が言っている。友人と「いや~困ったねぇ~来るのかね?」友人は「まぁ~大丈夫だろう~?だめかなぁ~?神のみが知るてやつだね!」僕は「イベント興行は、天候のせいで大損害が出る事もあるので主催者側の日頃の行いが物を言うね(笑)!」すると即答で「じゃ~大丈夫だな(笑)!」と言って台風がそれる事を懇願した。         

今回のコンサートの録音は、鎌倉ピアノ芸術社で新たに用意したPCM768KHzとDSD5.6を2系統でトータル3系統で録音をする事になっている。DSD5.6の高音質と今回は、まだ世界でも録音された事が少ないPCM768KHzで録音を試みるのでさてはてどうなるか・・まぁ~もし失敗してもDSD5.6が2系統と保険が掛かっているので安心ですが、楽しみでもあるがちょっと心配(笑)!コンサートの2日前にホールでピアノの調律作業に入る。今回は、男性ピアニストでショパンにラベルをソロで弾く。そしてヴァイオリンとバランスを考えて2日前に音色の調整と調律を仕上げて当日の午前中に再度調律作業をする事にした。納品して1年ちょっとかなり良い音に育ってきているがまだまだやる事は沢山あって終わりがない。アクションを引き出し鍵盤調整から整調から整音と順調に作業を進める。ここでのコンサートは、いつも録音をするのでピアノは、万全に調律しなければならない。しかもホールも含め電源から録音機械に至るまでそこいらのスタジオとは、比較にならないシステムが用意されているもで通常販売されているCDとは、あからさまに音が違う。ピアノ調律師としてここでの作業は、持ち合わせているありったけの技術をピアノに注ぎ込むに値する条件は、全て揃っている。何より時間にとらわれずに好きな時に好きなだけピアノをいじる事が出来る。やはり持つべきものは、お金持ちの友人てとこかな(笑)!

開催前日にお呼びしているお客様全員に電話で開催決定のご案内をすると「明日は、宜しくお願いします。楽しみにしていま~す。」と皆さん来る気満々でホットむねを撫で下ろした。当日、朝からピアノの最終調整をすませて12時30分に雨の中、演奏者がやって来た。早速、リハーサルに入ると予定していたヴァイオリン奏者の立ち位置が変わった。我々は、慌てて録音マイクのセッティングを変えて右往左往。会場では、豊かなヴァイオリンとピアノの音が響き渡っている。あ~良い感じにピアノが仕上がっていると自画自賛しながら機材の調整に追われたが、この質の高い演奏ならば今日のコンサートは、大成功だな!と確信を得たが後は台風次第だなとやや不安材料を抱えていた。リハーサルも無事に終えて再度ピアノの調律。微調整もあっと言う間に終えた。外は、風は無いが、雨足はやや強い。4時過ぎからお客様がお見えになって私は、傘をさして外に出て車の誘導に会場案内と大忙し。その甲斐あって開演前には、何ら混乱も無く全員お集まり頂いた。

開演時間になりまたまた僕がマイクを持って司会進行役。和気あいあいとした雰囲気で無事コンサートが始まり。演奏者達の見事な演奏と立ち振る舞いどれをとっても上質なエンターテーメントでお客様全員を魅了した。何時もの事ですが近距離で聴いて見て肌で感じてのコンサート。今回も大成功でした。コンサート終了後は、フレンチブッフェで飲み放題と今度は、お客様の御給仕で大忙し。お客様のご機嫌な様子を見ながら良い音楽と美味しい食事にお酒と人間の五感を存分に満たすイベント、他では中々味わえないだろうな!と苦労が報われた気分で疲れも吹っ飛んだ。ありがたい事に帰りの時間では、風も無く雨も上がって混乱なく皆様お帰り頂けた事が何よりの幸いだった。この夜半に暴風雨になるとは・・・・。後日、友人に「僕の日頃の行いが良かったのかな(笑)!」と言うと「いやいやお客様の行いが良かったでしょう(笑)。」もっともな意見だ!