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日本が世界に誇るYAMAHA PIANO

今年も慌ただしく仕事に追われているとあっという間に2月後半。連日ワイドショーでは、アメリカ大統領選からトランプ大統領誕生そして築地豊洲移転問題から北朝鮮関連など世間を賑やかしている。年初にお世話になった大先輩の調律師から頂いた年賀状に「ホームページにYAMAHAの事も書いて」とリクエストがきました。???書いてないなんて事は無いよなぁ~と思い過去の記事をさかのぼると「しまった!YAMAHAだけを取り上げて書き及んでないなぁ~!」今更ながら恩師の指摘はいつも正しい。しかし誰しもが知っているYAMAHAですからわざわざ取り上げて記事にする様な面白い事が浮かばないのですが恩師のリクエストを受けて改めてYAMAHA PIANOについて書き記したいと思います。

さて、YAMAHAPIANOについて先日販売したYAMAHAグランドピアノ購入の経緯を(グランドピアノの購入の仕方)書いて行こうと思います。お客様より携帯に「グランドピアノを購入するのでお願いします」と嬉しい連絡が入る。昔、子供の為にと新品のアップライトピアノを弊社で購入して頂いた長いお付き合いのお客様です。奥様は、大人になってピアノを始められて、今では、親子で連弾を楽しむ腕前に上達されました。娘さんは、結婚して2人の子供に恵まれ未だにピアノは、楽しく続けていらっしゃる。人生の楽しみにもっと良いピアノで楽しみたい、連弾もしたい。ゆくゆくは、娘と孫が使うのだからと家の改築をきっかけにグランドピアノの購入に踏み切った音楽大好き一家。早速、お伺いして改築中の部屋を下見してピアノの搬入路・近所や室内の音の伝わりも考慮に入れて設置配置の確認をして予算とその他諸々の条件を満たす機種が決まりました。他のお客様では、予算に応じて色んなメーカーのピアノを一日で弾きに行って機種を決める事が多いのですが、今回は、お客様がそれを済ましていて既に希望機種が決まっておりました。機種や設置の確認が取れるとメーカに注文となりますが、同じピアノでも個体差が有るので更に気に入った音のピアノを手に入れるために工場での選定の申込みをします。この選定というのは、天下のYAMAHAといえども同じ機種のピアノを同じ様に製作しても全く同じ音がする様に作ることは、不可能なのです。その理由として木材は、二つと同じ木目は存在しないしフェルト羊毛などもそれぞれに毛足や太さが異なる訳ですから天然素材を多用するピアノでは、同じ規格でも厳密にいえば二つと同じ物は、無い訳です。木材を伐採して乾燥させて加工して・・・一台のピアノが出来上がるまでには、相当の時間と人の手が必要となります。それを厳しい規格管理と高い生産技術を駆使してばらつきの少ないクオリティの高い製品を大量に生み出す能力は、他社の追随を許さないYAMAHAが世界一の技術力で世界中の楽器関係者誰しもが認めるところです。

その高いクオリティをもってしても個体差があるのがピアノの奥深い所です。一般的には、「あたり・はずれ」と言いますが、それを個性というメーカーもあります。同じ金額を支払うのですからここは、慎重に手間をかけて選びに行き納得の行くピアノを選びたいものです。実際に掛川工場に出向くと念入りに調律されたピアノが3台用意されている。ソファーに案内されてお客様と担当者が挨拶をしてお茶が出て来る間にざっと私が3台を弾いて品定めをする。ご主人様が「それぞれ随分音が違うんですね~」と経験からするとピアノに興味の無い人がその違いを敏感に感じる事が多々ある。しかし弾けないのに判る訳ないじゃないとその意見は無視される事も多い(笑)がその感性が意外に的を得ている。まず最初に弾いたピアノは、全体に音の粒立ちが揃い輪郭もはっきりとして音色も艶やかで煌びやか。ボリュームのバランスも良く鳴りの良い満足のいくピアノ。人によっては、派手過ぎるという人もいるであろう。2台目は、低音中音は、素晴らしく良く鳴るピアノですが、次高音の音の鳴りと音色のばらつきが2~3あり一見(一聴)良いのですが次高音あたりのボリュームは、私的には大いに気に掛かる。3台目は、全体に念入りに良く整音されたピアノでピアニシモで弾くととても心地良いピアノ。フォルテで弾くとそれなりに良い音を奏でるが音の艶や華やかさは、もう少し欲しい。このピアノを選ぶお客様は、多いだろうなとも思う。3台のピアノの状態を確認した所でお茶の用意がされて喉を潤してお客様が楽譜を取り出して弾き始める。納得の行くまで弾いて頂くために私は、部屋から出て外で待つ事に。お母さんと娘さんと交互にそれぞれのピアノを弾いている。その内、二人で違うピアノを弾き始めたのでちょっと煮詰まったかな?と部屋に入った。お二人に「どのピアノが良かったですか?」と聞くとお母さんは、「3台目のピアノが良いのかなぁ~でも色々弾いているともう判らなくなっちゃった(笑)」娘さんは、「2番目のピアノかなぁ~でも良く判らない」私は、「ずっと弾いていると音に飲まれて判らなくなるものなんですよ(笑)。でも最初に弾いた時には、どのピアノが良いと感じましたか?」と聞くとお二人揃って「1番目のピアノ」と答えました。そこでそれぞれのピアノの音の違いを説明しながら私が実際に弾いて聴かせてから「今の説明を踏まえてもう一度弾いてみてください」といって部屋をでた。

扉の窓越しに二人の様子を伺っていると何だか納得した様な顔つきに変わり弾く手を止めた。部屋に入って「どうでしたどのピアノが良かったですか?」と聞くとお二人揃って「1番目のピアノにするわ!」と無事選定を終えた。ピアノを選ぶ時に鳴りの良いピアノや気に入ったタッチで音色の相性が合うピアノなどと判っては居てもなかなか同じピアノを複数台用意されるとついつい弾き込んでしまって音に飲まれて判断が難しくなります。不思議とピアノを選ぶときは、それぞれの欠点を探すよりこのピアノの方が低音に迫力があるかも・・このピアノの方が高音が綺麗かもしれない・・とか良い所を探す事が多い様子です。その状態になるとほぼ音に飲まれて正確な判断は出来なくなります。常に冷静に音の判断をしなければなりませんが、経験が無いと中々出来るものではありません。その為に選定人としてピアノ調律師がついて行く訳です。

その後、工場見学となりグランドピアノの出来る様子を係りの女性の説明を聴きながら1時間ほど見て回った。担当の係りの女性の説明は、解り易い丁寧な説明でお客様も初めて見るピアノ工場に驚きと感激されて、やはりここまで来て良かったと満足されました。私ですら毎度工場に訪れる度にピアノて安いなぁ~とつくづく思う。幾ら工作ロボットが導入されていても人の手じゃなくては出来ない作業が山ほどある。ピアノ工場でのオートメーション化には、限界があり大量生産といえども手作りの占める割合が余りにも多いのにヨーロッパ製品の6分の1の値段。ケースや塗装の仕上がりなどは、恐らく世界中のどのピアノより頑強で綺麗である。即ち、YAMAHAの生産技術の高さと技術力によってピアノの普及と音楽教育の発展による恩恵を被っている訳です。受付の所には、往年のリヒテル(巨匠ピアニスト)愛用のフルコンサートピアノが2台展示されていて誰でも弾ける。そして奇妙な格好の小室哲哉モデルのグランドピアノも誰でも弾ける。そして自動伴奏装置のグランドとテレビモニターがリンクしてエルトンジョンのコンサートの映像に合わせてデーター通信で自動伴奏のピアノが生演奏してくれるといったYAMAHAの得意分野も披露されている。アナログとデジタルの融合を何ら違和感なく成し遂げられるのは、YAMAHA以外考えられないだろう。楽器メーカーとしてスタートして今では、アナログ楽器からデジタル楽器、音楽産業全般に至るエンターテーメント産業、コンピュータ音源チップなどと幅広い産業でピアノ製作メーカーでは、まぎれもなく世界一の日本の誇る巨大企業がYAMAHAなのです。この記事を読んで少しでも興味を持って頂けたらネットで日映科学映画製作所を検索して「ピアノへの招待」を見て頂くと30分足らずの映像に今も昔も本質的にはほとんど変わらないピアノ製作の様子が見れます。そして工場見学の申込みをして実際に足を運んで見てください。もし、より詳しい説明や裏話が聞きたいと思ったら是非、鎌倉ピアノ芸術社でグランドピアノを購入して一緒に工場に選定に行きましょう・・・宜しくお願いしま~す(笑)!

毎年恒例1月の寒い寒いお仕事!

今年のお正月は、天気に恵まれ暖かな日が続き皆様も気持ちの良い新年を迎えられた事と存じます。ただ残念なのは、暦のめぐりあわせで大方の社会人は、例年より短いお正月休みとなった模様です。それに引き換え子供達の学校始まりは、10日からと暦に恵まれた模様です。今回は、毎年恒例1月の学校調律について少し書き記したいと思います。

 

お客様より時折、「学校は、何時ピアノの調律やっているんでしょうか?ちゃんとやってるのかしら?」なんて聞かれることがあります。私は、「生徒達がお休みの時、春休み・夏休み・冬休みとその間に調律に行きますよ」すると「うちの子が通ってる学校は、やってるのかしら?いつも子供が音が狂ってるとか変な音がするとか壊れてるとか言ってますよ!」「ちゃんとやってるでしょう・・・きっと?・・調子が悪いのは、その学校に僕が調律に行ってないからでしょう(笑)!」「きっとそうね~私が今度校長先生に言っておくわ~(笑)!」なんて他愛のない会話でお客様宅にお伺いしています。弊社も公立・私立と学校の仕事をさせて頂いており今年も新年早々、学校が始まる前に調律に行って来ました。今年は、暖かかったので助かるなぁ~と思っていましたがその考えは、甘いものでした。6日から何故か急に寒くなってしまった。

朝、学校にお伺いして職員室に立ち寄ると大勢の先生方が職員室で何やら忙しそうに働いている。まぁ考えれば生徒は、お休みでも先生方は出勤?です。担当の先生に「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」「おめでとうございます。新年早々申し訳ございません毎年ありがとうございます。どのピアノから始められますか?」「それでは、暖房のある音楽室から始めてもよろしいですか?」「はい、宜しくお願いします。」そんなこんなのご挨拶で早速作業に向かう。子供の頃は、感じなかったが大人になると学校と云う所は広い。15㎏ある調律鞄を抱えてまずは延々と廊下を歩く。そして4階まで階段を上りたどり着いたと思うとそこからまた延々と廊下をくねくねと歩いてやっと音楽室にたどり着く。もうその時点で息切れがしている。運動不足でしょ?いやいや15㎏抱えて歩くのですから、それにペタンペタンのスリッパに履き替えているのですからそれはそれは思いの外結構大変です。15㎏の鞄てそんなに工具必要なの?なんて思われるでしょうが何が有るか分からないのでついつい用心の為に色んな工具を詰め込んでいます。これは、ピアノ調律師皆さん同じだと思います。いかなる事態でも対処できるように欲張って工具を鞄に詰め込んでいる。しかしほとんど使わない工具が多くてそんな工具に限って重い。使わないし重いからと思って鞄から出すと不思議とその工具無しでは、修理出来ない事態に巡り合う。車のトランクには、あと3つも工具ケースをしのばしてあるし、のこぎりからカンナにドリルとこうなると調律師なのか大工さんなのか良く分からない始末。でもいざとなると全て必要になるのがピアノ調律師の仕事です。話が随分それましたが、音楽室は、暖房があるので暖かく生徒のいない学校で集中して楽しく仕事が出来るはずなのですが・・・。

体育館の調律となると話は、全然変わってとても寒い。寒いなんてものではありません。ある学校では、気温7度。別の学校では、6.2度湿度62%。ぞろ目だなんて喜んではいられません。この温度で62%の湿度という事は、梅雨時は、湿度80%超えるだろうと想像される。当然、ピアノ内部は、アクション(機械)の動きが悪く修理箇所が沢山あるので当然作業時間が伸びて3時間半くらい掛かってしまう。この6.2度や7度で長時間の作業は、さすがに体にこたえる。指がかじかんでドレミファソラシドのスケールすら運指がおぼつかない。当然、作業が終えて弾いてみようと思っても曲にならない。それともう一つこの寒さに拍車を掛けるのが教室や体育館のいたる所から聞こえるラップ現象。集中して仕事をしても突然気配を感じて急に背筋が深々と冷えたり急に足元が凍りつく様に冷える。このパキパキと鳴り続ける音と分からない気配に対して時折奇声をあげて応戦をしながら寒さと恐怖に震えながら調律をする。誰かがこっそり覗いていたら「あの調律師おかしいんじゃない?時々奇声あげてるよ(笑)」と思われてしまいますが、そんな事言ってられません。怖いんです。寒さと怖さと戦いながら勇敢に職務を遂行する。これがピアノ調律師の仕事なんです。なんてこんな事書いてるとまた長老たちに叱られちゃうかな(笑)・・・まぁこの程度じゃ叱られても背筋も凍らないか!