「ひと言」カテゴリーアーカイブ

調律師が一番困る事

毎年、この寒い時期にやたらとコンサートが増える。もっとも12月はクリスマスコンサート。場所は、コンサートホールからイベント会場やレストランなどなど我々が夜中に時間を割いて調律をするのも この時期に集中する。新年は、これから新春をうたったコンサートが目白押し。この時期に我々調律師が一番頭を悩ませるのが温度なのです。

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おなじみのシュタインウェイのフルコンです。まぁこのピアノを調律するとなると前日からワクワクとまるで子供の様に楽しみでならない。ホールのピアノで滅茶苦茶にコンディションが悪いなんて事はありませんが この寒い時期には、ピアノが冷えている。朝一番に会場に入り調律をするのが我々の仕事。しかし寒い時期は、ピアノが14℃位。暖房を入れてもらい本番と同じライトを当ててもらって温まるのを待つしかない。冷えた状態で調律をはじめても温まってきたらどんどん音が狂って来ます。ピアノにお願いだから早く温まってとさすったりなでたりしても決してお願いは聞いてくれません。リハーサルの時間が迫って来ようとも待つしかありません。そんな時は、1人ホールを独占してピアノを弾いて楽しむ・・・これは大層に楽しいのだが、ついつい乗ってしまって弾きすぎて温まった事を忘れるしまう・・・なんて失態もあるので気を引きしめて温度計に気を配って準備です。

DSC_0639徐々に温度も上がってくるがまだ18度。スタッフは、ホールの室温を24度に設定しているのでもう少し待って作業に入る。逆に真夏は、ピアノが28度。触ると暖かいなんて事も年中ですが、冷房が25度位なので夏は、温度より湿度に気を使いますが、冬に比べても温度差が少ないので困るなんて事は、ほとんど無いが冬は、温まるのに時間が掛かって作業時間が少なくなって気が焦ってしまうので困る。作業後に一番良い状態でピアノを弾けるのは、調律師の特権ですから出来るだけ時間に余裕を持ちたい、調律師なら皆同じ気持であるはずです。

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大方温まったので作業に入るが、シュタインウェイD何度触っても良いピアノです。思い描いた通りの音が出る素晴らしいピアノ。まさにキングオブピアノですね。我社のピアノ発表会は、必ずスタインウェイを使用しますが、良く依頼を受けるピアノの講師の方々、子供たちには、触る機会が少ないピアノなのでせめて発表会の時には、スタインウェイを使用して欲しい物です。きっと子供達もご両親、お爺ちゃんお婆ちゃんもそんな良いピアノを弾いたと知ったならば喜びも格別な物となる事でしょう。良い楽器は、そんな存在だと思います。私は、そんなピアノに触れる幸せをより多くの若い調律師に知って欲しい。

お薦めの大好きなピアニスト「Deu’or」ピアノデュオ ドゥオール

2014年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。お客様よりどんなCDを聞けば良いですか?ピアニスト誰がお薦めですか?なんてよく聞かれます。お客様の好みも分からないし いつも答えに困ってついつい有名で無難なピアニストをお伝えしてしまいます。私の大好きなピアニストなんてお話が弾む事も有りますが、お客様が期待している答えは、大方これからクラシックを大好きになりたいから教えて・・・とそういったケースがほとんどです。聞きやすいショパンで話題のCDを何枚かお薦めして少しでもクラシックになじんで頂きたいと願うばかりです。しかし、今回は、私がお薦めするのはデュオで二人(藤井隆史&白水芳枝)がデビューする頃からファンになった「Deu’or」ピアノデュオドゥオールのCD3枚です。

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デビューアルバムDeu’or amazonへ
デビューアルバムDeu’orこのアルバムには、私の大好きなラヴェルのラ・ヴァルスが収録されています。色んなピアニストの演奏を聴いたけれどこの二人のヴァルスは、格別に心に刺さる。元々激しくうるさい曲が二人にかかると何回聞いても飽きない、その演奏は見事な表現と調和は類ないテクニックに裏付けされている。またコンサートでのヴァルス演奏は、その表現がより無限に感じる。

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随分前になるがYAMAHA銀座店のサロンコンサートの打ち上げで同じテーブルに。お二人の細やかな気遣いに触れそれ以来のお付き合い。東京文化会館のコンサートでのワンショット。

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Symphonie – ブラームス: 交響曲第1番, 大学祝典序曲 ピアノデュオ・ドゥオール タワーレコードへ

2枚目のアルバム、SYMPHONIE ブラームスを収録。特に「大学祝典序曲」は、これまた圧巻。コンサートでの演奏もその壮大さを増す。

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JEWEL ピアノデュオ・ドゥオール タワーレコードへ

このアルバムは、皆さん良くご存じの曲が、デュオに編曲されているちょっと面白いアルバム。ショパンの幻想即興曲、子犬のワルツなど聞きなじんだ曲ではあるものの別のアレンジでその演奏技術と調和に心を虜にされる聴きやすいアルバム。最後のバッハ「主よ、人の望みのよろこびよ」は、私のお気に入りで以前みなとみらいホールで初めて聞いた時にホールに響きわたるスタインウェイの音が目に見えて鳥肌が立った事を良く覚えている。今では、藤井隆史&白水芳枝お二人のリサイタルがコンサートベスト10に選ばれたりレコード芸術にて特選盤に選ばれ、また東京藝術大学、武蔵野音楽大学、国立音楽大学などで講師を務めラジオなど活躍の場を広げ今後もずっと応援していきたいピアニストです。是非聞いて欲しい、コンサートに出かけて欲しい私のお薦めアーチィストです。

意外に知られていない日本製名器のグランドピアノ

先日、九州から運ばれてきたグランドピアノKAWAI-RXAの調律にお伺いした。初めてのお客様より「調律お願いします」と電話が入る。ありがとうございます、ピアノは、何ですか?とお聞きすると「KAWAIのグランドピアノです。毎年調律しているのですが九州より運んできましたのでお願いします」私は、ピアノの大きさは?機種とか判りますか?とお聞きすると「う~~んRXAと書いてあります」僕は、ちょっと興奮しRXAですか?KAWAIの名器と言われたピアノですね!とワクワクしてきましたが、お客様は、そうなんですか?と僕の興奮度とは、随分温度差があるので本当にRXAですか?と聞きなおすと「RXAと書いてありますよ」とちょっと拍子抜けした感でその様にお答え下さいました。それはそれは、是非こちらから調律をさせて下さいと逆にお願いをしてお伺い致しました。

DSC_0658綺麗なお部屋に立派なグランドRXAが・・・しかし何か感じが違う。私も過去に1台お客様に販売してずっと管理しているが何かが違う。もっと高そうに思える。お部屋が綺麗だから?お客様が若くて綺麗だから?なんて思いながら直ぐに判りました。同じ黒のピアノですが脚がチッペン(猫足)仕様に特注されています。譜面台も特注でした。まぁそれは、高級感のあるピアノ。そもそも本体価格が当時380万円サロンコンサートピアノとして開発されショパンの生家にも納入された由緒ある手作りピアノです。いったい幾らしたんだろう?この時期は、YAMAHAでS400当時360万円のピアノが日本では、大変評判になっていました。販売台数や安定した製作技術を持つYAMAHAこれまた名器です。今ではYAMAHA-S400は、RXAに比べると圧倒的に販売台数が多いので年に1・2台買い取りでお目に掛かります。しかし、KAWAI-RXAは、なかなかお目にかかれない。私も神奈川県の某ホールに有るのを一度調律した事と私のお客様とこちらのピアノで3台目となります。

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ピアノのコンディションは、さすがに毎年ちゃんとした調律師が管理していただけあって、大きな問題は無い・・・調律を終えると流石名器、惚れ惚れする音色と迫力。素晴らしいピアノ。調律師としてこんな楽しい仕事は、有りません。ずっとさわっていたい・・そんなピアノでした。ピアノも長旅で色々と調整がずれていましたが、この先、もっともっと良い音にしてあげられます。お客様の負担が無い様に数年に分けて手を入れて行きます。

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お客様は、ピアノを習い始める時に母が買ってくれたのが、このピアノだったんです。そんなに良いピアノなんですか?母に伝えたらきっと喜ぶと思います。はぁ~~なんて贅沢な話なんだろう。さすがに丁寧に大切に使われたピアノ。12月の忙しい時に嬉しい楽しい仕事、ありがとうございます。RXAそれにしても良いピアノです。僕は、最初のピアノYAMAHA-U1でした。50年前から二極化は、存在したと云う訳だ。