ピアノ販売で感じる時代の流れ。

ここ十数年でピアノ販売価格は、大きく変わってきました。新品の定価は、年々上がって来てそれにつれて中古ピアノの値段も上がる。しかし理由は、それだけではありません。今回は、ピアノの値段について書き記したいと思います。

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ピアノの先生から電話で「中古のピアノを探している生徒がいるんですけど何か良い物あります?」とご紹介の電話が入る。「良い物だけ沢山ありますよ(笑)!ご予算て聞いています?」すると「30万円位でどうにかならないでしょうか?いやね~最初は、デジタルピアノを買うって言うもんですから本物のピアノじゃなきゃだめよ!て薦めたの・・・大丈夫かしら?」「いや~大丈夫じゃないですね~(笑)。ご承知の通り昔と違って今は、中古と言えども高いんですよ・・もうちょっと予算を組んで頂けると助かるんですけどね~?」とお答えすると「連絡先をお伝えするから直接お話して頂ける?」その後、色んな雑談をした後に「用意が出来たら私も一緒にピアノを見に行きますわ。いつも丸投げでごめんなさいね~宜しくお願いします(笑)。」と言って電話を切られた。

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昔だったら中古ピアノ30万円と言えば比較的高年式のピアノが買えましたが、今では、ちょっとそういう訳には行かなくなりました。まず昔に比べると新品ピアノの年間販売台数が大きく落ち込み、年間国内生産台数は、最盛期の十分の一位になっている事でメーカも販売価格を上げる。もちろんメーカーもただ値段を釣り上げたのではなくコストカットを繰り返し努力を積み重ねての事ですので苦肉の策であります。その代わりデジタルピアノ販売は、好調で電化製品ですので大量生産で安いものは、10万円以下そして20万円代~高級木製鍵盤使用などの30万円以上の物と大きく3グループに分かれる。メーカーも生産拠点を海外に移したり利益の上がる商品を大量に生産する為に色々と苦労がある事でしょう。しかし以前の記事で「ピアノは、ズワイ蟹よ」でご紹介した通りデジタルはしょせんデジタルで本物のピアノと比べると音・音色・タッチどれをとってもまるで別物です。弊社もこの業界人ですので詳しい内情については色んな所に差し障りが生じて来る為にさすがに露骨にホームページに書き込む事は、出来ません。詳しく知りたい方は、弊社でピアノを購入するかピアノ調律をお申込み頂いて調律にお伺いした折に楽器業界の裏話をする事にしましょう(笑)!

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ピアノの先生からご紹介頂いたお客様にお電話差し上げて予算的なお話をして少し予算が上がりました。と言うのも昔と違って今は、8%の消費税が掛かります。何十万の8%と言えば消費税だけでも万単位。それにピアノ専門の運送屋さんも随分淘汰されて規模の縮小を強いられて搬入金額も上がりました。それに加えてテレビCMで聞き及びのある「ピアノ売ってちょうだい」と眠っているピアノを買い取りますの宣伝で使ってないピアノを大量に買い取ってそのまま輸出をする業者が増えました。お客様も賢くなって当然買取金額の一番高い所に売る訳ですから当然そこに競争が生まれて中古ピアノの価格の高騰が起こる訳です。加えて近年では、中国資本の業者が巨大資本で高値でピアノを買い漁っていく。すなわち中古ピアノの販売価格も当然上がってしまう訳です。そして、だんだん日本国内に良いピアノが無くなっていく。ピアノ技術者にとっては、心の痛む事態です。

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お客様の希望に合うピアノを数台見つけて塗装から内部の修理・調整を終えて弊社のセレクションルームに入庫しました。ここで最終調整を数日間かけて完成させますが、これはピアノ調律師にとって最も楽しい時間で調律・調整を繰り返す度に際立って音が良くなる。お客様と先生に弾いて頂いてあまりの音の良さにビックリして買わずにいられなくしてやろうと色んな細かい調整を積み重ねる。今回は、黒のピアノ2台とマホガニー(赤)のピアノを用意する事にした。色付きのピアノは、ご家庭のインテリアによくマッチするが黒に比べると数が少ない上に値段が高い。昔は、マンションなんかもカーペットの時代でしたのでマホガニー(赤)のピアノが売れたものですが今は、皆さんハウスダストの問題からフローリングの時代なので圧倒的に茶色のピアノを所望される。しかし意外や意外中古ピアノのマホガニーは、一目見ると皆さん素敵と言って直ぐに売れてしまう。かえって珍しいのか不思議でならないが茶色のフローリングにマホガニー色の重厚なピアノは、格別に高級に見える事は間違いないようです。やはりピアノの持つ存在感が際立つのでしょう。今回もきらびやかさの中にふくよかさを持たせた音にに仕上げたマホガニー色のピアノを気に入って頂いた。デジタルピアノ全盛の時代に我々ピアノ調律師は、どのピアノにも真摯に向き合い最高の技術を投入してそのピアノを何時だれが触っても「本物のピアノって違うわね~!」と言って頂ける位に良い音とタッチに仕上げなければなりません。「うちの子にも本物のピアノ買ってあげなきゃ!」なんて上手い事になるように希望を持って楽しく技術の向上に努めなければなりません。しかし、そんな声よりも「もっと安くしてよ~」なんて声に悩まされるんだろうなぁ~。

 

仕事先で事件です!

歳を重ねていくと日が経つのが早くて気付くと10月末です。記事のアップも日々の仕事に追われてすっかりご無沙汰してしまいました。そこで、記事に出来るここ一か月の出来事と昔、仕事先でのショッキングな出来事を記事に書き記したいと思います。

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グランドピアノをご使用のお客様より「私が子供の頃に使っていたアップライトがあるんですけど実家を解体する事になったので自宅の持ってこようかと思っているんですけど」と電話が入る。僕は、「ピアノは、どんなピアノですか?」と聞き返すと「親が私の為に買ってくれた知らないメーカーのピアノなんですけど、35年位前のピアノで思い出が詰まっているの。処分するのは忍びなくて(笑)。今は、荷物に囲まれて20年以上は放置していて蓋も開けてない状態なのできっとひどい状態だと思うんですよね~」とそんなやり取りをして取敢えずピアノを引き取って状態を見てそれから考えましょうという事になりました。引き取ってくるとピアノは、FRITZKUHLAという東洋ピアノのアップライトピアノで外装の塗装は、カシューで既に灰色に変色して内部は、破損部分はないが機械が動かない所が多く全調整すれば立派なピアノになるだろうとその旨を報告すると「リビングのグランドの脇に置くのでお任せします。綺麗にしてください!」と言って全塗装する話がまとまった。

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無事塗装が終えて内部の最終調整の作業に入るとハンマーと弦の位置が全体に大きくズレている。3本あるアクションボルトもどれも長さが合ってなくてアクションレールがたわんでしまっている。全ての寸法を測りなおして正確な位置にする。このピアノは、ピアノ繁忙期に大手販売店で売られていたピアノで仕上げの雑さが見て取れる。今となっては、慎重に作業を進めると一工程進む事にどんどんピアノが良くなって行くので作業する側は、自分が凄腕になった気持ちになって何だか楽しくてならない!そうなると調子に乗って色んな所もついでに手を入れはじめちゃうのは、技術者の性なのかただ単に僕がマヌケなのか最終的には、時間が掛かってしまって採算が合わなくなってしまう。まず直ぐにお客様にわかる位ピアノが良くなって大喜びして頂く事が肝心と心に呪文を唱えて僕が一番楽しんでる(笑)。調律も終えて整音作業に入るともっともっととピアノが要求してくるので念入りに作業進めて素晴らしい音を奏でてピアノが応えてくれた。見事に呪文が効いた。お届けして新品にしか見えないピアノにお客様も大層に喜ばれて「こんなに良い音だったかしら~凄く良い音しているわ!それに誰が見ても新品ね!親が買ってくれたピアノだから大切にしたいの本当にありがたいわ。ありがとうございます。」とこの上ない言葉を貰った。

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並行して県立学校のピアノの修理。これは普通によくある修理ですがバットフレンジコードの交換。これは、何ら大変ではないが一気に短時間で仕上げると腰が痛くなる。調律師の皆さんも数多くこの作業をやった経験があると思いますので交換前と交換後の写真だけ掲載しておきますが、一般のお客様宅のピアノで今後この作業は、まだまだ沢山出てくるでしょうから交換すると歴然と弾きやすくなります。お客様のピアノの性能のフルに発揮する為、大切なピアノという財産を守る為、頑張らなければなりません。

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そんな中、以前記事にした自宅ホールでコンサートのVol.2が開催された。今回は、広島県よりわざわざミュージシャンを呼んで関西・信州・もちろん関東のオーディオマニアが集結してコンサート・生録音とオーディオ三昧の盛りだくさんの素晴らしいコンサートだった。新築のホールで物凄い湿度だったので開催日の数日前から24時間冷房に加えて床暖房を入れてどうにか湿度60%前後に下がったがピアノは、たっぷりと湿度を含んでいる。前回は、納品したばかりだったので大きく手を入れる事をしなかったが今回は、オーディオマニアの集まりで3系統のDSD録音でCDにして全国のメンバーに配布すると聞いて、気合を入れて次高音から最高音にかけてボリュームを上げてきらびやかに響くように本腰を入れて作業に没頭した。前日から泊まり込みの関西のマニアの方々や前回もいらしていたマニアの方が作業を終えると「凄い全然変わった!良い音!凄いですね~どうやるとそうなるんですか?」などとさすが皆さん音を聴く耳をお持ちで絶賛されるとついつい有頂天になって気分が良かった。後日フェイスブックにこのコンサートの書き込みがありました。「今まで聞いたピアノの音の中でベスト3に入る素晴らしい音だった」とあるのを見つけて思わず自宅でガッツポーズをとった!コンサート後の食事会でピアニストに何か弾いて頂けないかとのリクエストにピアノソロで聴きなれた2曲が披露された。ピアニストの上質の演奏でホール全体にきらびやかで伸びやかな澄んだ音が響き渡りそこにいた人達の心を揺さぶった。

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さて、もう随分前の事でこの歳になっても心に鮮明に焼き付いた出来事。私の人生にも大きく影響した出来事。詳細は、省いて記事にして差し障りが無い様に書き記したいと思います。定期調律にお伺いして作業中にお客様宅の幼稚園児の男の子が庭の塀をよじ登って隣の家に入っていった。お客様に「お子さん、隣の家に入っちゃいましたけど大丈夫なんですか?」と聞くと「隣のお婆ちゃんにお菓子貰いに行くのよ~(笑)」僕は、「ご両親がお住いだったのですね」というと「いえ、違います。お隣さんはお婆さんの一人住まいなので子供が行くと色々とお菓子をくれて可愛がってくれるんですよ(笑)」「へぇ~良いですね~お婆さんもお子さんが来ると嬉しいんでしょうね」とそんな話をしながら調律をしていると子供が塀をよじ登って帰って来た。「隣のお婆ちゃんが死んでるみたい。動かないよ」「え~!どうしよう」その後のやり取りは、ほとんど記憶にないが何だか3人でお隣に様子を見に行くことになりました。玄関に入るとリビングの方から聞こえてくるモーツアルトのシンフォニー。綺麗に手の行き届いた家の玄関から廊下を通り、リビングに入るとそこにソファーに座ってゆったりと目を瞑った穏やかな顔の女性が静かに息をひきとっていた。テーブルには、紅茶と小皿に並べられたクッキーが置いてある。ある日の夕刻の出来事です。僕は、この出来事で不謹慎かもしれませんが人の最後を迎えるとしては、最高の亡くなり方だなと思いました。羨ましく思えました。僕もそうやって最期をむかえたいなぁ~とも本気で思います。多くの人が病気入院で長患いして亡くなる。また事故で若くして亡くなる人、色んな亡くなり方がありますが音楽に包まれて静かに人生の幕を閉じる、なんて素晴らしいんだろう。後日、知った事ですがその方は、資産家で地域や色んなボランティアに積極的に参加されてご活躍されていたそうです。やはり生前に良い事を沢山すると良い最後が迎えられるんだろうな。その様に感じた。私は、自宅に居る時は書斎にステレオを設置していつも音楽を流しています。以前は、クラッシックばかり聴いていましたが、最近は、色んなジャンルを聴くように努力してます。そこで最近感じることは、家に音楽が流れている事って何とも贅沢で豊かな気持ちになります。くだらないテレビ番組やネットにかじりつくのも良いが、ちょっと気分を変えて良い音楽を聴く、流すというのも生活を豊かにする簡単なアイテムだと思います。それには、良いステレオじゃなくてまずは、何を聴くかのソフトの情報だと思います。色んなジャンルを聴いて好きな音楽に出会えると生演奏も聞きたくなるでしょう。そうしたら、沢山コンサートを聴きに出かけると良いですね。そうしたら家でももっと良い音で聴きたくなるでしょう。自宅ホールのオーディオマニアの仲間もそうした豊かな時間の大切さを知っていて皆、良い人生を歩んでいるなと思えます。

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先日も鎌倉ピアノ芸術社は、県立養護学校に授業で使う花苗と農器具を寄付してきました。横浜市の公園に高校3年生が授業で植栽をして市民の皆さんにもその公園のお花を見て喜んで頂くなんて想像してだけでも良いなぁ~。そしてその花苗は、僕が毎回用立てていると思うとちょっと良い活動だななんて思って続けております。それもこれも、良い音楽に包まれて良い最後が迎えられるようにと真剣に思い込んで!でも、まだ最後に聞いていたい曲が決まっていない。決まってないという事は、まだ奉仕が足りないという事かな(笑)!

 

 

 

 

 

 

Kamakura piano artistry corporation | Tel : 0467-47-1502

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