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2024年、残念なゴールデンウィーク!

2024年のゴールデンウィークもいよいよ最終日となりました。大方、天気に恵まれて人によっては10連休。皆様はこのゴールデンな連休を存分に楽しまれましたでしょうか?私の方はと申しますと最悪のゴールデンウィークになってしまいました。3月から4月は、色んな仕事が重なって休みも無く4月中にホームページもアップする事が出来ずにただただ忙しく仕事に追われてまいりましたがとうとう体が悲鳴を上げてとっても残念なゴールデンウィーク。今回は、そんな近況を記事にしたいと思います。

虫食い被害の為、鍵盤のフェルト352枚を全てを蒸気で剥がす

全ての鍵盤の表裏のフェルト352枚を貼り付ける

3月6日にピアノ講師の先生がお二人揃ってが来社して、とっても感性の優れた生徒さんの為のピアノを用意して欲しいとの相談でした。一番の問題は、当然ご予算という事になるのですが先生方もその点は、「幾ら位かしらねぇ~?ちゃんと聞いてないわ~今日は、どんなピアノがあるかしらと思って(笑)」と言った具合で何をどう勧めて良いのか(笑)?まぁ~まぁ~そこは、商売ですから先生方から生徒さんの様子や色んな事を聞かせて頂くとピアノを始めたばかりの生徒の親御さんから当初は、電子ピアノの購入の相談を受けたのですが、その生徒さんの感性が鋭くてとっても良い物を持って居らっしゃるとお二人の先生が感じ取って親御さんに電子じゃなくて本物のピアノの購入をお勧めした。お二人の先生もお勧めした以上はと責任を感じて弊社に相談に来たと言った具合でした。それを聞いて普通にお勧めできる完璧に弊社で手を入れた人気商品が3台あるのですが、どれも年式が新しく販売価格が高い。年式の古い完全オーバーホールピアノが2台、見た目も中身も新品の様で音・タッチ・見た目と完璧に優れているが当然、新品以上に販売価格が高い。どうした物か低価格で良いピアノと言うと弊社が貸し出しピアノとして使ってるピアノもあるがそれもピッカピカに仕上がっているのでそこそこの販売価格になる。どれもこれもきっと予算オーバーだな~と困り果てたが、そこはピアノ屋さんですから熱心なピアノ講師お二人のお力になりたくて苦肉の策で「ピアノを引き取って今日入庫したばかりだからまだ調律もしてないんですけど。」と言って倉庫の隅っこにあるYAMAHAのX支柱の黒いピアノをお見せした。「このピアノは、以前私が調律にお伺いしていたお客様から引き取ったピアノでほとんど使用されなかったピアノなんです。これをこれから外装から内部の修理や部品交換をして高額商品にするのですが外装は、傷とかあまりないので外装にお金を掛けないで中身は、ちゃんと交換部品や調整をして良いピアノに仕上げるのでは如何でしょうか?」とお見せすると先生方が代わるがわるそのピアノを弾いた。「あら~暖かい温もりのある良い音してるわ~!」とさすがピアノの先生、先程お見せした比較的新しいピアノとはあからさまにグレードが違う事を簡単に見抜いた。このピアノは、以前の持ち主がご近所さんと騒音トラブルになって全くピアノを弾くことがままならない状態になってずっと放置されていたピアノなのです。長年調律もしないで放置すると当然内部のフェルトは、虫に食いつくされて散々な状態になっている。使ってないので外装は綺麗だが中身は、ボロボロと言った具合なのです。交換部品が沢山あるが弊社は、どうせ交換するので思い切った金額を提示した。翌日に先生から電話が入り改めて4月7日に生徒さんを連れてピアノを見に来る事になった。弊社は、このピアノに手を入れて完成するのが5月半ばとスケジュールを立てていたが、どうせなら完璧な状態で感性の高い生徒さんに弾いて貰おうと急遽色んな仕事をやりくりして予定を大幅にと言うか休みなしで作業に取り組む事にした。

お客様宅にあると意外に綺麗だが運び出すと色褪せて剥がれて

 

全てが綺麗に仕上がった人気のあるインテリアピアノ

と言っても同時に幾つもの作業が並行して進んいる。その一つがご実家から古いピアノを引き取って外装を綺麗に塗装して内部も問題ない状態に修理する仕事も手間のかかる仕事だが、関西の新築の息子さん宅にお届けするのに綺麗に蘇ったピアノは何とも気持ちが良い。そうこうしていると4月は、新学期なのでポコポコとピアノが売れる。その納品準備にも追われるがこの忙しさは、何とも充実している。忙しさに追われながらもどうにか4月6日ギリギリに全ての作業を終えたピアノは翌7日にお客様や先生方にとっても気に入ってもらって嫁ぎ先が決まった。休みなしの作業が続いたがお客様に喜んで頂けると何とも疲れも吹っ飛び気分爽快ですが気が付かないだけで疲れはどんどん蓄積していた様だ!

弊社で機材の動作確認

会場は洋館で狭いので歌い手とピアノが近すぎる

苦肉の策のマイクセッティング

そんな中、4月の上旬にはコンサート調律に加え録音のお仕事。大量の機材を搬入してピアノの調律をして録音機材のセッティングもして失敗無い様に慎重に録音する。と文章で書くと大した事なさそうですがこれが本当に大変で事前に機材の動作確認を済ませて前日に車に機材を積込みコンサートが終えると撤収作業がある。マイクスタンド1本とっても数キロある、録音機材は何より重量が凄い完全な肉体労働です。それで後日には、ミキシングをしてマスタリングをしてCDにするという作業が残っている。今回は、シューベルトの美しき水車小屋の娘。有名なドイツ歌曲。内容は、粉引き職人の若者が勤め先の水車小屋の娘に恋をするが恋は実らず娘は、狩人と恋に落ち失恋した若者は、自殺をしてしまう。という物語が20曲で構成される。歌詞の翻訳を片手に順に曲を聴き込んで行くとさすが歌曲王シューベルトと感動する。録音は、ライブ録音なので歌い手とマイクの位置や距離など頻繁に変わるのでミキシングは、手作業で1時間以上のライブを何回も何回も繰り返し聞いて作業をするがこれが結構大変で相当な時間が掛かる。詰まる所、この4月は、誰よりも水車小屋の娘を聞いた事になる。これだけ聴き込むと理解も深まりその曲の大ファンになるが、私もこの歳になると録音と調律は、別々がいいなぁ~(笑)。当日の重労働を思い起こすと昔は、そんな事一度も思った事無かったが寄る年波には勝てないという事なのでしょう。そんな慌ただしい3月4月の充実の時を過ごした後、4月の後半からゴールデンウィークまで家族全員完全に寝込んでしまった。幸いな事にコロナでもインフルエンザでも無く熱も出なかったが最初の病院で処方された薬は全く効き目がなくどんどん悪化して咳込んで夜は全く眠れなくなってしまった。まぁ~考え様に寄ってはピアノ調律師になってゴールデンウィークずっと家でゴロゴロのんびりした記憶がない。体調はすぐれなかったが家族でゆっくり過ごしたゴールデンウィークは、本当の意味での休息だった様に感じる。美しき水車小屋の娘の12曲目に「休息」と言う曲があるがそのメロディーが身に沁みて2024年のゴールデンウィークは、シューベルトの美しき水車小屋の娘が深く心に刻まれた。

 

 

 

 

袖触れ合う縁に恵まれて。

2024年も気が付いたら3月31日。昨日から晴天に恵まれ気温は、まるで夏日。鎌倉の道行く人は、早くも、半袖・Tシャツ・ノースリーブの外人女性が居るかと思えばコート姿にロングブーツを履いたお姉さん。この気温の変化に何を着て良いのか分からない状態が伺える。だんだん天候も極端になって季節の移り変わりを存分に楽しむ風情が失われて行く気がする。そんな中、何だか慌ただしく仕事に追われて暑いの寒いのと言ってられない大忙しの様子を簡単に書き記したいと思います。

お客様から電話が入った「○○と申します。ご無沙汰しております。お元気でしょか?コロナで調律が随分空いてしまったのですが、またお願い出来ますでしょうか?」「お~○○さん、ご無沙汰です(笑)ありがとうございます。もちろん喜んでお伺いさせて頂きますよ。」と伝えると「昨年2階に置いてあったピアノを1階に下ろしたんです。そうしたらめちゃめちゃに狂って来て押しても二つ叩いてるみたいでピアノが壊れちゃってるみたいなんです。」と悲痛の声。「あれれ、それは大変です。まぁ~お伺いすれば大丈夫ですよ。」と言って日程を打ち合わせて早速お伺いした。

お客様のピアノは、奥様が子供の頃から私がずっと調律にお伺いしているピアノでご結婚されて新居に運んだ慣れ親しんだピアノです。ご実家のお母さまは、ピアノが無くなると寂しいとその折に自動伴奏装置付きピアノを弊社でお届けして生ピアノの音を楽しんでいらっしゃいます。長いお付き合いでどちらのお宅にもお伺いさせて頂いてます。早速ピアノを弾いてみると確かに一つの鍵盤を押しているのに隣の音が一緒にしている。あれ!一緒にとなりを叩いてる様なタッチの違和感ではないなぁ~とピアノを開けて見ると。その音だけ極端に半音位音が下がっていた。慌ててチューニングハンマーでその弦を引き上げて合わせるとピンのトルクが緩いが留まらない訳じゃないが明らかにトルク不足。あ~乾燥だ!全体のピッチもかなり下がってる。「ここは、床暖房は、あるんですか?」と聞くと「いいえ無いんですよ!」「じゃ~暖房は、何を使ってます?」「あそこのエアコンです。」ピアノのすぐ横は、台所。エアコンの風がこの角に溜まるんだろうと想像がついた。「じゃ~とりあえず調律に取り掛かりましょう!」と言って作業に取り掛かった。湿度計をピアノの角にセットしてピッチ上げに取り掛かった。ずっと私か管理したピアノなので隅々まで良く解ってるピアノ。チャンチャンと作業が進んでアクションの緩んだネジを全て締め付けてあの下がった音のチューニングピンは、少し打ち込むだけでどうにかトルクが出て来た。仕上げの調律にも十便に神経を使って全てに気配りをしながら綺麗な音に仕上がった。作業中は、部屋の温度を普段の状態にしてもらっていて24℃で湿度は、なんと16%。これじゃ人間もカラッカラになっちゃうよ!加湿器の設置場所などをアドバイスして様子を見る事にした。別のお宅でも同じ時期に同じように過乾燥に見舞われたピアノを調律した。そこも同じく室温23℃湿度24%。エアコンの吹き出し口の設定と向きそして加湿器の置く場所などをアドバイスしてどうにか過乾燥を防ぐ対策をご提案するが加湿器に毎日水を入れ続ける事は中々難しい様で中々続けられないのが現状ですがどうにか暖房の時期だけはと強めにお願いした。昔の隙間風当たり前の寒い一軒家では、こんな事全く無かったなぁ~なんて昭和が懐かしく思える今日この頃でありました。

そうこうしていると、とある会社から水が漏れてピアノに掛かったのでどうした物か相談に乗って欲しいと電話がはいる。よくよく話を聞くと外壁洗浄の時にエアコンの配管口から汚れた水が部屋に入り込んでピアノから家具や衣類に床まで水浸しになってしまったらしい。「大丈夫でしょうかと言われても現物を見ない事には何とも判断しかねますね~。もしよろしければ見に行きますよ。勿論、料金は掛かりますよ!」と伝えると二つ返事でお伺いする事になった。結論から申し上げると結構な量の汚水がピアノに掛かったがピアノ内部には少量しか侵入しておらず大したダメージはありませんでした。が床とか色々と諸事情がある様で部屋の工事をするのにピアノが邪魔になるので工事期間中に弊社で預かってその間ピアノの外装や内部に渡り今回の汚水の影響を全て綺麗に修復するという事になった。

過去に何度か河川氾濫で汚水に浸かってしまったピアノの見分や修理の経験があったのでメーカーにも寄るが大方被害の予想は付くつもりでいます。ただ今回ちょっと驚いたのは、汚水の泥が底板に溜まった形跡があった事です。エアコン配管口ですから大した水量ではないはずですがピアノの天屋根丁番から侵入して弱音フェルトにポタリポタリはじかれて幸いにもアクションには、かからずに鉄骨響板にしぶきを当てて底板に溜まると言った具合です。ちょっとマニアックで調律師にしか分からないかも知れませんが要約するととってもラッキーな事にピアノの一番上の丁番から汚水が侵入したが弱音フェルトに守られて内部の機械は、濡れずに駒も無事で致命的な被害を免れた。しかしその汚水は、ポタリポタリの長時間鉄骨を伝ってピアノの底の部分に溜まっていたと言った感じでしょうか。早速、ピアノを引き取って弊社倉庫に入庫した。最初の見立て通り響板・鉄骨泥しぶきに底板の汚れを掃除する為にピアノを解体して寝かせて作業に取り掛かる。流石に被害にあって間が無いので汚れ落としも簡単で作業に苦労は全くなかった。あえて言うならば、ここ数年調律を怠っていた様でかなり音が下がっている事と整調もガタガタ。何度かに分けて調律・整調を繰り返しフェルトの交換や内外装の掃除に磨きとやる事は山の様だったが完璧に作業を終えた。

そんなある日、電話が鳴って出ると女性の方で「横浜の○○と申しますが古いドイツ製のシンメルというグランドピアノがあるのですがかなり傷んでいる様なので使えるようになるものか?それには、いくら位掛かる物なのか一度見に来て頂けないでしょうか?」私は「初めてのお客様ですか?どなたのご紹介なのでしょう?」とお聞きすると「以前、旅行会社のクルーズ船説明会でお会いして担当者の紹介でお会いして名刺頂いたんです。」私は、すっかり忘れていましたがその説明会の事は、よく覚えていました。「その時に私が名刺を渡したんですか?」と聞くと「ええ、古いシンメルがあるとお話したら何かあったら是非にと言って名刺を頂いたんです。それから随分経ちますがずっと名刺を持って居ました(笑)」もう17~8年前の出来事で旅行会社の担当者が私のお客様でそのつながりで参加した遠い昔の出来事。「いや~随分前ですね。担当者○○さんですね!ずっと覚えて頂いてありがとうございます。是非お伺いさせてください。」と言って早速お伺いした。

過去にシンメルのピアノは、グランドピアノもアップライトピアノも結構な数を数年に渡り管理した事があった。ドイツ最大のピアノメーカーで品質も良く安心して調律できるピアノでデザインが良くて兎に角、綺麗でおしゃれなピアノそんな印象のピアノで何の気負いも無くルンルン気分でお伺いした。ところが私の知るシンメルより更に古く見た事の無いタイプのピアノでした。音は、めちゃくちゃに狂っていて鍵盤も動かない上がってこない所が沢山あってかなりひどいコンディション。これピッチ上げると弦切れそうだなぁ~なんて思いながら色々見て行くとその構造や面白い仕掛けが有ったりでワクワクドキドキのブギウギ状態になって「よし!オジサンが良い音にしてあげましょう!」てな感じで状況をお客様にお伝えして直ぐに作業に没頭した。音楽家でもないお客様が昔このピアノを新品で購入したというが当時、いくらしたんだろう?さすがに大金持ちは、凄いなぁ~とか色んな雑念が頭をよぎったが作業工程が多岐に渡ってかなりの時間を要するので集中して作業に取り組む事にした。

鍵盤の調整から機械部分の修理や調整にかなりの時間を取られたが中々良く作られたピアノで手を入れるとどんどん良くなって来る。なによりドイツ製ピアノのネジ類の品質の高さは、ちょっと例えようがない位に良くてどんなに古いドイツピアノで私は、未だネジ切れ経験がない。逆に日本製は、良く折れる。日本製は、ネジを木材の中でサビさせてゆるみを抑える、まぁ~大工がくぎを口にくわえる製作理念だからとか色々言われるが修理する時に日本製ピアノでネジがポキッと折れるとまさしく心もポキッと折れる。折れたネジを取り出す重労力に加え新たに埋木をして新しいネジを入れる。たった1本のネジを新調するのに何日も掛かる、いや実際には、1本折れると大体3~4本は折れるのでただただ余計な仕事と膨大な無駄な時間が掛かる。それがドイツ製には無いとくればやっぱりドイツ製ピアノは良いとなる。何だか大きく話がそれたが初めて触るタイプのドイツ製ピアノに出会うと調律師は、ワクワクドキドキするって事で5時間余りの作業も疲れて面倒臭くもあるが綺麗な音に仕上がって蘇ったピアノを横に「どうよ、相当良い所まで蘇っただろう!」語り掛けると大きな図体のピアノのロゴがキラリと輝いで見えた。袖触れ合う縁が取り持ったこの出会いに心より感謝して蘇った音色に至福の時を噛みしめた。