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コロナウィルスの影響!

未だ先行きの見通せないコロナ騒動は、10月1日より緊急事態宣言が解除される事になった。自民党総裁選挙では、岸田文雄氏が圧勝しこれからの日本を如何に導くのか大いに期待が・・・・どうなんでしょう?まぁ~町場のピアノ屋さんが心配した所で大勢は変わらずと云った所でしょうが、このコロナ禍により楽器業界も色々と影響が出てきているのでその辺りを近況と合わせて書き記したいと思います。コロナウィルスの影響により経済活動に大きく支障をきたしているのが毎度マスコミで取沙汰されている飲食業界。私の知る所でもかなりの数のお店が閉店してしまった。それと同時に駅前のテナントビルは、全室空き店舗となってシャッター通りになって街が静まり返ってしまった。また、ここの所のテレビや新聞でトヨタ自動車・日産自動車の減産と工場生産停止のニュース。コロナの影響により半導体不足で自動車が作れないといった事らしい。当然、電化製品も同じでこの想像をはるかに超えた影響は、コロナを起因にして負のスパイラルとして世界中に広まってしまったという事らしい。我々楽器業界に置いても半導体不足によりデジタルピアノなど電子部品を必要とした製品は、露骨に品薄になったり生産を中止した機種も多く存在する。弊社は、ピアノ屋さんなのでデジタルピアノを率先して販売する事は、あまりありませんが、KOGRの消音ピアノユニットが半導体不足により生産中止となった。不思議と中止になった途端にお客様から注文が入ると云った不条理な事態に困ってしまった。KORGからは、旭化成の半導体を使っていたが旭化成九州工場の火事により半導体の調達が難しくなり生産が出来ない状態となったと説明を受けた。急ぎ新製品の開発をしているとの事で何時発売になるのかの見通しは、一切ついていないらしく会話の中でのヒントすら見出す事は出来なかったというか担当者も皆目分かっていないのだと思う。弊社としては、先の見通しが全く立たない半導体事業てどういった業態何だろうと疑問が湧いて詳しい人に聞いて弊社なりに先の見通しを立てようと半導体関係のお仕事をされているお客様数人に教えて貰ってちょっと勉強させて頂きました。ピアノ調律師がちょこっと聞いた所でなんら理解出来るような簡単な世界ではありませんでしたが皆さん「最近、コロナ禍で人と色んな話をする事がめっきり減ってしまったので話が出来て楽しかった。」とまぁ~お世辞半分としてもお客様宅にあがりこんで4時間も話し込んで丁寧に教えて頂いて有意義で楽しい時間を過ごす事が出来ました。お客様をこの混乱に巻き込むわけにはまいりませんので日本各地に点在する仲間達とこの情報を共有して慎重な協議を重ねて弊社は、KORG正規取扱店として新製品が発表されるまでの間の商品とアフターケアを踏まえて代替え商品の選別を終え準備万端でお客様のご要望にお応えする準備を整えました。また、新品ピアノに関しては、ここ数年慢性的に納期が遅くメーカー・機種によっては、半年から一年待ち。これは弊社の努力では、解決できない問題ですがそれにより中古ピアノが売れに売れてこちらも品薄というより販売価格の高騰につながっています。コロナ禍でリモート化が進み在宅勤務が推奨されて家での過ごし方の一環としてピアノを再開される方々が多く我々も大変うれしく思っているなか折角の折にコロナ禍による影響でタイミングを外してしまうのもとっても勿体ない事だと思います。弊社は、出来うる限りの企業努力にて皆様の要求に応える様に準備をしているつもりですのでどうぞ遠慮なく何なりとご相談ください。

2021年8月は、オリンピックにパラリンピックの交通規制と猛烈な酷暑で前々から外回りの仕事は差し控えて作業場に籠ってピアノ修理仕事をする様に沢山受注をしていました。エアコンの効いた作業場で黙々と細かな作業をこなすのは、結構快感で仕上がりがとっても綺麗に上がると何より楽しい。お客様宅から引き取ったピアノの内部アクションや鍵盤の消耗部品を交換する訳ですがピアノメーカーによってフェルトの厚さや長さがそれぞれに違ったりするので既製の製品では合わずにそれぞれ弊社で製作加工すると云った具合ですがこれがまた上手く出来るととっても楽しい。そんなコロナ禍の夏を存分に過ごした。毎年、横浜市立中学校の職業講話でピアノ調律師の仕事について体験とお話をしている。その冒頭で「皆さん、ピアノ調律師は、どんな所でどんな仕事をしているでしょう?たとえば~!」と言って私は、教室のグランドピアノを指差す。すると「中学校で調律!」「小学校で調律!」「私の家にも来る!」と云った具合にどんどんと答えが返ってくる。生徒達も予習をしっかりしているので実際困る事なんて全くなく和気あいあいと時間が過ぎて行く。その中でピアノ調律師は、ピアノの音を合せるだけでじゃなくてピアノを調整したり修理をすると言うとビックリする。ピアノのハンマーの部品を皆に見せて音楽教室のグランドピアノの内部と照らし合わせて説明をして行くと皆さん興味深々で特に男の子は何時の時代でも機械が好きみたいであっと言う間に時間が過ぎて行く。我々ピアノ調律師の仕事は、ピアノの音を合せる仕事に加えて弾き易く調整をする、演奏者の要求に応えた音色やタッチに調整をする。それだけの仕事をこなす調律師も居ますが、私は、ピアノ調律師とはそれに加えピアノを修理する、つまり消耗部品を新しい物に交換したり壊れてしまった部品を新調したり再生修理したりお客様の思いの詰まった古いピアノを復元したりとピアノの事は、何でも出来る事が望ましいと考えます。しかしその作業は、器用不器用で仕上がりに大きな差が出るがもっとも必要なのは、集中力と根気と良い工具です。この集中力と根気と工具が揃えば器用不器用を超越して良い仕上がりになります。どうやらこの根気と集中力は、ピアノに対する愛情に比例する様に思う。やっぱり好きな事を一生の仕事にする事が一番の幸せだとつくづく思う。こんなコロナ禍のなかでいつもピアノに囲まれて楽しく過ごす。十分に幸せだと実感しているが妻は「遊びじゃないんだから利益も上げなきゃ利益!楽しいだけじゃダメなのよ!」と厳しくののしられる。ごもっともですがこれは、とても中学生に聞かせられない!これじゃ~先生型無しじゃん!

 

 

鉄骨が折れたピアノ

コロナウィルスも更に猛威を振るって一向に治まる気配がない。私も2回のワクチン接種を済ませて準備万端のつもりがニュースでは、何だか3回目の接種がどうのこうのと言っている。2回目の接種の副反応が結構きつかったのでもう恐怖でしかない。よって未だに弊社のお客様には、遅れが取り戻せておりません。随時様子を見計らいながら遅れを取り戻す努力をしておりますがこのご時世の事情が事情なので中々思う様にはかどっておりません。お急ぎのお客様に置かれましては、ご連絡を頂けますと最優先でご対応させて頂いております。ご迷惑をお掛けいたしておりますが何卒よろしくお願い申し上げます。では、今回は、この夏何十年ぶりにピアノを壊してしまった悲しいお話を記事にしたいと思います。

「あ~なんて良い音!」「あ~気持ちいい!」「う~んこの伸びやかで澄んだ音!」調律を終えてご確認をと告げてピアノ弾き始めてもう数十分が経つが毎回こんな調子でニコニコご満悦の顔でずっと弾き続けるお客様は、熟年男性ピアニスト。しばらく演奏を聞いていると奥様がコーヒーを入れて持ってきてくれる。それでも演奏を止める気配は無く「あ~なんて良い音なんだ!」「このスタンウェイは、本当に良い音だな!調律するとこんなに違うんだもの!あ~ここ・・この澄んだ音の伸び!」とニコニコ。奥様もその様子に頬が緩み3人で何だかニコニコして・・・毎年そんな光景が長年繰り返されている。本当にピアノが好きなんだなとヒシヒシと伝わる。あんなに愛されてあのスタンウェイも幸せ者でしょう。そしてあんなに喜んで頂けて毎回私もとっても嬉しい。そんなご満悦の時間を過ごしていると突然弾く手を止めて「妻の実家に永年放置しているピアノが有るんですけど一度使える物かどうなのか見て頂けますか?ちょっと遠いんですけど」と「喜んでグランドですかスタンウェイですか(笑)?」と言うと「いや○○○のアップライトでもう何十年も放置して調律もしてないんですよ」と言われ後日、日程を合わせてお伺いした。

 

早速ピアノを触ると????滅茶苦茶を通り越して物凄く気持ちの悪い音階。どうしたんだろう?調律の記録を見るとおよそ45年位前のピアノで購入した時に調律をしたまま放置されていて20年位前に一度調律師に調律を頼んでいるがその時にピッチが全音下がっていたと記載されていた。それにしてもこの狂いは異常だ!オカシイ!20年位前に調律していてピッチがまた半音下がっている。次高音からは、全音更に下がっていて明らかに異常がある。万一、前の調律師さんが上手くピッチを上げられなかったとか?なんて色々想像しながら鉄骨の折れを懸念して慎重に見ても見た目には鉄骨の折れやひび割れも見当たらない。響板の割れも駒の剥がれも無く???でも何かが変だ!私は、「こんな狂い方は、おかしいのでこれを調律するともしかしたら鉄骨が折れるかもしれません。」と告げると「折れるとどうなりますか?」と聞かれたので「折れたらピアノは、もうだめです。修理不能になります。廃棄処分です。」「修理不能ですか・・・」「はい、中には鉄骨を再溶接して修理が出来るという技術者が居るようですが、仮に本当に修理が出来るとしてもピアノを搬出して230本の弦を全て取り外して鉄骨も取り外しての修理となると大掛かりになります。そうなると費用が物凄くかかるのでその場合は、買い替えた方が良いという判断になります。」と告げると「どうしたら良いですか?」と言われたので「とりあえず、物凄く慎重に慎重に調律を試みます。上手く行くと良いのですが鉄骨が折れて使い物にならないピアノになってしまう可能性があるというリスクが発生しますのでその点は、ご理解願えますか?」「分かりました全てお任せします」と言って頂いた。

 

年式を全く感じさせない外観で大きな傷も無ければとっても綺麗。無事に蘇ると良いのだが・・・と慎重に慎重に調律に取り掛かった。まず、全音下がっている次高音の状態を探る為にもピッチをそのままにして調律をしてみる事に。何ら問題無く作業が進む。徐々に少しずつピッチを上げて何回にも分けて時間を掛けて調律を繰り返した。恐る恐る調律を繰り返したので疲労困憊で物凄く時間が掛かった。その甲斐もあって無事に調律を終えて何とも綺麗な音を奏でるピアノになった。「どうにか終わりました(笑)!弾いてみてください。」と言ってピアノを明け渡すと早速弾き始めた「お~良い音してる!う~ん中々良いふくよかで伸びる音!良い音してますね~!」と言って何時もの様に延々とピアノを弾きが始めた。何時もの様に奥様がコーヒーを入れて来て「あのピアノがこんなに良い音になるなんて!凄いですね!」と言って何時もの様にみんなで頬をゆるめる光景になった。こんなに狂っているピアノの調律は久しかったなぁ~でも無事に綺麗に仕上がってやっぱり俺って天才!!!なんて有頂天になって勘違いを思いながら上機嫌で帰路についた。その夜、8時過ぎに電話が鳴る。「今日は、ありがとうございました。あの後、ずっとピアノを気持ちよく弾いてみんなでお茶を飲みながら雑談を始めたらバン‼‼と凄い大きな音がしていっぺんに音が狂ってしまいました。どうしたんでしょう?」と電話が入った。もう嫌な予感しか経たなかった。後日、お伺いしてピアノを見ると予想通り次高音の鉄骨に大きなヒビが入っていた。「あ~鉄骨が折れました・・・」意気消沈です。今回のケースは、あらかじめお客様にリスクを説明してありましたので問題になる事はありませんでしたがお互いに決して良い気分の物ではありません。というより残念でなりません。折角あんなに良い音になったのに返す返す残念です。この鉄骨折れとは、20トン以上の力を支える鉄骨は鋳物で出来ていて砂型に溶かした鉄を流し込むのですがその時に少なからず気泡が入る。その場所が悪かったりすると今回の様に折れたりする訳です。私も過去に10台位は鉄骨の折れたピアノを経験しております。昔から先輩方から2万台に1台の割合で鉄骨は、折れるからね!と言われましたが冷静に今考えるとどこから2万台なんて数字が出てくるのかそんな適当な数字は、単なる言い伝えでそれくらい希にあるという事なんでしょう。思えばピアノ最盛期の年間30万台以上の生産をしている時代は、新品のピアノでさえも鉄骨の折れを数台経験している。とある製造メーカーの製品だったりゼネラルブランドの特定の機種(モデル)では鉄骨の折れるピアノが数多く存在した事は事実です。それをここで記載する事はしませんが、いずれにせよ私は、ここ25年位は、鉄骨折れとは無縁でした。久々の遭遇にやむを得ない事とは言え一台のピアノの最期を看取るという何とも言えぬやりきれない気持ちが渦巻いた。ピアノ調律師という仕事を続けて行くと今回の様な事に出くわす事もあるでしょう。幸いな事にまだ経験した事の無い調律師さんは、この様な事があるもんなんだなと参考にして頂ければ幸いです。なお、今回掲載している写真は、今回の鉄骨折れのピアノとは全く関係ありません。