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ピアノ調律師の仕事

新種のインド型やイギリス型と言った変異ウィルスは、感染力が強くて危険であるとマスコミで放映しているので今年も自主休業を余儀なくされるのかな?そんな休んでばかりじゃ会社がつぶれちゃうなぁ~!と危機感を持ってその対策として色々と準備をした。ところが昨年に比べると皆様もだんだん様子が分かって来たのか?感染予防が板に付いたのでしょうか?昨年コロナで調律をやらなかったのでと調律の依頼の電話が毎日の様にかかってくる。また、このホームページを読んで頂いて新規にご依頼を頂くお客様も沢山いらっしゃって何よりありがたい。この場を借りてご依頼を頂いているお客様に心より感謝申し上げます。今回は、神奈川県まん延防止等重点措置中の弊社の仕事の様子を記事にしたいと思います。

ある日、地方の楽器店から「教えて欲しい事があるのですが」と電話が入る。ちょうど私が外出していたので18時にもう一度電話をするという事になっていた。18:00ピッタリに電話が鳴る「○○楽器と申しますが、教えて欲しい事がありまして・・・」と若い声でピアノの修理についての問い合わせでした。メーカーにも問い合わせをしたそうですが弊社のホームページに同じタイプの修理が記載されていたのでそれを読んで電話してきたのでした。つまり、ピアノ部品も時代と共に進化?して素材が変わって来た物もあるのでその新素材にどんな接着剤を使用したのか?その修理の方法や手順は?またその後問題は無いのか?それを直接聞きたかった様です。弊社のホームページを見つけて読んで一度も会った事も無く名前も知らない所からの技術的質問に正直困惑したが、これからピアノ一台分の修理を試みるんだなぁ~!と考えると妙に嬉しい気持ちがこみ上げて来た。

中学校や小学校で職業講話をする時にピアノ調律師の仕事とはどんな事をするでしょう?生徒に質問にしてみるとピアノの音を合せたり調整をする仕事と答えが返ってきます。確かにその通りですが調律師は、傷んだピアノを修理するという重要な仕事があります。ただお客様宅で出来る簡単な作業とピアノを引き取って大掛かりに修理をするのでは専用工具や大型工作機械、そして難易度や経験値の問題からピアノ調律師全員が出来るという訳ではありません。一番の問題は、場所の問題がネックになります。このまん延防止等重点措置の最中にあえて率先して外回り仕事をするよりは、作業場で修理作業をと沢山修理作業の仕事を取って来ました。その中で成人しているお嬢さんとお母さんのお二人がガンガン弾いて弾いて弾いて色んな所がすり減り切ったピアノの修理を請け負いました。ちょっと専門用語の連続になりますが写真をみて想像しながら読み続けてください。ピアノの内部の写真は、マニアックですが何処となく非現実の世界なので芸術的というかアーティスティックだと思います。

 

ピアノの鍵盤ブッシングクロスの交換とウィッペンクロスの摩耗が凄いのでせめてそこは交換しましょう・・とお勧めをするとお母さんが「この際だからお任せしますので悪い所全部やって下さい」と言われて全てお任せという事になりました。しかし常識的ご予算という物がありますから乱暴に何でもかんでも交換という訳には行きません。摩耗している所を全て新調して行こうと取敢えずアクション(機械)をひっくり返してダンパーを外す。するとダンパーレバークロスが完全に摩耗している。ここで交換しなかったら1~2年でまた修理になるだろう!よしこれは、交換しよう!早速、ダンパーレバークロスの厚さを測って綺麗に裁断して摩耗した古いフェルトを剥がして新しい物を貼る。文章で書くとなんとも簡単な作業(笑)ですが、ピアノの修理は、綺麗に美しく正確に忍耐忍耐です!その作業と並行して鍵盤のブッシングクロスを綺麗に剥ぎ取る。そしてダンパースプーンとダンパーロッドを綺麗にピカピカに研磨する。これが汚れてるとまた異常摩耗が進んでしまう。ついでにペダル突き上げ棒のゴムも新調する。

ウィッペンヒールクロスは、過使用の為に使用頻度の高い鍵盤では、原形をとどめていない。ここまですり減ったのは、あまり目にしない。あの部屋でどんだけ練習したらこうなるんだろう???これも綺麗に剥がして新しいフェルトを貼る訳ですが、この大型ピアノのクロスは、規格ものではないので弊社で裁断機で綺麗に切り揃える。これも全て揃えて綺麗にです。張り替えると何とも気持ちが良い。

これだけ摩耗しているのにハンマーは、ファイリングだけで大丈夫。以前、消音ピアノユニットを取り付けたのでハンマーの摩耗が抑えられたのでしょう。

問題は、バットキャッチャースキンである。これを交換する事は何より面倒なのでお客様にはやらなくて大丈夫ですよと言っておいたが他が綺麗になってくるともう交換しないと我慢できなくなって覚悟を決めて交換する事にした。もともと安価な合皮が使われて剥げ剥げになってしまったので今回は、本鹿革にして綺麗に裁断した。ただ予想通りキャッチャーの合皮を88鍵綺麗に剥ぎ取るのは、重労働に物凄い時間が掛かった。そしてキャッチャーは、アール部分と平面部分と接着するのに一工夫いやふた工夫必要なので更なる手間と時間が掛かった。まぁ~ここを交換する作業は、どこでもあまり行わないと思うが仕上がると濃い鹿革を選んだのでアクションがしまった感じでシックに綺麗に仕上がった。ピアノもどんどんおめかしをして綺麗になって喜んでいる様に感じる。究極の自己満足かなぁ~(笑)!

鍵盤は、キャプスタンを研磨・潤滑調整をして綺麗に仕上がった。アクションをほとんど解体したので細部に渡り入り込んでいる埃やフェルトのカスを綺麗に掃除してフレンジの潤滑にも手を入れてようやく出来上がった。綺麗になったアクションを見るとやっぱり芸術品だなぁ~と感心する。後は、お届けして現場てピアノに合わせる調整をして全て完了です。ピアノの修理は、細かくて88鍵分と数が多いので途中で集中力が切れて疲れも出て最初から最後まで同じに綺麗に仕上げる事はできません。それをおぎなって綺麗に仕上げるには、工具や治具に経験と段取りです。私もこの歳になってようやく少し段取りが良くなってきたかなぁ~とちょっと調子に乗って自己満足をする時もある(笑)。ただ、集中して苦労して綺麗に仕上がるととってもピアノが喜んでくれるので楽しくてならない。これもピアノ調律師のやりがいのある仕事の一つです。さぁ~後は、一番重要な請求なんだけどもお客様の予算に合わせて・・・・いやいや完全に予算オーバーだなぁ~困ったなぁ~!こればっかりは、治具に工具にって訳には行かないなぁ~どうしよう(笑)!

 

出戻り娘(ピアノ)の再婚

昨年4月の緊急事態宣言から早一年が経つことになる。あの時点で一年後に変異ウィルスが流行し新たな脅威にさらされるとは、誰が予想出来たのであろうか?オリンピックは、果たして開催されるのだろうか?100日後に差し迫った時点でも開催が危ぶまれている。我々は、ただただ普通の生活がしたい。そんな些細で当たり前な事を希望として一日も早い収束を心から願うばかりです。そんな混乱の中での弊社の4月の様子をここに書き記したいと思います。

今の住宅環境は、冷暖房完備に床暖房・全館空調など至れり尽くせりで清潔感があって清々としていて何ともオシャレである。ただ、そのオシャレがピアノには、ちょっと厳しくて過乾燥なのです。冬の暖房に床暖房と来ればピアノのビスのあちらこちらが緩んでピアノが悲鳴をあげます。ピアノ調律師もお客様宅で緩んだビスを締め直す作業が一手間増えますが、この一手間は、ビスを締めるだけでなく木部の反りに合わせ調整をしながらと全然一手間じゃなく沢山の時間を費やします。昔からピアノに限らず楽器は、湿気に注意と湿気が多いとトラブルが多くなると言われて確かにその通りなのですが、今は、過乾燥に注意!乾燥が過ぎるとピアノに限らず木製楽器は、致命的なトラブルが起きます。過乾燥による木の変化で木部が割れたり反ったりしてしまうと修理は大層に大掛かりになり修理金額も跳ね上がります。時代の流れに応じてお客様宅のピアノの管理方法もすっかり変わってしまった訳です。きっとピアノは、「昔に比べると部屋も綺麗だし住んでる人も綺麗だしオシャレだし居心地良いんだけど乾燥がひどくてお肌も体もいや骨の髄までカラッカラよ!しっかりケアしてね!」と言われている様な気がして、それは一大事!一手間二手間を惜しむことなどとても出来ないな!と腰を据えて仕事に取り組んでおります。

KAWAIのプレミアムブランドShigeruKawaiが入庫した。15年程前に弊社で販売したピアノで当時ShigeruKawai最終出荷調整をしている友人の調律師に色々と注文を付けて数台用意して貰ってお客様と私の4人で竜洋工場で選定(選んで)をして一番良い物をお届けしたピアノでした。一人娘のご家庭でどうせピアノを弾くのであれば良い物を使わせたいと大きな家をお持ちの裕福な家庭でしか成しえない選択で高級ピアノを購入して頂きましたがお嬢さんの留学などが重なりほとんどお使いになられませんでした。綺麗な家に一人娘さんだと丁寧に扱って頂けて15年経っても傷一つ無い抜群のコンディション。嬉しくなって「もう直ぐShigeruKawaiが入ってくるんだよ!僕がずっと管理していたピアノだから音もタッチも抜群だよ(笑)!いや~やっぱり良いピアノは良いなぁ~惚れ惚れするよ!」と友人に得意げに話すと「それ私、買うよ!いくら?」「いやまだ入庫してないし、これから外装の磨きとか内部の調整をしてしばらく手元に置いて弾いて楽しもうと思っているんだよ(笑)!」と言っても聞き入れて貰えずに入庫する前に次のオーナーが決まった!もっともこのShigeruKawaiは、中古市場にもほとんど出てくる事が無い上にこの様な状態の良いしかもどの様に使われたピアノか素性がはっきりと分かっているピアノは、弊社特有の物なので次のオーナーは、本当にラッキーだと思う。他にやらなければならない作業は、あるのだがそれを後回しにしてこのピアノを優先して再婚の為に念入りに作業を進めている。

お母さんも娘さんもピアノの先生で永年のお付き合いのお客様。どちらの家にも弊社で納めたグランドピアノがある。ご実家は、YAMAHA C3でお嬢さんの受験もこのピアノで猛練習して音楽大学に進学した。ご結婚後に新居にはShigeruKawaiをやはり竜洋工場まで選びに行ってお届けしている。今回は、実家のYAMAHA C3の鍵盤ブッシングクロスが調整不能なほどに摩耗してしまったので預かって交換作業。特に難しい作業では無いがこの作業の善し悪しで弾き心地があからさまに変わる。調律師の中には、このクロス接着剤によって音が変わる!クロスの種類によって音が変わる!と豪語する調律師に出会う事が多いが私は、ちょっと違う感触を持っている。ピアノの鍵盤には、88鍵176カ所に704枚の小さなフェルトが貼られてある。それを丁寧に剥がして木部を調整した後に正確に揃えて704枚貼り付ける。その仕上がり具合は、正に根気とピアノに対する愛情に比例すると考えます。ここの揃っているという事がとても重要で私が一番大事に思って作業に取り組んで未だ勉強しながら工夫を重ねている事です。弾き手は、弾き心地が良くて揃っていると弾き易くなって気持ち良くてどんどん弾きたくなって良い音がすると感じてくれます。揃っているは、もちろん良く揃っているですが言い換えると丁寧に時間を掛けてという事なのでしょう。目に見えない直ぐに消えてしまう音の世界だからこそ見えない所に力を注ぐと直ぐに応えてくれる。ピアノの格別な音の世界は、まだまだ奥が深く未だ到達点には、ほど遠い。一昨年お亡くなりになられた師匠が昔、「俺は、未だに調律に悩んでいる。」と言ったのをいつも思い出す。あの世界的に有名な調律師が未だに悩むんだから僕が未だに勉強勉強は当たり前、奥が深いから面白い!悩むから勉強する!ちょっと出来た気になると嬉しくなるを繰り返して歳を重ねる。そうこうしていたら一人前に歳だけは、相当重なっちゃったな!