「#ピアノ調律 鎌倉」タグアーカイブ

鎌倉プチロックフェスティバルVOL.9.5

2023年今年もあと一月ちょっと。年を重ねると時が過ぎるのが早い事早い事。これからどんどん加速して行くんだろうなぁ~と想像しながら過ごしていると今月は、大リーグの大谷翔平選手が満票で2度目のMVPを受賞したと速報が!野球の事は、全く詳しく無い私ですら彼の活躍は、誇らしく嬉しい。近年、スポーツの世界で日本人の活躍は目覚ましくボクシングの井上尚弥選手の圧倒的な強さは、正に日本人として誇らしく勇気を頂いてる。また、サッカーにラグビーなどその活躍に胸躍らされる。芸術の方面はというと、これについて書くとピアノ関係者からのクレームで炎上しそうなのでまたの機会にして今回は、先日開催された鎌倉プチロックフェスティバルについてちょっと面白い事があったので書き記したいと思います。

9時前に無事設置完了

2023年10月29日(SUN)に鎌倉海浜公園で鎌倉プチロックフェスティバルVOL.9.5が開催された。今回は、公園の整備の関係?で公園内にステージが3か所と半分の規模で開催されたのでVOL.9.5と半分の0.5名称での開催でした。弊社の9月・10月は、コロナも落ち着いてコンサートやピアノの発表会も今まで我慢をしてたぶんより盛んになってピアノの調律や販売・修理と日々目まぐるしく忙しくなって喜ばしい次第だが全体的にまだまだ開催規模は小さい気がする。

ちょっと特殊な場所でのコンサート

鎌倉プチロックフェスティバル所有のピアノの調律

押せ押せのスケジュールの中で10月29日開催の鎌倉プチロックフェスティバルのピアノは、弊社の倉庫から前日の28日に出荷される。前日までに外装と金属部分の磨きに塩害対策そして整調・整音・調律は、完璧に終えておかなければならない。しかし連日予定が詰まっているので少し空いた時間をやりくりして25日に金属部の磨きと外装のワックス掛けを終えて。26日に整調、27日に調律・整音と終わらなかったら27日の夜中にやればいいかとリラックスしていや開き直って肩の力を抜いたのが良かったのか余裕をもって完璧に仕上がった。若い頃は、力でねじ伏せてもくもくと作業をこなしていたが、年を重ねるとこういった事の処理が上手になるなぁ~と年寄りも満更じゃないなぁ~なんて(笑)。いつまでも若い気でいたのか?単に不器用なのか、気付くのがちょっと遅かったかなぁ~(笑)?

準備完了、万全です!

今年の秋は、兎に角暖かくていや暑いくらいで連日晴天の観光日和。どこでもここでも天気に恵まれて大賑わい。鎌倉は、外国人の観光客も多くなって混雑・渋滞・大繁盛と何とも賑やかしくて、やっぱり観光地はこうでなくっちゃ!と思いきや天気予報では、何故だか10月29日だけ雨マーク。どういう事?前回の雨が頭をよぎる。当日は、朝からパラパラ降っては止み、どんよりとした空模様。所々雲の切れ目から青空がのぞいているが微妙な感じ。予定通り9時に海の前の海浜公園にピアノを搬入した。地面の至る所に水たまり。芝は、たっぷり水を含んでいる。とりあえず調律を始めると時折ザ~ッと雨が降るが雲の切れ目がどんどん増えてきている。「どうか晴れて頂戴よ!」と一人事を言って作業を進める。すると調律が随分進んだ所でピッチが上がって一変に調律が不安定になった。海からの湿気た風をモロに受けてなお、気温が急に上昇して下が砂地の芝の地面からたっぷり含んだ水分が一気に蒸発して湿度が上がっている。弊社倉庫で乾燥した状態で保管していたピアノが水分をグングン吸収している。そうこうしていると鍵盤の動きが少しだけ鈍い所がいくつか出て来ている。すると「今日一番手でピアノを使わせて貰います重太です。よろしくお願いします。」ともじゃもじゃ頭の男性と数人の男性が挨拶に来た。「こちらこそよろしくお願いします。ところでトリオのジャズですか?」と聞くと「いいえ、一人のクラッシックです(笑)」私は、「クラッシックですか?」「はい!」「プチロックフェスティバルでクラッシックですか?全曲?一人?」「はい(笑)」何とも不思議なほんわかとしたオーラがあってとっても良い印象だった。これは、面白い!クラッシックのピアニストが弾くとなると途端に嬉しくなって調律を中断して鍵盤の調整を今日の湿度を見越して88鍵全てやり直して十分に配慮した調律を終えた。

重太さんの演奏。

演奏を聴いてどんどん人が集まって来る。

お客様の拍手に包まれる。

重太さんの演奏が始まる。朝一番手10時10分で天気も曇りのち雨状態でまだまだ人手がまばらだが「バッハ平均律1番プレリュード」を弾き始めた。鎌倉の海の前の公園に生ピアノの演奏で誰しもが知っているあのメロディーが辺り一面に響き渡る。早朝である事もあって厳粛な気持ちになって雲の切れ目の青空と海のコントラストが幻想的に見えて「あ~凄く良い!素晴らしい!」と直感的に思った。続いてラフマニノフの鐘やショパン幻想即興曲だったり次々と誰しもが耳にしたことのある曲を演奏された。道行く人から犬の散歩の方など次々と人だかりが増えて大勢の人に囲まれて持ち時間の40分があっという間に終えた。以前、富士ロックフェスティバルでピアニスト角野隼斗さんが英雄ポロネーズを弾いて会場は大変盛り上がったと聞いた事があったが正直盛り上がったか否か本当の事は分からなかった。しかし今回の現場に居てお客様の様子も見て音も聞いて誰しもがクラッシックピアノの名曲の良さというか音楽の力を肌で感じて実感している様だった。またここで次回もクラッシックピアノの演奏ききたいなぁ~と心から思った。その演奏の後、天気は回復してそれぞれ食べて飲んで歌って踊って盛り上がってと正にアクセル全開のフェスティバルで混乱なく丸く収まった。数日後、これからピアノの準備にも力がはいるなぁ~と何だか嬉しい気分で弊社の倉庫に戻って来たピアノに手をかざして労をねぎらった。

60年前のピアノと戯れて

2023年9月,暦の上では秋と言えども今年は、特別に暑くて暑くてヘトヘト状態。地球の環境変化に伴う異常気象は、ここ数年は、町場の調律師の私ですら肌で感じ危機感を募らせる位に度を越えている。先日は、昼過ぎに目黒に仕事で出かけるとゲリラ豪雨に遭遇。約束の時間になっても豪雨と雷は、激しさを増し一向に収まる様子はない。しばし待機してやや小降りになった所でお客様宅へ。その後、横浜に戻る途中で横浜方面の空がピカピカしている。目的地は、正にピカピカゴロゴロ土砂降りの真下であった。その後、自宅へ帰ると今度は、鎌倉が雷ゴロゴロの土砂降り。どうやらこの日は、雷に導かれる様に雷雲から雷雲へと移動を繰り返した様だ。大事なくて良かったが途中の道路冠水や猛烈な雨で視界不良。何よりあの雷の音と稲光には何度も肝を冷やした。これから夏の仕事にあり方が変わってくるんだろうなぁ~なんて回転が著しく鈍った頭で想像した。さて今回は、私も過去に2度しか触った事の無い滅多にお目に掛れないピアノの調律や今では珍しいプリマトーンピアノを立て続けに2台調律したりと古い年代物のピアノに携わった様子を今回は記事にしたいと思います。

LA  LUNAピアノのマーク

この時代のピアノは、木材の質と乾燥が良いので狂いが少ない

ネコ脚で小洒落た存在感のあるピアノ

長年お世話になっているお客様から8月に電話が入った。「何時もお世話になってます○○区の○○です。」「あ~お世話になっております。お元気でいらっしゃいますか?」「はい、お陰様で元気にやってます。ところでもう直ぐ調律の時期ですよね?」「9月が時期ですね!」とお応えすると「お隣の方が調律をお願いしたいと仰っているのでご連絡差し上げました。日にちを合わせて同じ日に来ていただけますか?かなり古くて何十年も調律してないんだそうですって」私は、二つ返事で「良いですよ!ありがとうございます」と言ってお隣さんの都合も合わせて日程を決めた。お伺いするとリビングの奥の方にあまり見掛けないデザインだが小洒落た感じの黒いピアノが鎮座している。蓋を開けるとLA  LUNAと書いてあった。象牙鍵盤と2本ペダルが年式を物語っている。弾いてみると半音位音が下がっている。機械部分は、昔、湿気の多い所に置いてあったであろう修理の痕跡が沢山残っていて上手く行かなくて苦労した跡が至る所に見て取れる。お客様に「60年以上前のピアノだと思いますが本来は、色々と部品交換が必要でそれには、かなりの費用が掛かりますのでとりあえず今日の所は、音の狂いと調整でどうにか気持ちよく弾ける状態にして弾いて頂いてそれからの事は後々考えましょう!」「それでお願いします。」と早速作業に入った。この手の古いピアノの調律は、とにかく低音部の断線に気を付ける事で何回かに分けて少しづつピッチを上げて慎重に調律をする。ピッチ上げの途中に機械の調整や弦合わせや狂った所に手を加えながら作業する事4時間。どうにか綺麗に仕上がりました。この時代のピアノは、コストダウン前のピアノですから丁寧に頑丈に作られているので上手く仕上がるととっても良い音がする。この様なピアノに出会う度に、たとえメジャーブランドのピアノじゃなくても日本人が作ったピアノは長持ちするなと改めて先人の技術者の勤勉さに頭が下がる。何より名前からして響きが可愛らしい!

東洋ピアノ製のプリマトーンのマーク

中身は、慣れ親しんだアポロピアノ

初めてのお客様からメールで問い合わせを頂いた。45年前に購入されたプリマトーンで長年調律はしていないとの事。一度見積もりをお願いしたいとの事でしたので早速お伺いした。外観は、45年の年月を感じさせない3本ペダルの綺麗な状態。ちょっと弾いてみると半音位音が下がって弾ける状態ではない。パネルを外して中を見てみると綺麗だが中身は、東洋ピアノ製のプリマトーンだった。以前にもこのホームページでプリマトーンを2度くらい記事にしていますがこのプリマトーンは、シュベスターピアノ製やレスターピアノ製そして今回の東洋ピアノ製などなどピアノ製作メーカーに大塚ピアノ商会が依頼をしてプリマトーンブランドのピアノを作って貰って販売していた商品です。大塚ピアノ商会は、当時横浜元町にお店があって元町で生まれ育った私の友人達は、皆さん近所よしみでプリマトーンを購入した様です。日本で最古のピアノ屋さんとの事で横浜元町を地盤として当時は、かなりの販売台数を誇った様です。話は戻って45年前の東洋ピアノで機械などは、長年の放置で色々と傷んでいるが調律と調整をすれば弾ける状態になると踏んで金額を提示して作業日を決めた。作業当日は、手慣れた東洋ピアノですから何ら問題なく作業も修理も進み大方集中して3時間ちょっとで作業を終えた。

プリマトーンのマーク何とも可愛らしい

中身は、シュベスターピアノのモデル50かな?

先日お伺いしたピアノもまたまたプリマトーンだった。2本ペダルで年式は、分からないがきっと60年位経ってると思われるが定期的に調律が入っているのでコンディションは良い。このプリマトーンは、シュベスターピアノで作られたピアノでプリマトーンの中では高級なタイプ。以前シュベスターピアノに勤務していてピアノを製作していた友人に聞いたと所そのピアノは、ベーゼンドルファーを参考にしたピアノだそうで機械は、レンナー製で響板は、赤蝦夷松(最高級ピアノ響板で高価)が使用されているそうです。調律を終えて弾くと未だにふくよかで音が良く伸びて大きな音。象牙鍵盤が手になじんで少し弾いているだけで愛着が沸いてずっと弾いて居たくなるピアノ。きっと当たりピアノなんだな!良いピアノだ!ついでに中身のプリマトーンのマークがとっても可愛くてちょっと忘れられない良いピアノだった。プリマトーンがどれもこれも良いピアノという訳ではありません。大半は廃棄されているだろうし弾けるようにするには、かなり費用が掛かるであろう。また、オーバーホールとなれば新品ピアノが買える金額を軽く上回るだろう。しかしシュベスターピアノの熱狂的ファンが居る事実を鑑みるとコストダウン前の時代のピアノは、木材も部品も圧倒的に良い。ちゃんと手を入れれば一生の宝になる事でしょう。

昭和31年1月製造のYAMAHA  U3

昭和31年製造のヤマハピアノ。ここ30年位は、私がずっと管理しているピアノ。もともとマホガニー色だったが年代と共に枯れた色合いになって年代物の赤ワイン色になっているが全く現役状態。良いピアノです。ヤマハが丁寧に良い素材を使って作りあげたピアノは、他社の追随を許さない。ピアノはヤマハと言われる所以は、高い製作技術と高い精度の材料と技術者の情熱に会社の規模。先人たちの技術と情熱で仕上がったピアノは、沢山の思い出を詰め込んで一家の宝となる。私は、年代物のピアノに出会うと持てる技術を全て投入してこの状態をずっと維持する事が調律師としての使命だと考えます。この時代のピアノに触れると先人の技術者とピアノを通じて心が通じ合い技術で会話する喜びに心から調律師としての幸せをかみしめる。