「#ピアノ調律 鎌倉」タグアーカイブ

摩訶不思議なペダル修理

10月に入り関東では12月中旬の気温になった日が3日程続いた。慌てて長袖の下着にしたりフリースを引っ張り出して着たり作業場では、慌ててストーブを焚いたりと大慌て。近年、春と秋がとっても短くなってちょうど良い気持ちの良い季節なんて続かないんだなぁ~と異常気象を恨めしく思った。そんな日々で摩訶不思議な事になっていたグランドピアノの事などなど近況交えてを記事にしたいと思います。

長年のホコリが積もりに積もってる。

この時期のヤマハピアノは、大方この紐が切れている。

昔の人は、暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったもので大方そんな感じで季節が移り変わって9月も末に近づくと必ず何処からともなくキンモクセイの香りが漂って秋の訪れを感じる。そんな時にお客様のご紹介で1通のメールが届いて、実家からピアノを運んで使いたいので運送と調律をお願いしたいとの依頼を受けた。早速、引き取りをして運送屋の倉庫にピアノを見に出かけた。外装は一見綺麗だが触るとベタベタとしていて汚れている。丁寧に使われたピアノで大きな傷は無いが音が沢山狂っている。中をのぞいても虫食いなども無さそう。運送屋さんの倉庫ですから全部をばらして細部に渡り確認をする事は出来ないが弾いた感じでは概ね良好だった。早速お客様に電話を入れて報告をした。「ピアノは概ね良好ですが汚れが酷いのと鍵盤の小口が変色しています。傷も少しはありますが中身はしっかりしたピアノで調律をすれば大丈夫ですよ・・・。」と報告すると「使えそうですか。傷とか外装は気にしていませんので汚れを落として調律と中の修理をお願いします。」との様な感じでした。大方の費用の話などをして早々に弊社の横浜商品倉庫に運び込んだ。

切れた紐88本を切れない紐に交換した所。

綺麗に仕上がって納品を待つだけ。

 

9月の末にそのピアノは入庫した。ピアノの裏は、長年のホコリが積もり積もっている。昭和60年製のピアノで当時の商品ラインナップからして同じU1タイプのピアノではとっても高価なでおしゃれなピアノです。しかし何ともごげ臭いと云うかタバコのヤニの匂いが倉庫中に漂っている。外は、キンモクセイの良い香りが漂っているのに弊社の倉庫ではヤニの匂いが漂っている。あかん!凄い匂いだ!と慌てて濡れ雑巾で拭くと茶色いヤニがべったりとふき取れる。掃除機で積もり積もったホコリを吸い取ってまたまた雑巾がけしてを何度も繰り返した。綺麗にすると今でも良い色をしているが何かくすんでベタベタしているので翌週にたっぷり時間を掛けて綺麗にする事にした。アクション関係は、バットスプリングコード(バットフレンジコード)がダメになっていた。調律記録では、バットコード交換と記載されていたが3か所だけの交換であった。この機に全て綺麗に貼り替えをする事に。10月らしからぬ寒い日に作業を始めて数日掛けて綺麗に仕上げた。鍵盤調整に整調・整音・調律も何度か繰り返したので落ち着いた良い音がしている。37年前のピアノでしたが立派な良いピアノに蘇りこのまま、ずっと使えます。日本が世界に誇るYAMAHAのアップライトピアノは、頑強な造りと値段、その狂いの無さを考えると正に世界一のピアノだなと調律師として改めて感じる。

真ん中のペダルがグラグラして突き上げ棒もゴムも傷んでる。

ペダルBOXを開けると真ん中の軸が外されて無かった。

上が古い軸  下が交換する軸。 随分太さ長さが違う

全て交換して磨き上げて修理完了

それに並行してちょっと不可思議な事に出くわした。お客様の譲り受けたグランドピアノの調律の依頼。早速、調律にお伺いすると26年前の日本製のグランドピアノ。調律記録を見ると購入して毎年ずっと調律されていて私の知る調律師2人がお伺いしていて最後の調律が7年前。その2年後、5年前に別の調律師が一度調律をやっている。かなり弾き込まれたピアノで音はぐちゃぐちゃに狂っている。湿気の多い所にあった様でピッチは、さして下がっていない。それより何かペダルがおかしい?ソステヌートペダルがブランブランしている。え~~~!左右のペダルの踏みしろもおかしい?運送屋さんが取り付け違いをしたかな?と思いペダルを外してみたがつけ違いでは無い。ペダルBOXを開けて見るとなんと真ん中のペダル(ソステヌート)の軸が無い???何か壊れたなら軸がBOX内にあるはずだが無いって???お客様に「理由は分かりませんがペダルの軸が無いんですよ(笑)。これは、BOXを開けないと無くならないので不思議ですね~どうしたんだか分かりません。とりあえず今日調律を終えますがペダルはこのままで早急に部品を取り寄せて後日修理します。」と言って了承して貰ったと言うかこれはしょうがありません。早速、メーカに型番と製造番号を伝えたが生産台数の少ないピアノなので同じ部品を用意するのには「用意出来るかどうかやってみないと分からないですね~。ちょっとお時間が掛かるかもしれませんねぇ~。」とやる気があるのか無いのか、やんわりと断られた感で要領を得なく正確な返答が得られなかったので「このままじゃお客さまも困るから、とりあえず急いで探してくれ!」とほんの少しだけ厳しく言って電話を切った。次に取引先の部品屋さんに電話をすると「以前は、軸だけあったのですが今は無いんですよね~ペダルにくっついているからペダルを一台分購入するしかありません」と言われた。それだったら形はどうあれメーカーから新しいペダルを入れた方が安い。今度は、別の部品屋さんに電話を入れると「少しなら在庫がありますよ~」「え~~ある!頂戴頂戴!」と言うと「ちょっと確認しますね。」としばらく待たされた。「あっこれ太いなぁ~着くかなぁ~合わないかもしれませんねぇ~」「グランドピアノのペダル軸なんでしょ?」「はい!」私は「じゃ~それ3本送って、ついでにペダル軸受けも1台分6個送ってよ。ところでいくらするの?」と聞くと「いや~いくらなんでしょう(笑)?。」「じゃ~適当に値段付けて早急に送って!」と言って早急に送られてきた。早速。お客様宅からペダルを引き取って来て分解すると色んな事が分かったというか想像できた。恐らくかなり弾かれるお客様よりダンパーペダルの不良を告げられて調律師がペダルBOXを開けた。その時にダンパーペダルの軸に何らかの異常があった。恐らく軸が曲がっていて軸受けの穴が大きくなってガタが来て雑音がすると云った状態だったのでしょう。そこでダンパーペダルの軸をハンマーで叩いて抜いてあまり使わない真ん中のソステヌートペダルの軸をダンパーペダルに入れ替えて修理をした。抜いた軸は使い物にならない状態に変形してしまったので修理出来ずにソステヌートペダルは使えない状態のままBOXを閉じた。という事だったと思う。それはそれで良いですが修理が完了しないまま放置というのはちょっと頂けないなぁ~と同業者として腹立たしい思いが込み上げた。案の定修理したダンパーペダルの軸は、ハンマーで叩いて叩いて入れたのでしょう頭が歪になっているしペダルの横が傷だらけだ。随分力任せにやったな!「しょうがないなぁ~!可愛そうにおじさんが綺麗に修理してあげるからね~。」と言って新しい軸を手に取ると全然大きさが違う!いやいやこんな大きさ太さ違うんだ~!よしと本腰入れて3本全部新しい頑丈な軸に入れ替えて軸受けも全部交換する事にした。ペダルも軸受けも当然加工が必要ですがそんな事は大した事では無くちょいちょいと終えた。ついでに擦り減って厚みの無いフェルト類も新調した。この作業をお客様宅でやるとなると上手く行かないだろうなぁ~と言っても持ち帰ってもそれなりも工具が無いと上手く行かないだろうと色々想像しながらそれぞれに事情があるのだろうと安易に同業者に対し腹を立てた事を戒めた。ついでに塩害でナットが錆び付いていた突き上げ棒もメーカーから仕入れて新品に交換した。「どうよ完璧だろう!」と自慢げにピアノに微笑みかけて仕上がりに自己満足した。

 

 

 

 

2022年暑い暑いお盆の出来事

2022年、ことしの夏も異常気象。ここ数年必ず聞く言葉が線状降水帯である。これが毎年日本の各地で発生して今年は東北地方にも甚大な被害をもたらした。日本各地で災害に見舞われた皆様には、心よりお見舞い申し上げます。それにしても近年の夏は異常で35℃から38℃が連日続いて30℃は、ちょっと涼しいになって来ている。そんな暑い8月のピアノ屋さんは、どう仕事を進めているのか?弊社の8月の様子を記事にしたいと思います。

今となっては、とっても珍しいEASTEINのグランドピアノ

弦・ピンは綺麗に交換されている。

今年は、暑い上にオミクロンBA.5などとコロナウィルスもどんどんバージョンアップして日本全国、猛烈に感染が広がっている。もう3年にもなるコロナと夏の酷暑が予想出来ていたので春辺りからピアノ修理仕事の仕込みを進めていた。というのも尋常で無い暑さは、集中力を欠いて毎日、朝から晩まで何件もの調律メンテナンスをして回るは体力的にとっても厳しい。と言って朝から晩まで作業場で修理仕事だけをやるのも熱中症のリスクがある。年を取ると色んな事に気を回しながら過ごす事になる。といった訳で早々に夏の修理仕事を用意していました。そんな所にとある会場から電話か掛かる。ずっと弊社が管理してきた会場ですが、コロナ騒動で運営会社の方針で内部の業者の総入れ替え。レンタルピアノも何もかもが新しい業者になってピアノも入れ替わった。当然、調律メンテナンスも新しい業者になって、かれこれ1年程経つ。「ご無沙汰しております。○○です。また、調律お願い出来ますか?」聞き覚えのある声でした。「お~ご無沙汰しております(笑)!どうしました?」「転勤で戻って来たんですよ!」「来週に調律お願い出来ますでしょうか?」と言うので「たしか内部の業者が変わってピアノも変わったでしょう。レンタル業者に依頼しないとまずいんじゃない?」と言うと「本来は、そうなんですけどまた、お願いしたいんですが(笑)!」「大丈夫なの?」「はい、大丈夫です!」と言うので私は「ありがとうございます。○○さんの依頼じゃ断れないよね(笑)。」と言って、とっても嬉しくなって日程を決めてお伺いした。以前といっても1年程前までは、中で働く大勢のスタッフ全員が顔見知りで顔パスで勝手によろしくお願いします状態でしたが、もう私を知る受付嬢やスタッフは、誰一人居なくて受付で調律に来ましたと告げてお客様扱いで案内される。と言っても勝手知ったる会場ですが、自然と初めての様に振舞った。以前は、YAMAHAとKAWAIのグランドピアノだったが、茶色の綺麗なグランドピアノになっていて蓋を掛けてみるとEASTEINだった。外装から張弦などオーバーホールしたピアノ。綺麗に塗装されたピアノは、何故か型番に製番などの記載が一切無くなっていたので何年物なのかは判らない。EASTEINですから相当どころかかなり古いピアノだと判断出来るが、手を入れているだけあって見た目も状態も良い。今では、もうほとんど見かける事が無くなったピアノです。私がグランドを3台、アップライトを5台?台数は、ちょっとあやふやだが今でもお客様宅のピアノを管理をしている。それでも、きっと随分多い方だと思う。恐らく、お若い調律師さん達は、一度も触った事が無いという方々が殆どだと思う。早速、調律を始めるとなかなか良いピアノで調子よく作業を進めていくとダンパーの調子が悪い所がいくつか出てきた。夏の冷房・冬の暖房の影響です。以前あったYAMAHAのグランドは冬の暖房の時期にパックリと響板が何か所も割れていた。夏に湿度が高くなると割りも閉じて何処が割れていたのか分からなくなっていた。今後、このピアノもそうなって行くのか?どうなのか?今の所分かりませんがチャッチャとダンパーの修理を済ませて調律を進めていくと○○さんが「ご苦労様です(笑)!」と言って満面の笑顔で会場に入って来た。「お~ご無沙汰です(笑)!いつ帰って来たんですか?いや、転勤でどこに行ってたんですか?」とか何とかしばらく調律の手を休めて思い出話に花を咲かせて、立派になられて帰って来た彼と親交を深めとっても良い気分で作業を終えた。その数日後、また彼から別の会場の仕事依頼の電話が入った。

バットのフレンジコードを綺麗に取り除いた所

新しいコードを貼り終えた所

7月にコロナの影響で2年ぶりになって調律にお伺いしたお客様。奥様がピアノを弾かれるがここの所、ますますピアノが大好きになってもっと良いピアノにしようかどうしようかと相談を受けた。YAMAHAのピアノ、ラッキーな事に当たりピアノで物凄く良い音のするピアノなのです。お客様のご予算など鑑みて真剣に慎重に親身に考えてご提案した。ご実家で長年放置していた時に虫食いの被害にあって内部のフェルトが随分食い荒らされています。私は、アクションのからくりを直して、虫食いにあったフェルトを交換して鍵盤調整をすると音も良くなるし弾き心地がとっても良くなって別のピアノみたいになりますよ。こちらのピアノは、必要以上にお金を掛ける必要が全く無く、必要最低限の作業で十分ですよ。このピアノは、それ以上に何か手を加える必要は全くありませんよ。と伝えると「沢山予算を用意していたのに(笑)。どうしようか梅根さんに相談して決めようと思っていたんです。じゃ~それでお願いします。」と言うので今度は、私が慌てて「今すぐですか?それは弱りましたね・・・修理仕事が詰まってて直ぐには作業場が開かないので8月にどうにかやりますのでちょっと待ってください。後日連絡差し上げます・・・」と言ってお客様宅を後にした。いや~予定外の修理に今お預かりの修理のやりくりに納品するピアノの最終調整などなどやらなければならない仕事の目白押し状態ですがどうにか8月そうそうにアクション・鍵盤を引き取りにお伺いした。修理仕事では、毎度の鍵盤ブッシングクロス交換にバットスプリングコードの交換とアクションからくり直しなどなど手慣れた作業を手際よくと言うより別の仕事と並行して進める方式で手順良く無駄の無い時間工程を組んでエアコンの効いた涼しい部屋で作業を進めた。

木部を傷めない方法で全てのブッシングクロスを取り除いた所

フロント・バランスのブッシングクロスを貼り終え圧着する所

順調に作業が進みトラブルも無く、世間のお盆休みも関係なく作業して予定より早めに仕上がった。お客様にお届けの連絡を入れると「予定より早くに出来たんですね!もうピアノが弾きたくて禁断症状が出てます(笑)」と仰るので、それならばとお盆休みの最中にお届けする事に。お届けする日は、虫の食ったバランス・フロントのパンチングクロスを全て新品に交換して全ピンを磨きあげて鍵盤をセットしてアクションを乗せてナラシ・アガキに鍵盤調整の作業です。エアコンを入れて頂いた涼しいお客様宅で4時間半余り休みなく集中して作業に没頭して出来上がりです。早速、お客様に弾いて頂くと「音が変わったわ!」と驚いた顔をして、ひとしきりピアノを弾かれて違いを実感してとっても満足をして頂いた。僕もお客様の満足そうな表情にただただ根気のいる作業を工面してやり遂げた充実感に見舞われて「完璧だな!俺って天才!」なんて心でつぶやいた。するとお客様が「お支払いを」と言うので、「いやお振込みで・・請求書を」と言って差し出すと「もう用意してますから」と言って手渡された。いや~昨今は、カード決済や振り込みが普通なので現金を渡されると人間懐が厚くなるのに気持ちが軽くなってお盆の大渋滞も全く気にならずに大らかに上機嫌で帰宅した。2022年暑い暑いお盆の出来事でした。