ネズミ害のピアノ

2026年は、新年早々から過乾燥によるトラブルや色んな仕事が舞い込んで満足にお休みも取れずに気が付いたら3月になってしまった。寒かったり雪が降ったりの1月2月も梅に早咲き桜が綺麗に咲き乱れてもう暖かくて気持ちの良い春になって行くが今年の強烈な花粉で目や鼻が大変な事になっている。そして消費税の支払いがあって懐は、もっと大変な事になってしまった。今回は、そんな事とは別の大変な事案など近況を書き記したいと思います。

幸いな事に8カ所少しだけ削られたスタンウェイ

ブライドルチップも少しかじられていた。

昨年から日本各地でクマによる悲惨な被害が報道されている。街中や学校の近く、はたまた自宅の居間でくつろいでいたらクマが入って来て襲われたなど野生動物による恐ろしい事故が毎日の様にニュースを駆け巡った。幸いな事に私の住む鎌倉では、クマと言えばアライグマくらいで切実な事は全くありません。しかし今年に入ってお客様宅で2件の野生動物の被害に遭遇した。それは、ネズミです。お客様より電話が「毎年調律でお世話になっている横浜の○○です。分かりますか?」「はい○○先生もう声で分かりますよ、お世話になっているのは、こちらの方ですよ(笑)!」などとちょっと世間話をして「ピアノなんですけどね、しばらく留守にしていたので弾いて無かったのですが、さっき弾いてみたら鍵盤が上がってこない所が沢山あって弾けないんですよ。一度見て頂けないでしょうか?」との問い合わせにすぐさまお伺いした。先生は、かなりご高齢なのですが昔は、ご自宅にグランドピアノとアップライトピアノがあって演奏活動もかなり活発にされていたピアニストさん。随分前にグランドピアノは、処分されて今は、スタンウェイのアップライトピアノを愛用されている。早速、ピアノを見てみると鍵盤に木くずが散らばってそれが原因で多くの鍵盤の動きに支障をきたした事が直ぐに分かった。「何だろうこの木くず?」よくよく見ると鍵盤が数鍵かじられた跡が。そしてブライドルテープのチップの一部もかじられていた。「○○先生、ねずみが入って中をかじってしまってますよ!」「え~ねずみですか?本当にネズミですか?いや~気持ち悪いわ~」と言って中の様子を見て妙~に納得された。幸いな事にピアノに致命的な損傷は無かったが、かじった形跡は残っている。私は、掃除機を借りて木くずなどを吸い取りネズミの侵入できそうな隙間をふさいで作業を終えた。まぁ~毎日ピアノを弾いて居ればネズミもうるさくて入ってこないのですが後は、先生の方でネズミ駆除の対策をして頂くしかありません。もう一軒は、山の上にお住いのお宅でちょっと被害が深刻で実際に中にネズミが住み着いていたので写真を撮る間もなくてちょっと大騒ぎ状態で掃除に駆除をしました。そちらのお宅は、大型犬を飼っていたのですが一昨年前に亡くなって今は、何も飼っていません。ネズミ害は、その後に侵入した事が自ずと想像できる。あのワンちゃんの貢献度は計り知れず大きかった事がこの事案で浮き彫りになった。この様なネズミ害は、昭和の頃当たり前の様に起きていて新品ピアノには、その対策としてネズミ除けの蓋の付いたペダルが進入路を塞ぐ形になって取り付けてあった。近年そのペダルも姿を消してしまいました。そもそも最近の住宅事情からしてここ30年以上弊社では、ネズミ害に遭遇した事がありません。近年の野生動物の被害は、クマばかりでは無かったなぁ~と痛感させられた、いやちょっと大げさですが久々のネズミ害で私もビックリの2026年のスタートでした。

擦り減ったキャッチャースキン

擦り減った合皮がホコリの様にへばりついている

全ての部品交換が完了して後は、組み込む作業。

組み上がったアクション後は、お客様宅で整調作業

昔は、ピアノと言えば子供のお稽古事でしたが今は、大人の方でピアノが大好きという愛好家の方々が主なお客様になってきている。その変化もあって高価なピアノやグランドピアノが良く売れる。また、購入された後も大切に良く弾かれている。音色の要求も高度になって調律師としてやりがいのあるとても良い時代になったと嬉しく思っている。そんな中、1月に入って直ぐに熟練のピアノ愛好家の方からお電話が「暮れに定期調律にいらしたときに何か擦り減ってしまっているので交換した方が良いと仰ったので思い切ってお願いします。」と電話が入った。その擦り減った何かと云うのは、キャッチャースキンの摩耗で沢山弾かないとここは擦り減らないし交換に至る事はあまりありません。という位に熱心に練習されているお客様です。「1月は、修理場が一杯なので2月の中旬になりますがよろしいでしょうか?」とのやり取りで2月半ば過ぎにピアノアクションを引き取って来た。この修理は、2018年9月の「調律師の地味な仕事」という記事に記載しているが今から8年前に全く同じ修理をしております。以前の記事にも記載しましたがここを交換した経験のある技術者があまり居ないのでまぁ~特殊な修理と言えるかもしれません。ただし、特別な技術が居るという訳ではありません。とにかく面倒臭い作業な訳です。昭和の頃のピアノで合成皮の質が悪くて摩耗する、またベースのバット(取り付けられている部品)が木では無く新建材というかプラスティックなので合皮の接着がボンドが使用されています。よって通常の膠などと違って残った合皮をはぎ取る作業が困難である事と今度は接着には、同じくボンドを使用しなければ上手く取り付けられません。8年ほど前に同じ作業をしているので何の問題も無く作業を進めましたがこれだけ擦り減っているとその擦り減ったカスが機械の各所にへばりついて中々取れない。まぁ~これを綺麗にする作業そしてこれだけ演奏しているとキャッチャースキンだけの擦り減りでは収まらなく当然バット本体のスキンも交換という事になる。そしてどうせならばとブライドルテープの綺麗な新品に交換をしてなおハンマーもファイリングしての作業となるとそれなりの時間が掛かる訳ですが、綺麗に部品交換が出来たアクションを前にどうよ「誰が見ても完璧だろう?」と自慢げにアクションに語りかけて意気揚々と自宅に戻った。自宅に帰ると妻が「調子に乗って仕事ばかりしてお休みしないとまた体を壊してしまいますよ!」と厳しく叱られて意気消沈した。