慌ただしく過ぎ去った4月

2026年ゴールデンウィーク。事前の予報では、連休の天気予報は雨が多くちょっと残念な予報だったが蓋を明けてみると今の所とっても良い天気に恵まれている様だ。ただ昨日の夜は、まるで台風の様な暴風雨で寄せ植えをしている高価な鉢が割れてしまった。何故かこういったときは安い鉢ではなく高い鉢が割れるのは不思議でならない。ところで4月は、仕事に追われ大忙しの上に私の大腸検査に胃カメラ検査などなど検査週間だったのでスケジュールが大幅に遅れってしまってお客様には大変ご迷惑をお掛けしてしまいました。いや未だご迷惑をお掛けしております。この場をお借りして心よりお詫び申し上げます。そんなこんなで儲からないのに大忙しだったのでホームページもアップ出来ずに失礼しました。今回は、そんな4月の様子を書き記したいと思います。

もう40年以上のお付き合いのお客様から電話が「そろそろ調律をお願いしたいのでよろしくお願いします。最近ピアニッシモの表現に気を配って練習しているのですがゆっくり弾くと鍵盤が引っ掛かる感じで上手く表現できないのでその辺の調整もお願いします。」と連絡を頂き直ぐにお伺いする日程を決めて電話を切った。こちらのお客様は、お嬢さんの為に購入したピアノで最初は販売店からの依頼でお伺いし始めてそれ以来ずっと私がお伺いしています。ピアノは、Earl Windsor W-113N フローラピアノ製造のピアノ。エゾ松響板にレスローワイヤーにレンナーフェルト使用のハンマーと当時考えられる最高級部品だけを使ったピアノ業界花盛りの象徴の様なピアノ。当時は、子供がいればお稽古事はピアノと言った具合で夕方の住宅地ではあちらこちらでピアノの音が聞こえてきました。ただ子供が中学生になると大半の子供達はピアノを辞めてしまってだんだんピアノの音が聞こえなくなってきました。こちらのお客様宅も同様でお嬢さんがピアノを辞めてしまって誰も使わなくなった。という所までは大半のご家庭と同じなのですがそこでご主人様が40歳になって初めてピアノを始めた訳です。昔から音楽好きであった訳ですが何より好奇心旺盛でなお行動力に探究心にとまぁ~それ以来ずっと続けられていていくつかのピアノ愛好家達とのサークルに参加されて色んなコンサートホールでの発表会では、とっても上手なショパンを披露されています。

鍵盤のブッシングクロスを取り除いた所熱心に練習されたのでハンマーに弦溝がクッキリ
金属部を磨いたのち、どうせならばとハンマーファイリング
お約束した日にお伺いしてピアノを見てみるとピアニッシモの表現と鍵盤の引っ掛かりは直ぐに原因が分かった。40年余り、熱心にお使いになられたのでダンパースプーンフェルトがすり減って穴があいて鍵盤が引っ掛かるといった症状です。また、鍵盤のフロント・バランスのブッシングクロスも擦り減ってカチカチと隣の鍵盤に触れて音が鳴っている。調律は、40数年毎年私が調律しているので大して問題はありませんが機械の接触部分のフェルトがすり減って弾き手の感性とマッチしなくなっていました。と云うか沢山使用したので接触部分のフェルトがすり減って悪さをしていました。その旨を現物をお見せしながら説明すると時間が掛かっても良いので修理をお願いしますとの事でこの日に鍵盤やアクションをお引き取りして修理する事になりました。

半年以上お預かりしていたピアノこれから手を入れます。この時期は、ご自宅の建て替えで弊社でピアノを保管しているピアノの納品が目白押しで何故か春は、一斉に家が完成して忙しい時に同様の案件が重なって忙しさは増すばかり。上手く段取りを決めて効率よく作業場を回すのに頭を使うが元々回転が悪いので上手く回せるはずが無いがそこは無駄に重ねた年齢と経験。どうにか最善の段取りが組めた様な気になって満足している。まずは、納品が近い預かりピアノの修理と磨き。金属部分は、最近良い薬剤があって短時間で綺麗に仕上がるがアップライトピアノの長蝶番2本は、全て外してネジから磨く。まぁ~それは問題無いのですが一旦ネジを取り外すと次に取り付けた時にネジが効かない。つまり木部のネジ穴が大きくなってしまうので大方のネジ穴に埋木をしてきっちりネジが効く様に修理するのだが数が数だけに結構時間が掛かる。しかしこれを怠ると共鳴につながるので丁寧に一つづつ面倒を見る必要がある。ピアノ調律師の仕事は面倒臭い作業の積み重ねだがこれが綺麗に仕上がるとピアノが喜んでいるだろうと勝手に思い込んだ自己満足とこんな些細な作業ですら達成感と云うか満足度に満たされる。

ダンパースプーンフェルトがすり減っているスプーンの当たる削れた丸い所がタッチの引っ掛かりの原因
新しいフェルトに交換さてお客様より引き取ったアクションは、ダンパースプーンフェルトが見事に擦り減って穴が開いている所もある。ダンパーロットは、40数年の年月分ザラザラとして汚れているので綺麗に研磨しないとこのザラザラでまたフェルトが摩耗してしまう。よって取り外して磨きをかける。次に鍵盤のブッシングクロスは、蒸気で取り外して乾燥させる。ハンマーは、沢山弾いているので変摩耗して弦溝も深くついているのでついでにファイリングしてダンパーを取り外しているのでハンマーの裏側に針を刺しておくと次から次へとアクション引き取り時にしか出来ない事が出て来るがこれをやるとピアノが凄く良くなるので手間を惜しまずに当たり前の様に取り組む。色々と文章にすると面倒臭い作業が次から次と言った感があるがやっている当人は良い状態に仕上がると何とも嬉しいのでどんどん作業が進んで予定の日程より早く作業が終えるのが毎度のパターンです。

やすりで削るこれ全て手作業そんな裏では、YAMAHAピアノの白鍵小口交換(白鍵の上面ではなく正面の四角い所)が3台溜まっている。いずれも5月以降納品ピアノで全てが手作業になる。ほんのちょっと黄ばんでいるだけですが外装や他がピカピカなので何が何でも白くしたいと私が満足する為に交換してます(笑)。この作業は、昔物凄い数の修理をこなして来ました。昔の変色や変形するタイプは、自作の治具で簡単にはぎ取る事が出来ました。しかし今では、古いタイプのピアノは、年式の具合もあって流通が減ってしまったので最近は、何が何でも取り外せないタイプのピアノの時代に入って来ました。即ち年式が少し新しくなって白鍵小口交換は、切断機械を持ってないと出来ない時代になってしまった訳です。そんな感じで一台52鍵かける3台ですから156鍵の小口を機械で切り落として新しいのを貼り156鍵を一本ずつ手やすりで削って形を整えるってやっぱり面倒臭い作業なんでしょう。しかしこの鍵盤を切断機械の治具は私が自作した物でこれが活躍して綺麗に切断されると何とも気分が良い。もうちょっとここを改良しようかな?なんてアイディアも湧くのもそれはそれで楽しくもある。そして何より手作業で削って綺麗に仕上がるともうちょっと売値を高くしてもよかったかな?と思える位にピアノが凛とする。というピアノ胸を張ってる様にすら見える(笑)。この4月は、初旬にコンサートが続いたり定期調律をこなしながら面倒な仕事の目白押しでしたが、忙しい忙しいと口ではボヤキながらも楽しく仕事に取り組んだ。そして今回は、40年以上もお世話になっているお客様のピアノが含まれていた。誰しもが知る超有名企業のエンジニアとして活躍した後、定年して技術支援か何かのボランティアでキャリアを生かして海外に数年滞在されていたと記憶している。その後は、テニスに写真撮影そしてピアノ演奏などなど忙しくされている。仕事してた頃より忙しい(笑)なんて冗談を仰っておられたが、男の定年後の過ごし方として誰しもがお手本にしたくなる様な充実ぶりの陰には、奥様のご理解や協力がおありでしょうが何よりご自身の探求心と行動力なんでしょう。それが高じて健康でお若いという事になり得る様です。私も何時までも探究心を失わずにピアノを通じて知り合った人生の大先輩をお手本に大好きなピアノと戯れて健康で若く居たいと心より感じ入った目の回る4月だった!

 

 

 

 

 

 

 

ネズミ害のピアノ

2026年は、新年早々から過乾燥によるトラブルや色んな仕事が舞い込んで満足にお休みも取れずに気が付いたら3月になってしまった。寒かったり雪が降ったりの1月2月も梅に早咲き桜が綺麗に咲き乱れてもう暖かくて気持ちの良い春になって行くが今年の強烈な花粉で目や鼻が大変な事になっている。そして消費税の支払いがあって懐は、もっと大変な事になってしまった。今回は、そんな事とは別の大変な事案など近況を書き記したいと思います。

幸いな事に8カ所少しだけ削られたスタンウェイ

ブライドルチップも少しかじられていた。

昨年から日本各地でクマによる悲惨な被害が報道されている。街中や学校の近く、はたまた自宅の居間でくつろいでいたらクマが入って来て襲われたなど野生動物による恐ろしい事故が毎日の様にニュースを駆け巡った。幸いな事に私の住む鎌倉では、クマと言えばアライグマくらいで切実な事は全くありません。しかし今年に入ってお客様宅で2件の野生動物の被害に遭遇した。それは、ネズミです。お客様より電話が「毎年調律でお世話になっている横浜の○○です。分かりますか?」「はい○○先生もう声で分かりますよ、お世話になっているのは、こちらの方ですよ(笑)!」などとちょっと世間話をして「ピアノなんですけどね、しばらく留守にしていたので弾いて無かったのですが、さっき弾いてみたら鍵盤が上がってこない所が沢山あって弾けないんですよ。一度見て頂けないでしょうか?」との問い合わせにすぐさまお伺いした。先生は、かなりご高齢なのですが昔は、ご自宅にグランドピアノとアップライトピアノがあって演奏活動もかなり活発にされていたピアニストさん。随分前にグランドピアノは、処分されて今は、スタンウェイのアップライトピアノを愛用されている。早速、ピアノを見てみると鍵盤に木くずが散らばってそれが原因で多くの鍵盤の動きに支障をきたした事が直ぐに分かった。「何だろうこの木くず?」よくよく見ると鍵盤が数鍵かじられた跡が。そしてブライドルテープのチップの一部もかじられていた。「○○先生、ねずみが入って中をかじってしまってますよ!」「え~ねずみですか?本当にネズミですか?いや~気持ち悪いわ~」と言って中の様子を見て妙~に納得された。幸いな事にピアノに致命的な損傷は無かったが、かじった形跡は残っている。私は、掃除機を借りて木くずなどを吸い取りネズミの侵入できそうな隙間をふさいで作業を終えた。まぁ~毎日ピアノを弾いて居ればネズミもうるさくて入ってこないのですが後は、先生の方でネズミ駆除の対策をして頂くしかありません。もう一軒は、山の上にお住いのお宅でちょっと被害が深刻で実際に中にネズミが住み着いていたので写真を撮る間もなくてちょっと大騒ぎ状態で掃除に駆除をしました。そちらのお宅は、大型犬を飼っていたのですが一昨年前に亡くなって今は、何も飼っていません。ネズミ害は、その後に侵入した事が自ずと想像できる。あのワンちゃんの貢献度は計り知れず大きかった事がこの事案で浮き彫りになった。この様なネズミ害は、昭和の頃当たり前の様に起きていて新品ピアノには、その対策としてネズミ除けの蓋の付いたペダルが進入路を塞ぐ形になって取り付けてあった。近年そのペダルも姿を消してしまいました。そもそも最近の住宅事情からしてここ30年以上弊社では、ネズミ害に遭遇した事がありません。近年の野生動物の被害は、クマばかりでは無かったなぁ~と痛感させられた、いやちょっと大げさですが久々のネズミ害で私もビックリの2026年のスタートでした。

擦り減ったキャッチャースキン

擦り減った合皮がホコリの様にへばりついている

全ての部品交換が完了して後は、組み込む作業。

組み上がったアクション後は、お客様宅で整調作業

昔は、ピアノと言えば子供のお稽古事でしたが今は、大人の方でピアノが大好きという愛好家の方々が主なお客様になってきている。その変化もあって高価なピアノやグランドピアノが良く売れる。また、購入された後も大切に良く弾かれている。音色の要求も高度になって調律師としてやりがいのあるとても良い時代になったと嬉しく思っている。そんな中、1月に入って直ぐに熟練のピアノ愛好家の方からお電話が「暮れに定期調律にいらしたときに何か擦り減ってしまっているので交換した方が良いと仰ったので思い切ってお願いします。」と電話が入った。その擦り減った何かと云うのは、キャッチャースキンの摩耗で沢山弾かないとここは擦り減らないし交換に至る事はあまりありません。という位に熱心に練習されているお客様です。「1月は、修理場が一杯なので2月の中旬になりますがよろしいでしょうか?」とのやり取りで2月半ば過ぎにピアノアクションを引き取って来た。この修理は、2018年9月の「調律師の地味な仕事」という記事に記載しているが今から8年前に全く同じ修理をしております。以前の記事にも記載しましたがここを交換した経験のある技術者があまり居ないのでまぁ~特殊な修理と言えるかもしれません。ただし、特別な技術が居るという訳ではありません。とにかく面倒臭い作業な訳です。昭和の頃のピアノで合成皮の質が悪くて摩耗する、またベースのバット(取り付けられている部品)が木では無く新建材というかプラスティックなので合皮の接着がボンドが使用されています。よって通常の膠などと違って残った合皮をはぎ取る作業が困難である事と今度は接着には、同じくボンドを使用しなければ上手く取り付けられません。8年ほど前に同じ作業をしているので何の問題も無く作業を進めましたがこれだけ擦り減っているとその擦り減ったカスが機械の各所にへばりついて中々取れない。まぁ~これを綺麗にする作業そしてこれだけ演奏しているとキャッチャースキンだけの擦り減りでは収まらなく当然バット本体のスキンも交換という事になる。そしてどうせならばとブライドルテープの綺麗な新品に交換をしてなおハンマーもファイリングしての作業となるとそれなりの時間が掛かる訳ですが、綺麗に部品交換が出来たアクションを前にどうよ「誰が見ても完璧だろう?」と自慢げにアクションに語りかけて意気揚々と自宅に戻った。自宅に帰ると妻が「調子に乗って仕事ばかりしてお休みしないとまた体を壊してしまいますよ!」と厳しく叱られて意気消沈した。

 

 

Kamakura piano artistry corporation | Tel : 0467-47-1502

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