1月2月のちょっと嬉しかった事!

2024年2月6日には、鎌倉にも雪が積もり一面冬景色。と思いきやここ数日は、季節外れの暖かさ。いったい近頃の地球はどうなっているんだ何て考えを巡らせても老いぼれ調律師には、気象の事などさっぱりと分からない。しかし、その暖かさに助けられ気持ちよく仕事に取り組めた1月2月の様子やちょっと嬉しかった出来事を書き記したいと思います。

毎年この時期にピアノ調律師のSNSで話題になるのが学校のピアノについてです。大方、卒業式前というか年度末のこの時期に一斉に学校調律が集中する。弊社の場合は、指名調律以外はやらない事にしているがそれでも結構な数になる。現に今年令和6年最初の仕事は、公立小学校の調律からスタートでした。この時期の学校は特に体育館は、寒さとの戦いで全身防寒対策の格好で行くのですが今年は何だかとっても暖かくてそこそこの防寒着で事足りてとっても身動きが楽なので軽快に作業が出来た。特に横浜市は、予算が潤沢にあるのか兎に角ピアノが新しくてとっても良い。しかし如何せん学校ですから扱いが雑でホコリと傷と湿気でコンディションは悪い。ピアノを何時でも良い状態に長く保つには、年に1回の調律では、とても足りない。残念ながら維持管理費には、潤沢な予算は割り当てられない様で本来は、公共事業入札制度で業者を決めると云う一見公正な方法で仕事が発注されるがピアノ調律・保守点検では、入札金額が安くなりすぎて安かろう悪かろう、いや安かろう酷かろうになっているのが現実です。この安かろう酷かろうがこの時期、調律師のSNS上で騒ぎになる訳ですがそろそろネタが尽きたのか毎年同じ人が同じ様な内容のぼやきを繰り返すだけで何ら進展が無いので昨年あたりからトーンが下がり盛り上がりに欠けている(笑)。レベルの高いしっかりした音楽専科の先生がいらっしゃる学校では入札業者では無く弊社の様な専門業者に指名調律を依頼をしてピアノを良い状態に保たれている学校もあります。弊社も毎回一台一台に良い音が奏でられるまで十分に時間を掛けて採算度外視で作業をする。調律師として駆け出しの若い頃は、会社の諸事情もあってそうも言ってらなかったが熟年調律師になった今となれば色んな意味でゆとりやおおらかさが少しだけ身について子供たちの教育の為にいや誰しもがお世話になった学校への恩返しのボランティア精神で取り組んでいます。お陰様で音楽専科の先生達には、とっても喜んで頂けてる・・・・と勝手に思ってます。

そんな中、長年お伺いしている高等学校でちょっとビックリした事があった。今年も依頼を受けてお伺いするとピアノの状態が驚くほど良く近々で誰かが調律やったのかな?と思うくらい狂いも少なく状態が良かった。昨年に音楽専科の先生が転任されて来てピアノの管理方法など色んなお話をしたことを覚えている。元々ファゴット奏者である先生ですからあのデリケートな楽器の取り扱いをされているので楽器に対する神経の使い方が自然と板についていらっしゃる。今年お伺いすると各ピアノには、「ピアノに朝日が当たるのでしっかりカーテンを隅まで閉めてください」などと各ピアノに指示ポスターが貼ってある。どのピアノも丁寧に扱われていてこちらの先生は、きっと生徒達にとても質の高い音楽教育をされているのだろうと想像できた。実際にグランド2台にアップライト1台、合計3台のピアノどれもとっても綺麗でコンデションも良い事が全てを物語っていた。ここの生徒達は、生涯自然と物を大切に扱う大人になるんだろうなぁ~とあのポスターを見て教育の根幹を垣間見た気がした。採算度外視で作業を続けて来た事が報われた様な気がしてとっても嬉しかった。

そんな中、いつもの鎌倉のお寺から調律の依頼が。「いつもお世話になっております。鍵盤の戻りが遅い鍵盤がいくつかあるので急ぎ調律をお願いします。今は、お二人のピアニストが毎月演奏されていますのでもう少し良い状態に出来ないでしょうか?」と「もう完全オーバーホールをしなければどうにもならない位に弾き潰されていますからね~。」すると「大掛かりな修理の予算はありませんので以前言われていた弾き潰れたハンマーを削って綺麗にする方法で良くならないでしょうか?多少であれば予算が掛かっても大丈夫です。」「承知しました、ただ天気の良い日にしか出来ないので日程は、お天気次第で(笑)」と言って日程を決めた。というのも本堂に設置されているピアノですからハンマーを削る作業は、外でやる必要があります。常時観光客から参拝者が出入りされるのであのフェルトの毛羽を本堂に巻き散らすわけには行きません。まぁ~そんな事すると当然の様に罰が当たりそう!そんな志が叶って当日は、晴天でとっても暖かく本堂には、暖房が効いていて極楽の様な快適な環境。

昔、寄贈されたこのピアノは、前の持ち主の時に2度ほどハンマーファイリングをした事が分かる。残念ながらとっても歪に削られている上に弾き潰して打弦点は、中音部で12ミリ位の打弦面に潰れておりこれを丸く削るのは至難の業、かなり慎重に神経を使って削る必要ある。ファイリングの為にアクション(ピアノ機械部分)をお寺の中庭の渡り廊下に設置した。池の向こうには、お堂が見えてその小窓から仏様が見える。何とも言えぬ景色に心が洗われる気がする。暖かい日差しの中、このピアノにとっては、最後のファイリング。慎重にと書き込んだが手慣れた作業なのであっという間に終わった。しかしファイリングは、これからが時間が掛かる。弦合わせに同時発音に整音、整調と暖房の効いた本堂で参拝客や観光客に作業を覗き見られながら黙々と作業を進めた。その昔このお寺で関西のおばちゃん観光客に話しかけられピアノを弾かされた事がありましたが、今回も多くの人がピアノの近くまでいらしたが、誰一人として話しかけられる事はありませんでした。それだけ真剣に集中して見えたのでしょうか?たまたま大阪のおばちゃん達が居なかったのでしょうか?昼から始めた作業も全て終えると6時を大きく回っていた。ピアノは、激変して弾きやすく音色も豊かになり満足のいく仕上がり。暖かく快適な作業も休憩なしの作業とくれば相当に気力体力を消耗する。仕上がり上々のピアノを前にして「案外俺もまだまだ行けそうだな。」何てそんな気になった。これも仏様のご利益なのかな?とっても良い一日だった。