kamakura のすべての投稿

想いの詰まったピアノ。

慌ただしく日々を送っていると今年もあと1月半。齢を重ねる度に一年が早く感じる。子供の頃の一年は、長かったのに。のんびり構えているとあっという間に時が過ぎていくので早め早めに行動を起こす様にと気を引き締めてるつもりですが、どうにも体がついてこない。やっぱり健康第一にのんびり頑張る事にして最近の心に残った出来事を記事にしたいと思います。

7月に教会のグランドピアノのオーバーホールも依頼を受けて急ぎ作業をしましたがようやく今月11月に納品出来ました。私がこのピアノに初めて出会ったのは、13年前。それまでは、今は亡き大先輩のピアノ調律師がずっと管理していました。教会の奏楽者であるピアノ教師より電話が入り「教会の古いピアノを先日調律したのですが全然音が狂っていてどうにも変なのでもうピアノがダメなのか一度見て頂けませんか?」とそんな内容の連絡だったと思います。後日、お伺いしてそのピアノに初めて対面です。早速弾いてみると全体的に音程が悪い。奏楽者の方に「どなたに調律を依頼されていたのですか?」と聞くと「〇〇さんという高齢の調律師さんです。」私の知っている大先輩で技術レベルもしっかりとした方でした。御歳が80近かったはずで既に高音が聞こえにくくなってしまっていたようです。あの立派な先輩でも歳をとるとこうなるのか・・当人に自覚があったのか?調律している時にどんな感覚だったのか?私も歳をとるとこうなるのか?と色んな思いが複雑に心に渦を巻いてとても悲しい気持ちになった事を克明に覚えています。それと同時に残念な状況のピアノが可愛そうになって奏楽者の方に「とりあえず調律をしますね!」と言って作業に取り掛かった。作業を進めるととても古いピアノですが大先輩の管理が良かったのでしょう意外に状態は良い。作業を進めて行くと天井の高い教会の礼拝場に天高く響き渡りとてもこんな古いピアノとは思えない柔らかくきらびやかな良い音が教会の隅々に響き渡った。

13年の月日が経ち昨年、牧師さんより亡くなられた信者の家族の方から教会のピアノを良い状態にする様にと多大な寄付を頂きました。と相談を受けた。早速、予算を聞いて3つの案を提示した。第一案は、予算内で購入出来る新品のグランドピアノ。第二案は、ちょっと予算をオーバーするが誰もが欲しがる高級グランドピアノ。第三案が今のピアノを完全オーバーホールして新品の様に仕上げるでした。弊社では、どれでも良いのですが、きっと第一案に落ち着くだろうな?と思っていました。中々連絡も無くどうなっているのかちょっと心配になった。今年の2月に教会の奏楽者の先生より「教会の話し合いの席に出席して内容を説明して欲しいと牧師さんが言っていますがよろしいですか?」と電話が入る。後日、会議に出席すると10名位だったでしょうか教会関係者に囲まれてピアノの説明をした。その場の話の成り行きでは、折角だから皆でピアノ選定に掛川に出向き工場見学もしましょうと決して盛り上がりませんでしたが、話の成り行きは第一案に向っていたように感じました。その後、何の連絡も無くまたまたちょっと不安になって来てようやく6月に教会の奏楽者の先生から「オーバーホールをお願いしたいので梅根さんに連絡をしてくださいと牧師さんに言われました。」と連絡が入る。「オーバーホールになったのですか?」と聞くと「話し合いを重ねると新品にした場合には、あのピアノはどうなるの?などと色んな意見が寄せられるので中々決まらずに今になってしまいました。」とようやく方向が決まり7月にピアノを引き取り代わりのグランドピアノをお貸しして今月仕上がったピアノを収めた次第です。

ピアニスト 田近 香子ピアニスト 山口 真広

外装から細部に渡る部品の交換と調整を重ねた新品の様に生まれ変わったピアノに牧師さんも教会の方々も喜んで頂けました。弊社の保管倉庫で1月半に渡りピアニストの田近香子さんや山口真広さんに協力を得て弾き込みをお願いしては、調整をするを繰り返して良い音に仕上げました。納品して調律を終えて弾いてみるとやさしくきらびやかなで澄んだ太い音が光を放ちながら教会の天井に登るように響き渡る様子が目に見えた気がした。あ~良く仕上がったなと嬉しくなった。すると牧師さんが1枚の紙を私に差し出して「教会の昔の月報にこのピアノの事が少し記載されていたのでもしよろしかったら読んでみてください」と言って手渡された。帰社して早速読んでみるとあのピアノは、信者であるピアノ教師姉妹が使用していたピアノを教会にささげられたものであると記載されていた。戦時下の厳しい時代の中で練習をし続け上達をした姉妹に教会に赴任した宣教師から「あなた方は、上手だが一方的で征服するという姿勢が感じられる。調和を保ち愛へと高められ、遂には神に至るものであるように」と衝撃的な事を言われた。その言葉が彼女達の生涯に活きて後に確かな芯の優しさに包まれた礼拝奏楽と聖歌隊指導にあたった。また、礼拝堂のピアノを視る度に姉妹の信仰の良き香りを感じる。なんと清々しい人生だったことか。と締めくくられていた。これを読んで、なかなか買換えかオーバーホールか決まらず色んな意見が寄せられたというのも今思えば十分頷ける。当然の事です安直に買換えを進めた事を心で恥じた。その様な想いの詰まったピアノのオーバーホールをする事が出来て色んな意味で心から良かったと思います。また見事に綺麗に仕上がったピアノは、この先何十年もこの場所で綺麗な音を奏で続ける。それを思うと姉妹も喜んでくれている事でしょう。ピアノを視る度に信仰の良き香は、そのままに!でも、そんな事情背景があるのなら最初に言ってくれれば、最初からオーバーホールだったのに(笑)!

 

 

お母さんが使ってたピアノ。

気が付くと10月の後半、思えば今年もあと2か月ちょっと・・慌ただしく過ごしているとあっと言う間。やらなければならない仕事は、まだまだ山積み状態。そんなこんなの近況を今回は、記事にしたいと思います。

ここの所、お客様の実家からご両親が子供の頃使っていたピアノを運んで欲しいと立て続けに依頼を受ける。年間通じてこの様な依頼や相談は、大方春と秋と相場が決まっている。というのも当然春は、新年度のスタートですからお子様がピアノを習い始めるタイミングです。新品のピアノを買おうか中古のピアノにしようか、はたまた電子ピアノにしようかと決めかねてご相談の電話が鳴るといったケースです。ピアノの先生から「こんどピアノを始める新しい生徒さんなんですけど、今使っているのがキーボードなの!それじゃ~練習にならないでしょう・・・ちゃんとしたピアノを用意した方が良いとアドバイスしたらピアノっていくらするんですか?とか電子ピアノじゃダメなんですか?とか色々聞かれちゃったので鎌倉ピアノさんの連絡先を教えておきましたので相談に乗ってあげてくださいね(笑)・・・宜しくお願いしま~す」と言って電話が切れた。その数日後、「○○と申しますけど○○先生にお聞きしてお電話しました。ピアノの事でちょっとお伺いしたいんですけど」と電話が掛かる。「はい、先生から聞いております。お子様がピアノを始められるそうで・・」といった具合の会話からよくよくお話を聞くと先生に相談した後にネットで新品のピアノや電子ピアノの値段そして中古ピアノの相場も良くお調べになってる。お客様のお話を整理すると今の時代新品のピアノで良さそうなものは大層に高価である事と子供が何時までやるのか分からない。ご近所に対しての騒音の問題などなど・・・やっぱり電子ピアノにしようかと思うのだけれど今度は、色んなメーカーや値段に幅が合って何が違ってあんなに値段の差があるのか分からずまたどの程度の電子ピアノを購入したら大丈夫なのか?といった具合なので私は、「ご両親は、子供の頃にピアノは習っていましたか?」と聞くと「私も主人も少しやっていました。いや私より主人の方が長くやってた様です(笑)」「その時使っていたピアノは、ご実家にあるんですか?」と聞くと「ありますよ。でも相当古いしまだ使えるんでしょか?運んでくるのにも相当費用が掛かると聞いていますが?」「ご実家は、どちらですか?」と聞くと「私が和歌山で主人が広島なんです」「そんなに費用が掛からないのでそれを持って来たら如何ですか?あるのに使わないなんて勿体ないですよ!電子ピアノ購入する金額でおつりが来ちゃいますよ(笑)!」と色々とお話と調べて頂くことを伝えて電話を切った。後日、双方のピアノの機種と製造番号の連絡が入った。どちらも35~38年程前のピアノで皆さんのよく知るメーカの立派なピアノだった。

9月も半ば過ぎになってお客様より「私の実家からピアノを運んで頂きたいんですけど」と電話が入る。お話を聞くと夏休みに双方の実家に行ってよくよくピアノを見て来てご主人のピアノは、妹夫婦が欲しいと言って譲らない。奥様のピアノは、お父様がコーラスの音取りに使っていると断られたのですが説得の末ようやく孫が使うんだからと言って渋々承諾を得たそうです。早速、運送の手配をして9月末に和歌山よりピアノがやってきた。ピアノのチェックをするとまぁ~お父様がコーラスの音取りに使ってたピアノなのに半音の半分位音が下がっている。いや~これで音取りじゃ~さぞかし難儀しただろうなぁ~!内部をチェックすると何だか嫌な予感・・・虫食いです。鍵盤を全て外してみるとパンチングクロスは見事に全滅でした。そして案の定バットスプリングコードが劣化して全て切れている。まぁ~これは、予定通りですが永年放置されたピアノに多いのが虫食いです。虫にとって内部は、おいしい餌だらけで使わないから安全で外敵が居ないので安心食べ放題と外食チェーン店状態。直ぐに内部掃除からピッチ上げの調律にフェルト交換からアクションのコード交換などやる事沢山の作業に入る。そうこうしていると福島県からも同様のケースでピアノが運び込まれる。こちらのピアノは、もっと古いがコンディションは、良いが使い過ぎてハンマーの変摩耗が凄いのでハンマーを削ってファイリング作業に調律に整音・整調の手を入れる。もちろんどちらもお届けしたら直ぐにお伺いして設置後の最終調整を兼ねて調律を行います。

「音にまつわる最近の出来事」の記事で教会のグランドピアノをオーバーホールする事を書きましたが9月に一応大方仕上がって今は、最終調整・・・いわば慣らし運転で色んなピアニストに来てもらって練習がてら弾いて貰っては、調律・調整・整音を繰り返して良い音に仕上げている真っ最中です。Jazzピアニストの田近香子(Vakeneko)さんに来てもらう。いつも協力して頂いて弾いてくれています。そして先日は、9月17日の台風の日に開催したコンサートで演奏してくれた山口真広さんが来て練習していきました。その練習演奏を聴きながら僕は、虫食いピアノのピアノアクションを分解してバットスプリングコードの取り換え修理を行う。細かな腰が痛くなる作業ですが、山口さんの演奏で気分良く効率が上がり無事に修理作業を終えた。山口さんは、ちょうど新しいプログラムの譜読み段階という事で来年に演奏予定のプログラムを先に聞くことが出来ました。全般に重々しい曲なのですが彼が弾くとその中に明るい光が射している。私は、「山口さんの音は、明るいね!」と言うと「そうなんです、僕の音は明るい音がするんです。」と私は「この曲は、大方暗く重々しいけれど山口さんが弾くと何か光が一本射すね~!」と伝えると嬉しそうに「そう言って頂けるととても嬉しいです」とはにかんだ顔がとても印象的だった。ピアニストには、色んな人が居るので我々ピアノ調律師も接し方というか関りが難しい。一人ステージでピアノに向かい孤独に耐えながら大勢の期待に応え感動を与える仕事。表舞台の特別な存在です。それに比べるとピアノ調律師は、舞台裏。演奏が上手くいって素晴らしい演奏をするともちろんピアニストの名誉。演奏が上手くいかないと不思議とピアノ調律師のせいになっちゃったりしてまぁ~それがピアノ調律師の仕事なのです。だからという訳ではありませんが私は、出来る事ならば女性ピアニストだけに仕事を選んできました。というのも私のエンターテーメント観点からしてステージで華やぐ女性ピアニストが素晴らしい演奏をして艶やかに存在感を発揮してコンサートが大成功に収まる事を心から願い期待するので細部に渡りよく気が回るのです。しかし男性ピアニストに関しては、何故だか分かりませんが全く気が回らないのです(笑)。ある先輩調律師から「それは、プロ意識に欠けているね!」と言われた事がありますが、私の仕事のスタイルとしてピアノの調整だけでなく本番に至る全てのアプローチまでもが仕事の一環だと考えているので私の様な密着型調律師は、気が回るか否かは、何より重要な事だと思っています。しかし、不思議と山口さんの練習の音を聴いていると良いなぁ~調律したいなぁ~と思ってしまったのです。これには、彼の性格とか総合的な相性とかもあるでしょう。その演奏を聴いて面白い企画が思いついたのでその場で彼に伝えました。山口さんも大乗り気で一頻りその企画の話で盛り上がった。来年、その企画で開催するコンサートが今から楽しみです。また、そのことについては、改めてここで記事にしたいと思いますので是非楽しみにしていてください。そんなこんなで今日は、選挙!季節外れの超大型台風が近づいて外は、大雨です・・・おっと携帯にエリアメール?大雨、防雨風などの警報と高齢者への避難がどうのこうのと書かれている様だけど細かな字で老眼で良く読めない。これじゃ高齢者には、伝わらないだろうなぁ~!いや~台風直撃しちゃうのかなぁ~?ひどくなる前に急いでこれから投票に行ってこよう。いや~外は、既に土砂降りだぁ~!