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厄介なピアノの共鳴

2025年気が付いたらあと12月だけになってしまった。年を重ねると一年が早くて年と共にどんどん加速している様だ。子供の頃の一年は長かったなぁ~なんて懐かしむこと自体が老いたる証拠なんでしょう。そうは言ってもこの歳になるとそれなりに面白い事や知らなかった事など年齢に関係なくワクワクすることも沢山ある。ことピアノに関しては、きっと死ぬまで勉強なんでしょう。苦にならずに取り組めるのは,長年の経験や忍耐が板についたのかな?楽しくありがたく過ごせている。今回は、意外に話題になりにくいピアノの共鳴について書き記したいと思います。

11月の初めにピアノの先生から電話が入る。「ちょっとお願いがあるの私の友人の事なんですけどねピアノを弾くと変な音がするって言うのね。私は、共鳴でしょ?調律師さんに言ったら修理してくれるでしょうに。というと何回も言ったわよ~何年も言い続けてるけど原因が分からないって言うのよ~という訳で行ってくださる~?ちょっと遠いんだけど」と早口でお話になったので「遠いってどちらにお住まいなんですか?」と聞くと「小田原なんです」「いや~全然遠くないですよ沢山お客様いるし先生も沢山いますよ。」と言って行く事に決まった。

お伺いするとレッスン室にグランドピアノとアップライトの2台あって問題の共鳴はグランドピアノの方だった。ピアノ講師の先生がこの音なんですよね~と言って鍵盤を叩くと何処からとなく「ジッジッ」と音がする。人間一度その音を認識するとあの小さく「ジッジッ」と鳴っていた音がやけに大きく聞こえてくる。私は、共鳴だなと直ぐに思い当たる所を触って共鳴の原因を探ろうと奮闘したがこれが見つからない。まぁ~数人の調律師が数年格闘したが見つけられなかったのだからそうおいそれとは見つけられるはずが無いだろうと思っていたが心では「俺に出来ない事はない!」なんて思い上がった気持ちが存在して問題解決の目処が立たないと気持ちだけが焦って色んなネジを締めた。が「ジッジッ」という音が一段と大きくなった気すらした。先生にもう一度鍵盤を優しく弾いてもらって「ジッ」の音の出何処を探すが小さい音だけに色んな所から聞こえてくる。消去法で蝶番・響板の表と裏・駒・など主要部分に共鳴は無い。次にペダルも問題ないのでしょうがなくジャッキでピアノを持ち上げてみたら脚の取り付けナットが緩んで音を発していた。ついでに脚を取り外してキャスターを確認するとキャスターの取り付けネジが緩んでいて一つはネジが完全に効いて無かったので埋木をして修理して締め直しをしたらようやく共鳴が収まった。「お~これだったかぁ~」と問題解決でホットした。「俺って天才!」意気揚々と改めて優しく弾いてみると今度は「チッチッ」と別の音がかすかに聞こえた。「先生、聞こえます?」と聞くと「はっきりと!」と言われて愕然としてど~と疲れが圧し掛かった。今度は、音が変わって音の出何処が変わって天井からなっている様に感じた。私は「いや、これはピアノじゃないなぁ~と心で思って」優しくピアノを弾きながら天井を見回したが床からも壁からも聞こえてくる気がして「あ~完全に音に飲まれちゃったなぁ~」と思い先生に「とりあえず調律をしますから」と言って調律作業に取り掛かった。

アップライトピアノとグランドピアノ2台の調律はそんな大きな問題は無くチャンチャンと終えて改めて共鳴を確認すると「チッチッ」と音がしている。調律をして周波数が変わると収まったりもするのだが全く変わらず憎々しく「チッチッ」と鳴っている。先生がちょっと休憩なさってと言ってお茶を入れてくださったのでちょっと耳を休めるために休憩がてら先生と雑談をするとこの共鳴が気になってずっとお願いしていた調律師との仲がギクシャクしてしまいここの所、毎年違う調律師が来て共鳴は収まらずずっと我慢が続いているとの事でした。そう言われてプレッシャーを掛けられて「ジッジッがチッチッに小さな音に変わりましたが、もうちょっと頑張って原因を探りますので先生ももう少しの時間協力してもらって良いですか?」と言って先生に弾いて貰ってしばらくすると、どうやら壁のコンセントの中から音がしている様な気がした。早速コンセントのプレートを外して中を見るとプラスのネジが2本止まっていて上のネジが大きく緩んでいたのできっちりと締め付けると何故か「チッチッチッ」が止まった。「あ~これだったのか~ピアノの脚とキャスターとコンセントの中と3つが鳴っていた事になりますね~(笑)!」原因が偶然の様に解決して肩の力がす~と抜けた。先生は、弱く強く何度となく弾いて確認をして最後ににっこりと「共鳴が消えたわ~(笑)。ありがとうございます。何年我慢したのかしら~嬉しい!」と言ってとっても喜んで頂いた。ピアノ調律師の仕事で結構厄介な事がこの共鳴です。一人では作業しずらいので誰かに弾いて貰ってという作業が一番効率的です。昔は、ピアノライトの電球のフィラメントからシャンシャンと音がしたりリビングのシャンデリアの金具が鳴ったり昔アップライトピアノでよく出くわしたのが壁から音がするケース。今ではめっきりありませんが昔の家の適当に立て付けられた壁板からは低い鈍い共鳴がしたり天井の廻り縁から共鳴が出たりとピアノ本体以外から共鳴しているケースは多々あります。まぁ~昔に比べて今の住宅は綺麗に作られているのでその様な共鳴もめっきり減りましたがもしかしたらピアノ調律師にとって嫌なトラブルのダントツ一位が共鳴じゃなかな?と思う。こればかりはケースバイケースでマニュアルに従った対処法が通用しないので技術とは違った経験が物を云う事案。しかもお客様の要求は完全に音が消える事ですからして完璧に対処しなければ収まりの付かない厳しい仕事という事になります。共鳴は、私もいつ何時でも今回の様に対処できると言い切れない難しさがありますが、今回の様に色んな調律師が対処できなかったのに上手く原因を見つけて対処出来た時の喜びはとっても大きい!まぁ~そんな事で良い大人が一喜一憂する訳ですからピアノ調律師の世界は、究極のアナログ。だから面白いんですよ!

 

2025年9月の様子!

2025年9月も残りわずか。命の危険を感じる様な暑さもお彼岸に入った途端、朝晩の気温が下がった。暑さ寒さも彼岸までと昔の人の言い伝えに改めて本当だなと感心する。この9月は、プライベートで大忙しの中、色んな役職の当番や秋の芸術に向けての打ち合わせなど重なって大忙しだったので今回は、手短に9月の様子を書き記したいと思います。

この赤いフェルトも昭和のなごりかな?

ピアノ調律の仕事をしていると、当然ですが毎月新たなお客様との出会いに恵まれる。お客様の紹介だったりホームページを読んでの申し込みだったりピアノの先生の紹介だったりと誠にありがたい話です。また、新たな出会いの数だけ新たなピアノに出会う訳ですからこれが中々面白い。今月9月もご紹介で長年放置したまま使っていないピアノの調律の依頼を受けた。社会人になってまたピアノを習い始めたので子供の頃に使っていたピアノをちゃんと調律したいとの事でした。ここでは、お客様の承諾を得てませんのでメーカー名やブランド名は伏せておきますが、昭和59年製造のピアノで生産台数や規模で中堅よりちょっと下のメーカー、中部関西で多店舗展開していた大手販売店からオーダーで製造されたピアノでした。お客様に聞くとご両親の転勤で関西在住の時にピアノを購入したそうです。その頃は、今と違って子供の数が多いのでピアノもまだまだ売れていた頃で業界的に多少陰りが見えて来たと云えども一月60台以上売っていた販売店を数店知っている。今では考えられない時代というか今考えると子供が居れば皆ピアノと言うのはおかしな時代だったとも言える。そんな時代に生まれたピアノとは、大方30数メーカーがしのぎを削って300以上のブランドを生産していた訳ですから色んなピアノがあって私も知らないピアノが沢山ある訳です。ですから未だに新たなピアノに出会う事が楽しみと言うか調律師として面白い訳です。今回は、そこそこ知れた販売台数的に中堅よりちょっと下のメーカーのピアノで私も数台このメーカーのピアノは管理した事がありましたが、腑に落ちないちょっとした違いを見つけてクスッと笑えてしまった。低音弦のフェルトですが通常共鳴を抑えるためにフェルトで止音するのですが、規格に合わないフェルトが貼られていて止音の役を全く果たしていない。製造時や出荷調律に分かるのに・・・これも当時の事情を知る我々には理解出来る悩ましい事情です。まぁ~色んな意味でピアノは奥深く興味深いなとこのピアノを調律しながら昭和の楽器業界花盛りの時代に気持ちはタイムスリップした。

鍵盤漂白が終えた所

作業に没頭するとついつい写真撮影を忘れてしまう。

綺麗になった鍵盤。

先だって日本ピアノ調律師協会の研修会が開かれた折に大先輩の講師の方がコンサート調律よりも一般家庭の調律の方が色んな意味で難しいかもしれないと語っていた。これは、熟練の技術と沢山の経験を持ち合わせた技術者しか語れない領域ですが、言わんとする意味が良く解る。コンサート調律でピアニストの要求に即座に応えるという事は生半可な技術ではお役に立てない事は皆様もご承知の事と存じますが一般家庭のピアノは、通常一年に一回の調律。春夏秋冬温度湿度の変化に冷暖房に対応して一年間弾き手に違和感なく使って頂く。即ち一年持たせる調律というのは、意外に技術が要求される仕事なのです。そんな折に今年初めて色んな方と事情があって紹介でお伺いしたピアノの先生宅での事です。半年前に調律したにしては音が狂っていて何より機械部分のホコリが凄くて一度も掃除をされた形跡というかアクションを引き出した事がないのかな?と思える状態。掃除機を借りて延々掃除掃除でようやく綺麗になった物のハンマーの消耗が凄く鍵盤ブッシングクロスも摩耗してちょっと可哀そうな状態。摩耗部分は、改めて作業する事にしてとりあえず最善を尽くして調律調整をして作業を終え先生に確認して頂くと触った瞬間に「あ~全然違う!今までの調律師さんは調律だけする人だったのね!こんなに変わるんだ~!」と大喜びされた。その様子を眺めているととっても感性が敏感で調律がうんぬんより先生自身が上手で綺麗な音を奏でていた。その後、2か月経つか経たないかに携帯に先生から電話が入る。「この前調律に来た時にShigeruKawaiの在庫があると仰っていたけどそれが気になって気になって一度弾きに行って良いですか?」との電話で2台ピアノを並べて2台ピアノのレッスンをしたいとの事でした。このホームページにも記事にしましたが昨年入庫したピアノです。その後、このホームページを見て数人からお問い合わせ頂きましたがお住まいが地方のかたや関東でもちょっと遠い方で大変失礼ながら電話でお断りさせて頂きました。このピアノは、お届けした後も私が管理出来てこの人に使って頂きたいと思う人にお譲りするピアノです。先週、弊社の倉庫に弾きにいらして大層気に入られて私も是非この方に使って頂きたいと思い願ったのでお届けする事が決まりました。弊社は、お届けが決まるとピアノの最終調整に何日も掛けます。最近のグランドピアノは鍵盤が人口象牙になっているので弊社では、お届けする前に漂白研磨して綺麗に仕上げる作業から始めます。それから別れを惜しんで丁寧に細部に渡り調整を繰り返し、全てを完璧に手抜かりなくまるで娘を嫁がせる親の心境。気に入った方に嫁ぐのだから嬉しくもあり寂しくもありだが今度は、大切に沢山弾いて頂けるのでピアノにとっては何よりうれしい事です。今回も良い方とのご縁に恵まれてこれからは、メンテナンスで長いつながりが始まります。私も随分歳を重ねてしまいましたが健康で長生きしなくちゃと調律師として新たな気概が生まれた気がします。良い人たちに恵まれてピアノに囲まれて感謝感謝。