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消音ピアノユニット故障!

2022年の秋の鎌倉は、大勢の人で賑わい久々に気持ちの良い季節を堪能出来ている様だ。コンサートやレコーディングの数もコロナ前と同じ感じになって来て、仕事も大忙しになって活気づいて来ている。しかし、ただでさえコロナ過でスケジュールが遅れて気持ちばかりが焦っている所に新型コロナウィルス第8波への警戒をとマスコミが騒いでいる。一体いつまで続くのか第9波とか第10波とずっと言い続けるんだろうなぁ~と他人事の様にコロナ騒動に慣れてしまった感じがする。今回は、コロナ騒動で少なからず影響を受けている消音ピアノユニットにまつわる出来事を記事にしたいと思います。

鍵盤の下の光センサー

光センサー受光部に紙屑などで光がさえぎられると音が出なくなる。

今年5月に「心霊現象のピアノ」という消音ピアノユニット故障の記事をアップしましたがその後、直ぐに別のお客様からも電話が掛かって来た。「消音の装置なんですが、昨日まで普通に使えてたのに今日突然一つの音が出なくなったんです。真ん中のよく使う所なんです。まだ取り付けて2年位しか経ってないのにもう壊れてしまったのでしょうか?来月、演奏会があるんです。大至急、直して頂きたいんですけど!」とかなりご立腹!お伺いしてピアノを見てみないと何が原因なのか分かりませんが、大方この様に突然一つの音が出なくなったなどのケースは、お客様にとっては大問題ですが大した事無くお伺いすればその場で直せる事が殆どです。お急ぎの様なのですぐさまお伺いするとまだまだ不機嫌が収まっておらずにかなり棘のある感じ(笑)!良かれと思って無理して直ぐにお伺いしたのがかえって仇となった感じ(笑)ですがお客様商売ですから何よりピアノが直って機嫌が直って頂ければと とりあえずピアノに向かう。「これ、これ、この音なのよ!」と乱暴にミの音を叩いて故障個所を教えてくれた。私は、「分かりました。じゃ~見てみましょう!」と言ってピアノの上に乱雑に山の様に積まれた楽譜を下ろしながら何となく原因が分かったような気がした。というのも私が念入りに正確に取り付けをして定期調律の時にも全て点検と掃除をしているピアノなのでそうそうめったな事は無いと確信がありました。ミのあたりの鍵盤をそっと外すと鍵盤下の光センサーの所に楽譜の紙屑が沢山散らばって入り込んでいた。「原因は、これですね。楽譜の紙屑がこんなに!」と言ってお客様に見せた。「あら、こんなにゴミが入っていたの!わたしだわ、でもこれが原因なんですか?」そこで掃除機を借りて綺麗に掃除して修理完了。ちょっとバツの悪そうな感じで見送られてそうそうにお客様宅を後にした。その夜、またそのお客様から電話が入った。えっ何事かな?と思い電話に出ると丁寧な落ち着いた感じで「今日は、直ぐに着て頂いてありがとうございました。」「どうですか、問題なく使えてますか?」と聞き返すと「はい、大丈夫です。実は、あの後、主人に物凄く叱られたんです。失礼にもほどがあるって。本当に申し訳ございませんでした。」「いえいえ。直ぐに直って良かったです(笑)」「本当に失礼しました。これに懲りずに今後ともよろしくお願いいたします。」「いえいえ、こちらこそよろしくお願い致します。また、何かございましたら遠慮なくご連絡ください。演奏会頑張ってください」と言って電話を切って気分がスッキリとした。するとその翌日、別のご年配お客様から電話で「梅根さん、あの~消音装置て言うんですか前に付けて貰ったやつが壊れちゃったのかなぁ~?音が出なくなっちゃったのよ~」と一つ問題が解決するとまたか~!

外国製のセンサーで万全では無いが、カバーで覆われている。

これは、国内生産?と聞いているが弊社では取り扱っていません。

エラーコードの一部

「全然音が出ないんですか?全く?」と聞くと「そうよ、まったく」「いつからですか?」「もうねぇ~だいぶ前・・・2週間か3週間かなぁ~だから弱音で弱~く弾いていたんだけど練習に成らなくてまだ取り付けて二年ちょっとじゃない~やっぱり見てもらおうと思って」「見に行きますよ。なんですぐ電話くれないんですか(笑)?」「いや~急がしいだろうと思って、それに私もこれで色々と忙しいのよ(笑)それで今になっちゃったの(笑)見て頂けるかしら?」「もちろんですよ」と言ってお伺いする日を決めてピアノの状態を詳しく聞くと電源は、ちゃんと入るんだけどヘッドホーンでもスピーカーでもどちらも全く音が出ないとの事。ちょっと悪い予感がするが予備のケーブルなど万全な準備をしてお伺いする事にした。お伺いしてピアノをチェックすると全く音出ないと云うかシステムが立ち上がらない。ケーブルを新調して試すがうんともすんとも言わないおかしいなぁ~?すると見た事の無いエラーコードが出た。いやいやこのエラーコードは何だろう?その場でメーカーに電話を入れると受付時間が終了していた。お客様に受付時間外なので明日メーカーにエラーコードの問い合わせをして対策をしますのでちょっと待っててもらって良いですか?「いいわよ!もう2~3週間音が出ないんだから今更ねぇ~(笑)」と言って頂いて「音源BOXかセンサーか後日引き取って修理に出すことになると思います。ただ、コロナ過で修理が3か月掛かるんですよ」「3か月?それは随分かかるわねぇ~。まぁいいわ、よろしくお願いしますね」と言われてお客様宅を後にした。翌日、メーカーに電話をすると定休日。次の日にようやく電話がつながって表示のエラーコードEE2 FE2は、センサー異常との事で早速引き取ってセンサーを送ることにしたが、やはり3か月掛かるとの返答であった。前回の心霊現象のピアノの場合も丁度3か月経って代替え部品が送られて来た。原因は、鍵盤の隙間から飲み物か何かの水がセンサーに落ちて濡れた事による故障でした。報告書は、丁寧な写真で故障個所が確認できた。JAZZピアニストでスタンウェイのグランドも持って居るのでアップライトが3か月使えなくてもどうにかなりましたが、今回のお客様は、消音装置が3か月無いとピアノを続けられそうにない感じがしたので中古ではあるが古いテクニクスのユニットに付け替えて使えるようにしてあげた。「これで練習出来るわねぇ~うれしいわぁ~親切にありがとう。わたし、これでも良いわ(笑)。いやこれの方が良いかなぁ~(笑)」と嬉しそうな顔で二人で大笑いしながら「まぁ~これはとっても古いので修理が効かないからユニットが返送されるまで壊しても良いから使っててください(笑)」と言ってとっても気分よくお客様宅を後にした。3カ月経って代替え部品が送られて来た。原因は、やはり水の侵入だった。大方のお客様は、覚えのない事だと思いますがちょっと手が濡れていたとか洋服に水滴が付いていたとか思いも寄らない所で鍵盤の間に水が入り込んだり物やホコリが入り込んだりします。初期のテクニクスのユニットは、鍵盤下センサー全体がビニールカバーで覆われて水やホコリへの配慮がありましたがその後コストダウンなのか配慮が亡くなって剝き出しになってしまいました。今では、外国製で配慮がなされている商品もあります。もちろん、YAMAHAやKAWAIの最新商品はセンサーの方式が進化して故障が起きにくく十分に配慮されている。来年あたりに半導体不足で生産を中止しているKORGが新製品を出して来る予定?メーカーの担当者は、予定は未定です。と言ってるがどう進化して配慮がなされているのか一日も早い新製品の発売を望んでいる。令和になってコロナウィルスが世界中を震撼させて4年。病気への恐怖や経済への打撃は計り知れない。友人が自動車を買い替えようとしたら半導体不足の影響で納車まで2年と言われたらしい。デジタルピアノも機種を整理して生産しても品薄状態。ピアノも機種によるが半年から10カ月待ち。ピアノは半導体関係無いのにどうして?と思うがピアノに関しては、大量生産大量販売の安価な製品の経済活動は、終焉を迎えて品質の高い高価なピアノと安価な東南アジア製が混在する時代が今しばらく続く事でしょう。なんて町場の調律師風情がさもさも分かったように経済を語るのは大変おこがましいのでこれくらいにして、とにかく明るく元気で楽しく過ごせる日。ただただそれだけが望ましい。

 

 

 

 

 

 

日本が誇った高品質なピアノ。

2022年9月に入った途端に最高気温も下がり過ごしやすくなって来たが6月7月8月の35℃36℃などの異常な暑さの後では、31℃は、過ごしやすい。人間の経験値とは凄いものだなぁ~なんて変な感心を抱いていると台風シーズン。これは、何度も経験して詰まる所、人間は無力だと思いしらされた経験値なんでしょう。昨日から沖縄九州に猛烈な威力の台風が上陸してこれから日本全土を横断するらしい。今日は、大人しく息をひそめて自宅でパソコンに向かっている。今回は、そんな9月の様子を記事にしたいと思います。

3年余り我慢に我慢を強いられていた音楽家の方々がようやく大手を振って活動を始められた。ピアノ講師の先生も遠慮なくコンクールに発表会にと前向きな話が飛び交う。弊社もコンサートにレコーディングに発表会とどんどん予定が埋まっていく。コロナ前と同じとは言えないまでも皆無だった時期を経験するともう大繁盛の様な錯覚に陥る(笑)。これは私の愚かな経験値たる物なのでしょう。しかし、それが錯覚であったとしてもとっても気分が良い(笑)。もうそんなちょっと浮かれた日々を過ごして居るとまた新たな仕事も舞い込んで来たりしてちょっと楽しい。そんな調子に乗っている所に電話が入って「調律をお願いしたいのですが?」「はい!お伺いしますよ。」すると「かなり古いピアノで他所で見積もりをして貰ったら40万掛かると言われたんです。」「ピアノのメーカは、何でしょうか?」と聞くと「即答でYAMAHAです。ただアメリカで購入した物なんです。」「それは、背の高さが低い118cm位の木目のピアノでしょうか?」と聞くと「そんな感じです。」過去に何台も輸出用のYAMAHAを調律した事があるので大して問題は無いだろうと想像したが他社で40万円の見積もり???何だかその中途半端な金額に違和感を抱きながら「とりあえずお伺いしてピアノを見てみましょう。それから考えましょう!」と言って後日お伺いした。

立派なお宅の奥の方の部屋に鎮座しているピアノは、シンプルでとっても素敵なデザインのYAMAHAでした。お客様がアメリカ転勤の時に中古で購入したピアノで年式とか全く記録が残っていないが中の使用部品を見るとそんなに古い物ではありませんでした。と言っても30数年、いや40年近い位前のピアノだと思われるが湿度の関係でアクション(機械)の動きが悪く鍵盤が下がったままの所が沢山ある。音は、半音の半分位、物凄くピッチが下がっているので弾ける状態ではありませんでした。しかし40万の見積もりをひねり出す要因が何一つ見当たらないのでお客様に「そんなにお金を掛けなくても大丈夫ですよ。3万円に消費税、33.000円で今日、とりあえず弾ける状態に出来ます。3~4時間位、お時間掛かりますが・・・お時間は、大丈夫ですか?」と告げると「お願いします。」と即答して頂いて集中して作業に没頭した。コンソールピアノ(背丈の低い,弦長の短い)ですが、そこはさすがYAMAHA、アクション(機械部)の精度は抜群に高く耐久性も抜群修理や整調(調整)もすんなり進む。ピッチ上げの調律も何ら問題なくあっという間にピアノが仕上がった。まぁ~鍵盤調整とかハンマーファイリングや整音などなど、やる所は沢山あるが、まぁ~それは追々お客様のご要望に応じてでとりあえず、きれいな音で普通に弾ける状態になってお客様も大層に喜んで頂いた。やっぱり昔のYAMAHAは、良いなぁ~いい仕事してるなぁ~と改めて日本製品の質の高さに舌を巻いた。

9月の初めにピアノ修理でハンマー交換という作業があるがその真新しいハンマーに適切な角度の穴をあける。私は、この穴あけ作業が特に好きで電動工具と戯れながら道具を使いこなして完璧に綺麗に仕上がった真新しいハンマーの並んだ姿が何とも言えずに好きなのにそんな時に限って携帯電話が鳴る。何時もの友人からなのでちょっと忙しそうに不機嫌に出ると「おっ、今忙しいんだ!でもちょっと良い?今、友達んちに来てるんだけどボロボロのピアノがあって調律やって無いって言うからやってあげてよ!直るでしょ?」と言うので「ボロボロのピアノじゃ~やだよ!あんたが見てボロボロと思うんだったら完全にボロボロだろ。」「友達に凄い調律師が居るからそいつなら何でも直るって言っちゃったよ~(笑)!」「何のピアノなの?」「奥さん曰く、有名なピアノ製作者のピアノとか言ってるよ・・・おっカタカナでディアパソンて書いてある」「カタカナ?」そんなこんなのやり取りで友人のそのまた友人宅にその友人と共に伺った。見ると本当にボロボロのキークロスにカタカナでデイアパソンと書いてある。日本のピアノ史に名工として名高い大橋幡岩氏設計のピアノです。古くてボロボロでアクション修理をしているとピアノの中からボロボロに錆び付いた調律工具のクロスリーマーが出て来た。昔、調律師が作業した時に工具をピアノの中に忘れて行った様です。また、切断したセンターピンのカスが沢山あった。その数からして相当悪戦苦闘したんだなと想像できた。残された工具を手に取りどんな人が持って居たんだろうと想像しながら悪戦苦闘してようやく調律修理を終えた。本来ならばオーバーホールしなきゃならないピアノでしたが案外深い音を奏でてとっても趣のあるピアノだった。さすが大橋幡岩さんのピアノ、毎年ちゃんと調律してたら物凄く良いピアノだったのになぁ~!残念(笑)。それから数日後に初めてのお客様から調律の依頼があった。今まで来て頂いてた調律師が廃業されたとの事で私に依頼があった。お伺いして見るとOHHASHIピアノだった。何でも大橋幡岩さんのご親戚の方だそうで毎年調律された大橋ピアノ。贅を尽くした作りのピアノでとても良い音を奏でてる。何でも昔の物が良いとは言わないが名器と言われるものにはそれなりの理由がある。高品質な材料をふんだんに使い手間を惜しまずに丁寧なつくり。職人の誇りが詰め込まれたピアノは、芸術品です。ちゃんとした調律師が手を入れていただけあって何ら問題なく伸びやかな良い音がする。大橋ピアノは、生産台数が4500~4600台位だったと思うが現存しているピアノが何台あるのかは、分からない。元々の台数が少ない希少なピアノだからこそ、このピアノをきっちりと管理してまた後世に残す様にとピアノが私に訴えかけている様でもある。残りの調律師人生は、質の高い仕事を追求しながら楽しく沢山稼がなきゃ!なんて、年取ってちょっと欲張りかな(笑)。