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第10回鎌倉プチロックフェスティバル

気が付けば、2024年6月も中旬に差し掛かり前回の記事のアップから久く時間が過ぎてしまった。この歳になると仕事に追われる事以外に家族の事など避けられない事柄が続いて慌ただしくいたずらに日にちだけが過ぎ去っていく。今回は、そんな慌ただしかった5月に開催された「第10回鎌倉プチロックフェスティバル」の様子を手短に書き記したいと思います。

会場は、4ステージが設営されてそれぞれに演奏が繰り広げられる。

 

前回は、残念なゴールデンウィークだったと記事にしましたが、今年のゴールデンウィークは、お客様のピアノの修理をするつもりで予定を組んでいた。近年のゴールデンウィークは、兎に角どこもかしこも大渋滞。昔は、都内はガラガラだったのに首都高や湾岸線の高速道路は、コロナ騒動以来大渋滞となっている。また近年流行りのアウトレットの人気で千葉方面アクアラインは、ご存じの通り早朝から大渋滞のありさま。それを予測して連休は、ゆっくりと作業場で修理に取り組むつもりでいました。ところが今年に限って寝込んでしまって予定していた修理仕事は、全く手を付けられなかったという大失態を演じてしまった訳です。ゴールデンウィークが明けると直ぐに修理に取り掛かるが、5月12日の日曜日には「第10回鎌倉プチロックフェスティバル」が開催される。連休明け早々にこのフェスティバルで使用するピアノの調律に調整を全て終えて置かなければならない。前日11日に弊社の倉庫から出荷して翌日早朝に鎌倉海浜公園に設置する。年に2回のペースで使用するピアノですが塩害の影響もあるので毎回キャスターなどの金属部のグリスアップに外装の汚れ落としと意外に時間が掛かる。当然、最優先での作業ですが修理仕事も遅れているのでその辺は、百戦錬磨で手際の良さを発揮してロスの無いタイムスケジュールをこなして並行して作業を進めた。

搬入後の調律が終えた所。

5月11日に運送屋さんが弊社倉庫から鎌倉プチロックフェスティバルのピアノを搬出して行ったがその日の夜、23時過ぎに主催者から携帯に電話が入る。「夜分遅くに申し訳ございません。明日の件でご連絡差し上げました。明日の天気は、大丈夫そうなんですが風がかなり強いと予報が出てまして今日もテントを張ってテストをしてみた物のあまりの強風の場合は、露天のテントが張れないので中止せざるを得ないかもしれません。朝5時の判断でホームページに開催か中止か発表しますので宜しくお願い致します。」との連絡でした。私は「今日既にピアノを運送屋が運び出しちゃったよ!中止となるとピアノを戻す運賃は掛かるけど良いですか?」と聞くと「勿論です!掛かった経費は請求してください。」と何時もの様に何から何までちゃんとしている。「じゃ~大した風じゃない事を祈って明日判断しましょう。」と言って主催者との電話を切ったがこのフェスティバルも早10回目。野外フェスの難しさは、毎回付きまとう。どうにか良い天気に恵まれて大成功であります様にと祈って床に就いた。

10時10分スタートの重太さんの演奏。

あっという間に大勢に囲まれた。

早朝5時に鎌倉プチロックフェスティバルのFacebookを見ると開催と記されていた。「よし!予定通りだな。」会場の風やテントの様子が気になってちょっと早めに会場入りした。8時半前なのに既に大勢のスタッフが忙しそうに働いている。幸いな事に少し曇りだが今の所風は大した事がないようだ!主催者に「おはようございます!何とか大丈夫そうですね。」と尋ねると「おはようございます。今日は、よろしくお願いします。今日も朝一番は、重太さんのショパンですよ!」「お~それは楽しみです(笑)」「風も天気もこのまま行ってくれると良いんですが(笑)。」と元気いっぱいな笑顔を見せてくれた。9時ピッタリに運送屋が会場にピアノを搬入してくれたので早速、調律に入る。朝一番は、ピアニストの重太さんが10時10分から演奏してお昼過ぎには、バケネコさんが演奏してまぁ~朝10時過ぎから夕方4時過ぎまでプロが次々と使用するので音が狂わない様に念入りに調整をする。特に重太さんは、タッチはかなり強烈なので特に念入りに調整を繰り返していると「おはようございます!今日もよろしくお願いします。」と声を掛けられた振り返ると重太さんだった。「今日も朝一と聞いて楽しみにしてました」と伝えると「今日もバッハから入って後はショパンや色々ですね~頑張ります!」とすると彼のファンが既に会場入りして前回もお会いした方が「この調律しているこの音の響きの瞬間が感動的なんだよね~」とか何とかいろいろ褒めて頂いてその感動の理由は良く解らなかったが悪い気はしなかったというか早朝から皆さんお元気だなぁ~!と逆に感心させられた。この類のフェスティバルは、朝早ければ早いほどお客さんは少ない。出来れば昼前位から午後そして夕方は、正にピークを迎える。ただ、重太さんの演奏に関してはきっと彼のファンが押し掛けるのか今回も早朝にもかかわらず大勢の人が押し寄せ鎌倉の海へと響き渡るバッハのプレリュードは、何とも言えぬ厳粛なオーラが辺り一面を漂う。その後は、皆さんからのリクエストなどでショパンの革命。これまたドラマティックな演奏と迫力で観衆を魅了する。何とも言えぬ彼の持ち合わせたオーラが海浜公園の会場を一つにまとめあげている。これは、正に重太さんの持つエンターテイメントでこれがあるのと無いのがプロとアマの違いと言えるでしょう。今回もとっても良い演奏だった。個人的に次回も出演して頂ける事を心から願っている。

ダンパーを全て取り外す。

ダンパーロットとスプーンには、40年の汚れと錆

全て綺麗に磨き上げる。

さぁ~無事に鎌倉プチロックフェスティバルも終えて急ぎ修理を終わらせなければならない。今回の修理は、鍵盤のブッシングクロス(フロント・バランス)の交換とダンパーレバークロスの交換とハンマーファイリングをしてついでにハンマーに針刺し。弱音フェルト交換にペダルのガイドレールのフェルト交換である。どの作業も毎月の様にこなしている作業なので特別な技術が必要な訳では無いがあえて付け加えると経験が豊富だと綺麗に素早く正確に仕上がると言った具合でしょう。手際よく無駄な作業が重ならない様に分散して仕上げる。当然色んな所を分解するのでついでに色んな所も綺麗に磨き上げる訳ですがこれが綺麗になると何とも言えぬテンションが上がって良い仕事してるぞ~て気分になって何より楽しい。きっとピアノも大喜びしているはずです。仕上がりが遅れてお客様にご迷惑が掛かってしまいましたが事情が事情だったのでどうにか許して頂きました(笑)。お届けして設置して蘇ったピアノにお客様もとっても満足して頂きました。何より弾き心地と音の響きがあからさまに変わってピアノがとっても喜んで歌ってる様に思えて個人的に満足のいく良い仕事が出来てとっても嬉しい!本来ならば5月後半のコンサートの話や特別な場所でのコンサートの話など盛り沢山のはずでしたがまだまだ次の仕事が詰まっているのでその辺りは、またのお楽しみにという事で今回は、この辺でご勘弁を~!また、よろしくお願いします。

 

1月2月のちょっと嬉しかった事!

2024年2月6日には、鎌倉にも雪が積もり一面冬景色。と思いきやここ数日は、季節外れの暖かさ。いったい近頃の地球はどうなっているんだ何て考えを巡らせても老いぼれ調律師には、気象の事などさっぱりと分からない。しかし、その暖かさに助けられ気持ちよく仕事に取り組めた1月2月の様子やちょっと嬉しかった出来事を書き記したいと思います。

毎年この時期にピアノ調律師のSNSで話題になるのが学校のピアノについてです。大方、卒業式前というか年度末のこの時期に一斉に学校調律が集中する。弊社の場合は、指名調律以外はやらない事にしているがそれでも結構な数になる。現に今年令和6年最初の仕事は、公立小学校の調律からスタートでした。この時期の学校は特に体育館は、寒さとの戦いで全身防寒対策の格好で行くのですが今年は何だかとっても暖かくてそこそこの防寒着で事足りてとっても身動きが楽なので軽快に作業が出来た。特に横浜市は、予算が潤沢にあるのか兎に角ピアノが新しくてとっても良い。しかし如何せん学校ですから扱いが雑でホコリと傷と湿気でコンディションは悪い。ピアノを何時でも良い状態に長く保つには、年に1回の調律では、とても足りない。残念ながら維持管理費には、潤沢な予算は割り当てられない様で本来は、公共事業入札制度で業者を決めると云う一見公正な方法で仕事が発注されるがピアノ調律・保守点検では、入札金額が安くなりすぎて安かろう悪かろう、いや安かろう酷かろうになっているのが現実です。この安かろう酷かろうがこの時期、調律師のSNS上で騒ぎになる訳ですがそろそろネタが尽きたのか毎年同じ人が同じ様な内容のぼやきを繰り返すだけで何ら進展が無いので昨年あたりからトーンが下がり盛り上がりに欠けている(笑)。レベルの高いしっかりした音楽専科の先生がいらっしゃる学校では入札業者では無く弊社の様な専門業者に指名調律を依頼をしてピアノを良い状態に保たれている学校もあります。弊社も毎回一台一台に良い音が奏でられるまで十分に時間を掛けて採算度外視で作業をする。調律師として駆け出しの若い頃は、会社の諸事情もあってそうも言ってらなかったが熟年調律師になった今となれば色んな意味でゆとりやおおらかさが少しだけ身について子供たちの教育の為にいや誰しもがお世話になった学校への恩返しのボランティア精神で取り組んでいます。お陰様で音楽専科の先生達には、とっても喜んで頂けてる・・・・と勝手に思ってます。

そんな中、長年お伺いしている高等学校でちょっとビックリした事があった。今年も依頼を受けてお伺いするとピアノの状態が驚くほど良く近々で誰かが調律やったのかな?と思うくらい狂いも少なく状態が良かった。昨年に音楽専科の先生が転任されて来てピアノの管理方法など色んなお話をしたことを覚えている。元々ファゴット奏者である先生ですからあのデリケートな楽器の取り扱いをされているので楽器に対する神経の使い方が自然と板についていらっしゃる。今年お伺いすると各ピアノには、「ピアノに朝日が当たるのでしっかりカーテンを隅まで閉めてください」などと各ピアノに指示ポスターが貼ってある。どのピアノも丁寧に扱われていてこちらの先生は、きっと生徒達にとても質の高い音楽教育をされているのだろうと想像できた。実際にグランド2台にアップライト1台、合計3台のピアノどれもとっても綺麗でコンデションも良い事が全てを物語っていた。ここの生徒達は、生涯自然と物を大切に扱う大人になるんだろうなぁ~とあのポスターを見て教育の根幹を垣間見た気がした。採算度外視で作業を続けて来た事が報われた様な気がしてとっても嬉しかった。

そんな中、いつもの鎌倉のお寺から調律の依頼が。「いつもお世話になっております。鍵盤の戻りが遅い鍵盤がいくつかあるので急ぎ調律をお願いします。今は、お二人のピアニストが毎月演奏されていますのでもう少し良い状態に出来ないでしょうか?」と「もう完全オーバーホールをしなければどうにもならない位に弾き潰されていますからね~。」すると「大掛かりな修理の予算はありませんので以前言われていた弾き潰れたハンマーを削って綺麗にする方法で良くならないでしょうか?多少であれば予算が掛かっても大丈夫です。」「承知しました、ただ天気の良い日にしか出来ないので日程は、お天気次第で(笑)」と言って日程を決めた。というのも本堂に設置されているピアノですからハンマーを削る作業は、外でやる必要があります。常時観光客から参拝者が出入りされるのであのフェルトの毛羽を本堂に巻き散らすわけには行きません。まぁ~そんな事すると当然の様に罰が当たりそう!そんな志が叶って当日は、晴天でとっても暖かく本堂には、暖房が効いていて極楽の様な快適な環境。

昔、寄贈されたこのピアノは、前の持ち主の時に2度ほどハンマーファイリングをした事が分かる。残念ながらとっても歪に削られている上に弾き潰して打弦点は、中音部で12ミリ位の打弦面に潰れておりこれを丸く削るのは至難の業、かなり慎重に神経を使って削る必要ある。ファイリングの為にアクション(ピアノ機械部分)をお寺の中庭の渡り廊下に設置した。池の向こうには、お堂が見えてその小窓から仏様が見える。何とも言えぬ景色に心が洗われる気がする。暖かい日差しの中、このピアノにとっては、最後のファイリング。慎重にと書き込んだが手慣れた作業なのであっという間に終わった。しかしファイリングは、これからが時間が掛かる。弦合わせに同時発音に整音、整調と暖房の効いた本堂で参拝客や観光客に作業を覗き見られながら黙々と作業を進めた。その昔このお寺で関西のおばちゃん観光客に話しかけられピアノを弾かされた事がありましたが、今回も多くの人がピアノの近くまでいらしたが、誰一人として話しかけられる事はありませんでした。それだけ真剣に集中して見えたのでしょうか?たまたま大阪のおばちゃん達が居なかったのでしょうか?昼から始めた作業も全て終えると6時を大きく回っていた。ピアノは、激変して弾きやすく音色も豊かになり満足のいく仕上がり。暖かく快適な作業も休憩なしの作業とくれば相当に気力体力を消耗する。仕上がり上々のピアノを前にして「案外俺もまだまだ行けそうだな。」何てそんな気になった。これも仏様のご利益なのかな?とっても良い一日だった。