歳を重ねていくと日が経つのが早くて気付くと10月末です。記事のアップも日々の仕事に追われてすっかりご無沙汰してしまいました。そこで、記事に出来るここ一か月の出来事と昔、仕事先でのショッキングな出来事を記事に書き記したいと思います。
グランドピアノをご使用のお客様より「私が子供の頃に使っていたアップライトがあるんですけど実家を解体する事になったので自宅の持ってこようかと思っているんですけど」と電話が入る。僕は、「ピアノは、どんなピアノですか?」と聞き返すと「親が私の為に買ってくれた知らないメーカーのピアノなんですけど、35年位前のピアノで思い出が詰まっているの。処分するのは忍びなくて(笑)。今は、荷物に囲まれて20年以上は放置していて蓋も開けてない状態なのできっとひどい状態だと思うんですよね~」とそんなやり取りをして取敢えずピアノを引き取って状態を見てそれから考えましょうという事になりました。引き取ってくるとピアノは、FRITZKUHLAという東洋ピアノのアップライトピアノで外装の塗装は、カシューで既に灰色に変色して内部は、破損部分はないが機械が動かない所が多く全調整すれば立派なピアノになるだろうとその旨を報告すると「リビングのグランドの脇に置くのでお任せします。綺麗にしてください!」と言って全塗装する話がまとまった。
無事塗装が終えて内部の最終調整の作業に入るとハンマーと弦の位置が全体に大きくズレている。3本あるアクションボルトもどれも長さが合ってなくてアクションレールがたわんでしまっている。全ての寸法を測りなおして正確な位置にする。このピアノは、ピアノ繁忙期に大手販売店で売られていたピアノで仕上げの雑さが見て取れる。今となっては、慎重に作業を進めると一工程進む事にどんどんピアノが良くなって行くので作業する側は、自分が凄腕になった気持ちになって何だか楽しくてならない!そうなると調子に乗って色んな所もついでに手を入れはじめちゃうのは、技術者の性なのかただ単に僕がマヌケなのか最終的には、時間が掛かってしまって採算が合わなくなってしまう。まず直ぐにお客様にわかる位ピアノが良くなって大喜びして頂く事が肝心と心に呪文を唱えて僕が一番楽しんでる(笑)。調律も終えて整音作業に入るともっともっととピアノが要求してくるので念入りに作業進めて素晴らしい音を奏でてピアノが応えてくれた。見事に呪文が効いた。お届けして新品にしか見えないピアノにお客様も大層に喜ばれて「こんなに良い音だったかしら~凄く良い音しているわ!それに誰が見ても新品ね!親が買ってくれたピアノだから大切にしたいの本当にありがたいわ。ありがとうございます。」とこの上ない言葉を貰った。
並行して県立学校のピアノの修理。これは普通によくある修理ですがバットフレンジコードの交換。これは、何ら大変ではないが一気に短時間で仕上げると腰が痛くなる。調律師の皆さんも数多くこの作業をやった経験があると思いますので交換前と交換後の写真だけ掲載しておきますが、一般のお客様宅のピアノで今後この作業は、まだまだ沢山出てくるでしょうから交換すると歴然と弾きやすくなります。お客様のピアノの性能のフルに発揮する為、大切なピアノという財産を守る為、頑張らなければなりません。
そんな中、以前記事にした自宅ホールでコンサートのVol.2が開催された。今回は、広島県よりわざわざミュージシャンを呼んで関西・信州・もちろん関東のオーディオマニアが集結してコンサート・生録音とオーディオ三昧の盛りだくさんの素晴らしいコンサートだった。新築のホールで物凄い湿度だったので開催日の数日前から24時間冷房に加えて床暖房を入れてどうにか湿度60%前後に下がったがピアノは、たっぷりと湿度を含んでいる。前回は、納品したばかりだったので大きく手を入れる事をしなかったが今回は、オーディオマニアの集まりで3系統のDSD録音でCDにして全国のメンバーに配布すると聞いて、気合を入れて次高音から最高音にかけてボリュームを上げてきらびやかに響くように本腰を入れて作業に没頭した。前日から泊まり込みの関西のマニアの方々や前回もいらしていたマニアの方が作業を終えると「凄い全然変わった!良い音!凄いですね~どうやるとそうなるんですか?」などとさすが皆さん音を聴く耳をお持ちで絶賛されるとついつい有頂天になって気分が良かった。後日フェイスブックにこのコンサートの書き込みがありました。「今まで聞いたピアノの音の中でベスト3に入る素晴らしい音だった」とあるのを見つけて思わず自宅でガッツポーズをとった!コンサート後の食事会でピアニストに何か弾いて頂けないかとのリクエストにピアノソロで聴きなれた2曲が披露された。ピアニストの上質の演奏でホール全体にきらびやかで伸びやかな澄んだ音が響き渡りそこにいた人達の心を揺さぶった。
さて、もう随分前の事でこの歳になっても心に鮮明に焼き付いた出来事。私の人生にも大きく影響した出来事。詳細は、省いて記事にして差し障りが無い様に書き記したいと思います。定期調律にお伺いして作業中にお客様宅の幼稚園児の男の子が庭の塀をよじ登って隣の家に入っていった。お客様に「お子さん、隣の家に入っちゃいましたけど大丈夫なんですか?」と聞くと「隣のお婆ちゃんにお菓子貰いに行くのよ~(笑)」僕は、「ご両親がお住いだったのですね」というと「いえ、違います。お隣さんはお婆さんの一人住まいなので子供が行くと色々とお菓子をくれて可愛がってくれるんですよ(笑)」「へぇ~良いですね~お婆さんもお子さんが来ると嬉しいんでしょうね」とそんな話をしながら調律をしていると子供が塀をよじ登って帰って来た。「隣のお婆ちゃんが死んでるみたい。動かないよ」「え~!どうしよう」その後のやり取りは、ほとんど記憶にないが何だか3人でお隣に様子を見に行くことになりました。玄関に入るとリビングの方から聞こえてくるモーツアルトのシンフォニー。綺麗に手の行き届いた家の玄関から廊下を通り、リビングに入るとそこにソファーに座ってゆったりと目を瞑った穏やかな顔の女性が静かに息をひきとっていた。テーブルには、紅茶と小皿に並べられたクッキーが置いてある。ある日の夕刻の出来事です。僕は、この出来事で不謹慎かもしれませんが人の最後を迎えるとしては、最高の亡くなり方だなと思いました。羨ましく思えました。僕もそうやって最期をむかえたいなぁ~とも本気で思います。多くの人が病気入院で長患いして亡くなる。また事故で若くして亡くなる人、色んな亡くなり方がありますが音楽に包まれて静かに人生の幕を閉じる、なんて素晴らしいんだろう。後日、知った事ですがその方は、資産家で地域や色んなボランティアに積極的に参加されてご活躍されていたそうです。やはり生前に良い事を沢山すると良い最後が迎えられるんだろうな。その様に感じた。私は、自宅に居る時は書斎にステレオを設置していつも音楽を流しています。以前は、クラッシックばかり聴いていましたが、最近は、色んなジャンルを聴くように努力してます。そこで最近感じることは、家に音楽が流れている事って何とも贅沢で豊かな気持ちになります。くだらないテレビ番組やネットにかじりつくのも良いが、ちょっと気分を変えて良い音楽を聴く、流すというのも生活を豊かにする簡単なアイテムだと思います。それには、良いステレオじゃなくてまずは、何を聴くかのソフトの情報だと思います。色んなジャンルを聴いて好きな音楽に出会えると生演奏も聞きたくなるでしょう。そうしたら、沢山コンサートを聴きに出かけると良いですね。そうしたら家でももっと良い音で聴きたくなるでしょう。自宅ホールのオーディオマニアの仲間もそうした豊かな時間の大切さを知っていて皆、良い人生を歩んでいるなと思えます。
先日も鎌倉ピアノ芸術社は、県立養護学校に授業で使う花苗と農器具を寄付してきました。横浜市の公園に高校3年生が授業で植栽をして市民の皆さんにもその公園のお花を見て喜んで頂くなんて想像してだけでも良いなぁ~。そしてその花苗は、僕が毎回用立てていると思うとちょっと良い活動だななんて思って続けております。それもこれも、良い音楽に包まれて良い最後が迎えられるようにと真剣に思い込んで!でも、まだ最後に聞いていたい曲が決まっていない。決まってないという事は、まだ奉仕が足りないという事かな(笑)!