営業自粛の様子NO.1

2020年も6月。今年も半分が過ぎようとしている。コロナウィルス騒動で未だ世界中が混乱している中、日本は緊急事態宣言が解除された。弊社も4月9日から40日余り営業を自粛しました。営業再開は、お客様からのご要望に対応する形で徐々に再開して今では、今まで通りに無事再開しております。それに当たり、弊社もそれ相応に十分な対応をさせて頂きながらお客様との再会を喜び日々ピアノと向き合っております。今回は、休業中の様子や仕事再開の様子を2回に分けて記事にしたいと思います。

 

4月9日から弊社営業自粛が始まると仕事関係の電話やメールの問い合わせは、ピタリと止んだ。唯一、友人達からは「どうしてます?」「どうする?」「どうなるのかな?」などと先行きの見えない不安の声が寄せられた。どうなるのかな?と聞かれてもピアノ調律師に分かる訳も無く「覚悟を決めて休むんだよ!」と励ましにもならない返答に明け暮れた。幸いな事に弊社は、今年、年初からパカパカとピアノが売れてその納品作業や修理仕事、商品の入れ替えと云った業務が有ったのでかなり救われているがピアノ調律業務だけの調律師さん達は、未だ肝を冷やし続けている事だろうと心を痛める。とはいえ弊社も何時までも安泰ではないので「覚悟を決めて休むが、今日できる事は今日やる! 普段忙しくして後回しにしている作業を率先してやる!」と心を奮い立たせて日々を過ごす事にしてそれを実行した。

 

まず最初に手を付けたのが在庫グランドピアノの鍵盤と全クロスの張り替え作業。比較的新しいピアノではあるが以前の所有者が音楽大学の講師であった為に相当に弾き込んでと言うより弾き潰したピアノでオーバーホールを余儀なくされてその作業途中。響板・鉄骨・張弦と外装修理までは終えていたがそれから先が手つかずでいた。張弦をしたので古いアクションの状態で弾いては調律をするを繰り返して弦を伸ばして落ち着かせている最中でした。鍵盤のブッシングクロスを蒸気で176カ所剥がしてから白鍵を全て剥がす。この年式の新しいピアノでは、小口が中々剥がれないので七転八倒しながら老体にムチ打って一所懸命に剥がして木部をパテ埋めをする。白鍵張り替えの為の下準備をしながら、それが乾くと丁寧にパテの修正をして効率良く作業を終えたがその分疲労困憊でヘトヘトになって帰宅した。家に帰るとその様子に妻が「そんなに根詰めてやらなくても今は、自粛で時間はたっぷりあるんだからのんびりやりなさいよ!」と叱られた。

 

その翌日からは、疲れを残さない様に姿勢や休憩を積極的に取り入れて在庫ピアノの調律・整調・整音作業をやりながら修理作業を並行して進めた。広い倉庫と作業場でピアノに囲まれて時間に追われずに作業が出来る幸せを噛みしめた。緊急事態宣言で日本中いや世界中が混乱している最中に誠に不謹慎ではあるが丁寧に手を入れたピアノ達に囲まれると気持ちがマイナスにならずに救われている気がした。4月は、少し作業を早めに切り上げて夕方には、帰宅して散歩をする事を日課とした。私の住む住宅地からは、5つのハイキングコースがありそれぞれを存分に楽しんだ。今まで知ってはいたが行った事の無いコースに足を踏み入れて初めて見る景色に改めて鎌倉の良さを実感して気分爽快にて気持ちのモチベーションを保った。これが、働き盛りの若い世代であったなら不安に駆られてとても平常心では居られない事でしょう。次世代の調律師の心中を察しながらコロナウィルスの1日も早い終息を心から願った4月だった。