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あけましておめでとうございます!

 

あけましておめでとうございます。

昨年は、このホームページを通じてピアノの御購入・調律の依頼・コンサート調律やレコーディング調律と多くのご依頼を頂きまして心より感謝申し上げます。そして私の長い文章に目を通してお問い合わせ頂き多くの方々と新しい出会いとお付き合いが始まりました事、重ねて御礼申し上げます。

昨年の10月から年末ぎりぎりまで大忙しの毎日で何だかバブル時代の再来かと思える様なイベントの多さに目の回る日々でした。どのイベントも満員御礼大盛況と世の中の景気が回復して来た証しだな~と思うのですが私の所までは、もう少し時間が掛かるのかなぁ~?待ち遠しい限りです(笑)。本年もこのホームページを通じて皆様と新たな出会いが生まれます様、「世の中に、本物の音を広めたい」をスローガンにピアノと音にまつわる話をアップしてまいります。本年も鎌倉ピアノ芸術社を何卒、宜しくお願い申し上げます。

鎌倉ピアノ芸術社 代表取締役 梅根恒紀

 

 

想いの詰まったピアノ。

慌ただしく日々を送っていると今年もあと1月半。齢を重ねる度に一年が早く感じる。子供の頃の一年は、長かったのに。のんびり構えているとあっという間に時が過ぎていくので早め早めに行動を起こす様にと気を引き締めてるつもりですが、どうにも体がついてこない。やっぱり健康第一にのんびり頑張る事にして最近の心に残った出来事を記事にしたいと思います。

7月に教会のグランドピアノのオーバーホールも依頼を受けて急ぎ作業をしましたがようやく今月11月に納品出来ました。私がこのピアノに初めて出会ったのは、13年前。それまでは、今は亡き大先輩のピアノ調律師がずっと管理していました。教会の奏楽者であるピアノ教師より電話が入り「教会の古いピアノを先日調律したのですが全然音が狂っていてどうにも変なのでもうピアノがダメなのか一度見て頂けませんか?」とそんな内容の連絡だったと思います。後日、お伺いしてそのピアノに初めて対面です。早速弾いてみると全体的に音程が悪い。奏楽者の方に「どなたに調律を依頼されていたのですか?」と聞くと「〇〇さんという高齢の調律師さんです。」私の知っている大先輩で技術レベルもしっかりとした方でした。御歳が80近かったはずで既に高音が聞こえにくくなってしまっていたようです。あの立派な先輩でも歳をとるとこうなるのか・・当人に自覚があったのか?調律している時にどんな感覚だったのか?私も歳をとるとこうなるのか?と色んな思いが複雑に心に渦を巻いてとても悲しい気持ちになった事を克明に覚えています。それと同時に残念な状況のピアノが可愛そうになって奏楽者の方に「とりあえず調律をしますね!」と言って作業に取り掛かった。作業を進めるととても古いピアノですが大先輩の管理が良かったのでしょう意外に状態は良い。作業を進めて行くと天井の高い教会の礼拝場に天高く響き渡りとてもこんな古いピアノとは思えない柔らかくきらびやかな良い音が教会の隅々に響き渡った。

13年の月日が経ち昨年、牧師さんより亡くなられた信者の家族の方から教会のピアノを良い状態にする様にと多大な寄付を頂きました。と相談を受けた。早速、予算を聞いて3つの案を提示した。第一案は、予算内で購入出来る新品のグランドピアノ。第二案は、ちょっと予算をオーバーするが誰もが欲しがる高級グランドピアノ。第三案が今のピアノを完全オーバーホールして新品の様に仕上げるでした。弊社では、どれでも良いのですが、きっと第一案に落ち着くだろうな?と思っていました。中々連絡も無くどうなっているのかちょっと心配になった。今年の2月に教会の奏楽者の先生より「教会の話し合いの席に出席して内容を説明して欲しいと牧師さんが言っていますがよろしいですか?」と電話が入る。後日、会議に出席すると10名位だったでしょうか教会関係者に囲まれてピアノの説明をした。その場の話の成り行きでは、折角だから皆でピアノ選定に掛川に出向き工場見学もしましょうと決して盛り上がりませんでしたが、話の成り行きは第一案に向っていたように感じました。その後、何の連絡も無くまたまたちょっと不安になって来てようやく6月に教会の奏楽者の先生から「オーバーホールをお願いしたいので梅根さんに連絡をしてくださいと牧師さんに言われました。」と連絡が入る。「オーバーホールになったのですか?」と聞くと「話し合いを重ねると新品にした場合には、あのピアノはどうなるの?などと色んな意見が寄せられるので中々決まらずに今になってしまいました。」とようやく方向が決まり7月にピアノを引き取り代わりのグランドピアノをお貸しして今月仕上がったピアノを収めた次第です。

ピアニスト 田近 香子ピアニスト 山口 真広

外装から細部に渡る部品の交換と調整を重ねた新品の様に生まれ変わったピアノに牧師さんも教会の方々も喜んで頂けました。弊社の保管倉庫で1月半に渡りピアニストの田近香子さんや山口真広さんに協力を得て弾き込みをお願いしては、調整をするを繰り返して良い音に仕上げました。納品して調律を終えて弾いてみるとやさしくきらびやかなで澄んだ太い音が光を放ちながら教会の天井に登るように響き渡る様子が目に見えた気がした。あ~良く仕上がったなと嬉しくなった。すると牧師さんが1枚の紙を私に差し出して「教会の昔の月報にこのピアノの事が少し記載されていたのでもしよろしかったら読んでみてください」と言って手渡された。帰社して早速読んでみるとあのピアノは、信者であるピアノ教師姉妹が使用していたピアノを教会にささげられたものであると記載されていた。戦時下の厳しい時代の中で練習をし続け上達をした姉妹に教会に赴任した宣教師から「あなた方は、上手だが一方的で征服するという姿勢が感じられる。調和を保ち愛へと高められ、遂には神に至るものであるように」と衝撃的な事を言われた。その言葉が彼女達の生涯に活きて後に確かな芯の優しさに包まれた礼拝奏楽と聖歌隊指導にあたった。また、礼拝堂のピアノを視る度に姉妹の信仰の良き香りを感じる。なんと清々しい人生だったことか。と締めくくられていた。これを読んで、なかなか買換えかオーバーホールか決まらず色んな意見が寄せられたというのも今思えば十分頷ける。当然の事です安直に買換えを進めた事を心で恥じた。その様な想いの詰まったピアノのオーバーホールをする事が出来て色んな意味で心から良かったと思います。また見事に綺麗に仕上がったピアノは、この先何十年もこの場所で綺麗な音を奏で続ける。それを思うと姉妹も喜んでくれている事でしょう。ピアノを視る度に信仰の良き香は、そのままに!でも、そんな事情背景があるのなら最初に言ってくれれば、最初からオーバーホールだったのに(笑)!