ピアノ調律を通じて新たに始めた事。

今年の秋は、猛烈な演奏会ラッシュであまりの忙しさに前回のアップから随分間が空いてしまいました。お客様から前回の記事は、専門用語が多すぎて分からなかったとご指摘を受けてちょっと説明不足を反省しております。今回は、ピアノ調律の仕事をしていて今年新たに始めた活動について書き記したいと思います。

東本郷花壇②

 

今年新たに開始した活動は、二つあります。一つは、養護学校に花苗の寄付をする。我社がピアノを搬入して調律をしている神奈川県立養護学校が横浜市より公園の一角を借りて花壇に植栽をしている事を聞きつけた。詳しく話を聞いた所、PTA予算で花苗を買って高校三年生の生徒が年3回授業の一環として作業をしているとの事でした。生徒達が一所懸命植えた苗が綺麗に花咲くなんてちょっと夢があるなぁ~なんて想像して、そして市民が利用する公園がいつでも綺麗なお花が咲いているなんてまたまた想像して、公益性もあってなにかお手伝いしたいなぁ~なんて思ってしまいました。うまい具合に植木の卸業を営む仲間が居るので話も早い。そんな仲間が居るから色々想像しちゃったんだろうけれど、早速年3回の花苗の寄付活動を今年に2月より始める事が出来た。

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そして、もう一つは、老人ホームや介護施設でのコンサートの開催。これは、ピアニストのお弟子さんが経営する老人ホームの調律依頼が事の始まりでした。せっかく調律したんだから皆さんに喜んで頂ける様にコンサートを開きませんかと申し出ると二つ返事で「お願いします、入居者の皆さんも喜びます。」とすぐに話が決まりました。第一回目は、リハビリテーションセンターでコンサート。演奏者は、東京芸術大学の学生3人に依頼して、ご年配の方々の喜ぶ様なプログラムを用意して貰う事に。前日には、施設利用者から寄贈して頂いた長い事ほったらかしにしていたアップライトピアノの調律に行く。芸大生が弾くのに耐えられるレベルにしなければなりませんが翌日に開かれるコンサートを思うと不思議と大変さも無くピアノ調律自体存分に楽しんだ。

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本番では、ご年配の方々が良く知っている曲を中心にプログラムされ涙する場面もあり大成功でした。最後に「赤とんぼ」を皆さんが歌って頂いて音楽の持つ力を改めて実感させられた一日となりました。

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第二回目は、立派なグランドピアノがあるホーム。前回と大方同じ演目にピアノ独奏も曲数を増やしてのミニコンサート。ここでは、前回より数段質の高い演奏と感動を与えられました。伴奏は、ピアノ一台。今回は、グランドピアノ。当たり前の事ですが本番前にちゃんとピアノ調律がされているという事が如何に重要であるかという事です。今回はグランドピアノ、音が豊かである事で歌い手も弾きても気持ち良く演奏出来て会場の隅々まで質の高い演奏が響き渡りお客様の心を鷲掴み。結果、「ブラボー」と大喝采で幕を閉じた。思えば綺麗なお嬢さんが綺麗なドレスを着て若い男の子が正装をして知っている曲を目の前で歌うんだから、もうそれだけでも御高齢者の皆様に喜んで頂けたでしょう。

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先日、知り合いがコンサートを開いたと動画を送ってきた。綺麗なドレスを着た若いピアニストが古典の大曲を演奏するのだが最初の単音からピアノの音が狂っている。動画を聞いていると全体に音が緩んでいて高音部は、キンキンカンカンしている。一番耳につくその単音にくるとピアニストも分かっているらしく段々控えめに弾くようになってしまって残念な演奏になってしまった。すぐに知り合いに電話して「調律しなかったの?」と聞くと「会場で4日前のコンサートで調律が入りますね。と言われたので予算の関係もあって調律は、カットしちゃった。そういえばピアニストもピアノがあんまり良くないと言っていたわ!」その場所は、立派なスタインウェイが入っている所、「それは、ピアノが悪いんじゃなくて音が狂っていたと言っているんだよ」と言うと「え~それって私の責任なのかしら~(笑)!」とあっけらかん。ピアノ調律は、一年に一回と言うのは、一般家庭の場合でコンサートホールでは、演奏会毎にやらなければなりません。この冬場は、暖房とステージ照明の温度で音が下がってしまう。何より音程が狂っているとどんなに素晴らしい演奏家でも気持ち悪くてモチベーションが下がり良い演奏なんて出来ない。音が合っていると言う事は、肝心金目で当たり前の事だから。などなど笑いを交えて伝えると「知らなかったわ~。じゃ~今度からコンサート開く時は、梅根さんにタダで調律やってもらえば良いんだ。問題解決~(笑)!」おいおいその解決は、駄目でしょう!

最近、ピアノ調律をしていて思う事。

9月の末に自分の不注意で大型プリンターが右足のすねに倒れてきて圧迫骨折をしてしまった。もう1カ月過ぎたが未だ完治しない。年と共に直りが遅くなっているのを実感する。パンパンに腫れた足を引きづりながら仕事をしているとピアノ調律の仕事で足の踏ん張りが大きく作業効率に影響している事を実感する。意外に肉体労働なんだと気づいてしまった。これが最近思う事?まぁそれもありますが、50年以上前の古いグランドピアノを調律していてちょっと嬉しかった事、考えさせられた事があったのでここに書き記したいと思います。

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写真にあるイースタインというピアノ。お客様が昔ピアノの先生より譲り受けたピアノで他の調律師からは、いつも買い替えを勧められるのでもう20年位調律をしていない。初めてこのピアノに触れた時に僕もこれはダメだな・・・と思いました。弦は錆びだらけで伸びきっている。スティックも多く音もこもって鳴らないし何しろピッチが半音近く下がっている、今までの調律師の管理の悪さも重なって最悪のコンディション。お客様は「もう30年位ここにあるし愛着もあるんですよ。孫が使うからどうにかなりませんかね」と言われるので「どうにか頑張ります」と言って作業に入った。

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とりあえずざっと調律をして様子を探ろうと思いきやアクションの色んな所でスティック(機械部分が動かない)があり調律も出来ない。掃除機をかりて掃除から始める50数年分の埃でアクションを引っ張り出すのも一苦労。どうにか掃除を終えて機械の修理も終えて調律に入る。弦が古くてピッチを上げるのが怖いが何度かに分けてようやくA442HZに上げた。次にアクションを庭に出して変摩耗しているハンマーをファイリング(削り形を整える)する。50年以上前のハンマーは、フェルトの劣化も激しい。丁寧に作業を終えてピアノを弾いてみてもさっぱり音は、良くならない。とりあえず調律を仕上げて整音で音色を整えるとすっかり外は、暗くなってた。

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翌年に調律にお伺いするとピッチは、思いの外下がっていなかったが音は、相変わらずかったるい音がしている。今回は、鍵盤調整からアクションの整調など前回時間が無くて出来なかった事を一からやる事に。このピアノは、ベッティングスクリューが無いピアノで古いヤマハのグランドピアノも同時期の物には付いていない。これが付いていないと調整にやたらと神経を使うが頼りになるのは、耳で総合的に愛情込めて作業しないとピアノがヘソをまげて決して良い音なんか出してくれない。バランスパンチングクロスなどは、昔の作業方法で黒鉛を多用した事で黒く色付いている。当然、フロント・バランスのブッシングクロスも真っ黒に黒鉛が丁寧に?塗られていたので、全てクリーニングして取り除くのに相当な時間が掛かった。整調・調律を終えるとまたまた外は、暗くなっていた。

今年、お伺いするとお子さんが毎日弾いているらしく随分蘇って来たがまだちょっとかったるい音。もう一度整調をみて調律をすると随分伸びやかな澄んだ音になった。ハンマーに針を刺す整音作業をもう一度やると気持ちの良い澄んだ音に蘇った。いっとき気持ち良くてピアノを弾いているとお客様が「いや~良い音になりましたね~」と喜んでくれた。僕自身気持ち良くて笑いが止まらない!作業を終えると外は、まだまだ明るかった。

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写真のピアノは、別のお客様がアメリカで購入して日本に持ち帰ったピアノでコーラー&キャンベル。中を開けてみると韓国のサミック社製造のピアノです。まったく同じピアノで日本の大型販売店が販売していた別の名前のピアノを知っています。そのピアノは、かなりの粗悪品で鍵盤は、調整されていないので凸凹していて深さは、13ミリや11ミリとまばらでハンマーは、ちゃんと3本の弦を捕えてなく音は、キンキンカンカンである。ピンは、やたらめったら堅くておいそれとチューニングピンが回らない完全粗悪品ピアノがありました。今回のピアノは、中身も全て全く同じ商品で名前だけが違うピアノでありながら、全く別のピアノでした。ややピンは堅めですが良いタッチで良い音がしている。よくよく見てみると各部の調整が行き届いていて良いピアノなのです。要するに大手販売店は、年間仕入れ台数契約で仕入れ価格を叩いて販売する。メーカーは、生産に追われしかも卸値が安く儲けが少ないので人手の掛かる調整を適当にやるいや省く。要するに何から何まで適当でそれを仕入れてまた、シロート相手だからと調整もせずに適当な事を言って其のまま売って儲ける。当然、お客様達は、不信感を募らせる事になる訳です。ここで僕が思う事は、その様なピアノでも我々調律師が面倒臭がらず丁寧に調整を重ねる事でその様なピアノでも蘇って良い音になる訳です。当然、作業をするのですから料金が発生します。お客様がド~ンと予算を掛けて頂ければ直ぐに良い状態にする事も可能ですが予算を工面出来ない場合は、予算を掛けずに何回かに分けて作業をして最終的に良い状態に持っていく方法もあります。他の技術者からは、「そんな事やってたら儲からないよ!」なんて言われちゃうかもしれませんが、考えてみたら調律にお伺いする度に今回は、あの調整をやろう、あれを上手くやり遂げるには、どうしたら良いのかなんて考え・工具をそろえたり・新たな技術に挑戦したりそれだけでも楽しく良い勉強になります。調律師が来る度にピアノを弾けないお客様(おじいちゃん・おばあちゃん・ご両親)にも分かる位に変って喜んで頂ける訳ですから当然、信頼関係も築けてつまりは、長いお付き合いが出来る訳です。我々ピアノ調律師は、真面目にコツコツと愛情込めてピアノに向かいお客様に喜んで頂いてピアノも喜んで、技術料も貰えて自身の技術の向上に喜びを覚え八方丸く収まるなんて笑いが止まりません!これでもっと儲かったらジェジェジェいやビックリポンだ(笑)!

 

 

 

Kamakura piano artistry corporation | Tel : 0467-47-1502

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